空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【1】空京の空 3

 超大型ヒュドラは空京に到着するや否や無造作に地面に降り立った。
 かと思えば手当たり次第に尾を振り回し、多頭を撓らせ街を破壊していく。
 まるで楽しむかのように超大型ヒュドラは破壊を尽くした。
 数秒間における少ない動作で、考えうる被害以上が街を襲った。
「破壊の申し子気取りかな? それで許されるわけないでしょ?」
 ゆらりと姿を現したのは鳴神 裁(なるかみ・さい)
 その身に纏っているオーラは武器化されたギフト黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)である。
「調子に乗ってるヒュドラには、お仕置きが必要」
 だよね
 最後の三文字は、宙へ置き去りにされた。
 裁が吹く。風が吹くと同じように、裁が吹き荒れながら大型ヒュドラの体を巡る。
「ボクは風、風(ボク)の動きを捉えきれるかな?」
 人のものとは思えない立体軌道に、ヒュドラが追いつけるはずもない。
 移動と同時に攻撃が行われる。
 大型ヒュドラは同時攻撃に晒されているように感じていることだろう。
 これだけの動き、体への負荷も相応、それを痛覚遮断で知覚させず無理やり裁は動いていた。
「まるで一陣の風だな。俺も続くとしよう、サクラコは後方で頼む」
「わかりました。あるだけの気を練り上げておきます」
 裁の後に続くのは白砂 司(しらすな・つかさ)サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)
 だけではなかった。
「これはまた大きな相手ですね。手が離せません」
「イマさんはお忙しいようでございますし、仕方ありませんね」
 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)常闇 夜月(とこやみ・よづき)もこの事態を放って置くことは出来ず、
 ハルマゲドンの準備をする。
 既に周囲の被害状況は壊滅的、これ以上悪化することはない。
 そう判断した貴仁は付近にいる味方に声をかける。
「これからハルマゲドンを使用します。気をつけて下さい!」
 その言葉を聞いた契約者たちは即座に撤退を開始。
 裁だけは超大型ヒュドラとの戦闘に専念している。
「問題ない、と受け取りましたよ!」
 エネルギーを我が身に呼び寄せて内包、
 更に自身の体を媒介にしてエネルギーを地中へと流し込む。
 半径大よそ百メートルの地表から、光の亀裂が溢れ出す。
 やがて強烈なエネルギーが噴出し超大型ヒュドラを中心に、
 地表に落ちていた全モンスターを浄化するかの如く攻撃する。
 痛烈無比なる力の奔流にヒュドラやワイバーンは断末魔を上げ、超大型ヒュドラも苦しみに悶え咆哮する。
「ちょちょっ! 耳元でうるさいっての!」
 多頭の一つを横合いから思い切り殴りつけ一つを黙らす裁。
「同感だ。少し黙ってもらおうか」
 煩い咆哮を聞きかねた司もヒュドラへと向かい、地面付近に枝垂れる頭に槍を突き立てる。

 ドスンッ

「少し借りるぞ」
 地面に顎を付けてうな垂れる頭を踏み台に、猛き霊獣である大型騎狼ポチに跨り、
 超大型ヒュドラを駆け上っていく。
 駆け上る際もヒュドラの体表に武器を付きたて、ダメージを与えていく。
 そのまま空中へと跳躍すると、目の前に来たワイバーンを衝撃波で攻撃し、
 致命傷を負わせると同時に墜落させた。
「こんなものか」
「やるねぇ!」
 流れるような司の動きに感服した裁が声をかける。
 司が「ああ」と返事をするも、声をかけた先に裁の姿はなかった。
「やれやれ、春一番の様でもあるな」
 熾烈な攻防が繰り広げられる中にもう一人が参戦する。
 自分の意志を瞳に宿したリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)
 パートナーであるウェイン・エヴァーアージェ(うぇいん・えう゛ぁーあーじぇ)は後方で待機している。
「手伝ってくれるのか?」
「ええ、そうね、それには変わりないと思う。けど根本は違うかも知れないわ」
「? 何を言って?」
 ヒュドラの上で話をするリカインと司に多頭の一つが大きな口を開けて襲い掛かる。
 二人は後方に飛び退く。
 リカインはアブソービングクラブを装備した利き手で、ヒュドラの目元を殴りつける。
 片目が機能せず痛みに咽ぶヒュドラはそのまま自分の体へかぶりつく。
 だが、ここにきてヒュドラやワイバーンが契約者に対する闘争本能を取り戻し、
 攻撃を再開しようとする。それを、リカインは許さない。
 自身の生体エネルギーを溜め込み、一塊の光弾を放出する。
 光弾はワイバーンに当たると爆散し、有無を言わさず撃墜させる。
「危ないっ!」
「っ!」
 裁の声が聞こえ、リカインは振り向き様に身構える。
 不意に、鈍い衝撃がリカインの体を走る。ヒュドラの攻撃だ。
 そのまま空中へと押し上げられるリカイン。
 しかし、好都合と言わんばかりに薄く微笑み、
 肺一杯に空気を溜め込み咆哮した。
「私は、グランツ教を助ける!!
 だからあんたはここで、退場よ!」
 神すらも慄く咆哮に、己が信念を擦り込ませたリカインが利き腕を思い切り振り被る。
「面白いこと言うねぇ〜! それじゃ僕は市民を救うよ!」
「事の顛末を知らぬグランツ教徒を救う、ということか……。
 よき信念だ。……サクラコ!」
「了解しました! 一発最大火力の自在は練りあがりましたわ!」
「とにかく今はこの超大型ヒュドラを倒すのみだっ!」
 リカインに呼応して、
 裁が持てうる限りのスピードを乗せた一撃を、
 司がポチと共に愛槍による鋭さを極めた一撃を、
 サクラコが練りに練り上げた必殺の一撃を、
 貴仁が三日月を彷彿とさせる美しき一撃を、
 そしてリカインが魂の咆哮と共に、振り被った腕を解放つ。
 馬鹿げた威力を秘めた一撃が計五箇所に炸裂すれば、超大型ヒュドラも喚く事しか叶わない。
 その喚きが終わった時、超大型ヒュドラの生涯も幕を閉じていた。


 ひとまずの危機は乗り越えたが、まだまだワイバーンやヒュドラは点々といる。
 駆けつけた警察に保護していた市民を預け、激戦は続いていった。

 これだけのことをしでかした張本人。
 アルティメットクイーンの姿を見たものはまだいない。
 しかしいつまでも隠しきれるものでもない。
 契約者達は徐々にアルティメットクイーンヘと近づいていた。