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リアクション
地球の戦い 3
しかしそれは神月 摩耶(こうづき・まや)、リリンキッシュ・ヴィルチュア(りりんきっしゅ・びるちゅあ)、クリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)、アンネリース・オッフェンバッハ(あんねりーす・おっふぇんばっは)の四人の出現によって状況が変わる。
「皆の愛を、あたしたちに分けて頂戴!」
スパっと高らかに、クリームヒルトがそう宣言する。
儀式場にいた人々がぽかーんとしていると、今度は摩耶が喋りだす。
「一番大好きな人のことを思い浮かべて! それがボクらの力になるから!」
やはり言葉の真意は分からない。だがここまで戦ってくれていたのは明白。
なら信じるべきなのか。いや、だが大好きな人のことを思い浮かべるとは、と困惑する人々。
そんな時、鏨は敵からの反撃をいなしながら攻撃をする。
「“たった一人との出会いが、それ以降の全てに関わる大切な物になる。そう……たった一人で良いんだ”」
鏨の言葉、瞳に迷いは微塵もなく、爽麻を見やった。
その時、敵の攻撃の流れ弾が爽麻を襲い、爽麻の衣服が破かれる。
「爽麻っ!」
鏨が叫ぶが、爽麻は気にもせずに向かってきている敵を見やる。
「もう、誰も殺させない……。それは、私の役目だから……!
“大切なのは数じゃなくて。互いが強く想い合うだけで、それは大きな力になるのよ”」
爽麻が声を振り絞り、その身なりすら省みず仇名す敵を討ち滅ぼす。
そんな爽麻の元へ鏨が走りより、自分の装束をかけてやる。
「よくやった。……だが無理はするな」
「……うん」
爽麻は鏨に抱きつき、その身を隠すように縮こまる。
羞恥を超えてなお人を守ろうとした爽麻、そんな彼女を優しく抱きしめる鏨。
「そう、それだよ!」
「いいわね、キテるわ!」
それを見ていた摩耶とクリームヒルトの周囲にぼんやりと光が輝き漂い始めた。
ジェーナはそれを受けて、自分の想いが力になるなら、そう思って先ほど思った言葉を小さく呟いた。
「私の居場所はここにあった……。仁志、最期の時もあなたと共に……!」
「おう! 俺もだ! どんなときでも一緒だ!」
「……なっ、いつの間に!」
いつの間にも何も背中越しにずっといたぞ、と言う仁志。
爽麻たちの姿を見てあてられたのか、シェーナはそんなことすら忘れていたらしい。
「そこ! そこのあなたたちも最高だね!」
「もうそのままイケるところまでイッちゃいなさいっ!」
この二人、ノリノリである。
しかし言葉とは裏腹にその力はどんどん溜まる。
陸とよもぎの合体した姿を見て、溜まる。
エリスとアスカの歌と戦いを見て、溜まる。
知恵子の家族への秘められた思いを感じ取り、溜まる。
摩耶とクリームヒルトの周囲の光は輝きを増していく。
その眩しさに、人々は確信した。この人たちは本気なのだ、と。
ならば協力しよう、ということで儀式場は祈りと愛情が一杯に広がる素敵空間へと変貌していく。
「愛の力、私も祈りましょう」
リリンキッシュがそう言う、では彼女は誰に愛を祈るのか。
摩耶だろうか、クリームヒルトだろうか。否。
その答えを知っていたかのように、アンネリースがリリンキッシュの前に立った。
「……アンネ様?」
「リリン様。わたくしは決めましたわ。貴女をわたたくしのものにすると」
誰が予想したか、その大胆な告白を。
リリンキッシュの心も突然のことにドキリギクリと鼓動をギクシャクにする。
「わ、私にそのような……。で、ですが私は摩耶様が……」
「ではその答えが本当か、聞いてみることにしましょう。直接」
刹那、アンネリースの唇がリリンキッシュの唇に重なる。
しばらく驚きに目を瞠るリリンキッシュたっだが、ほどなくしてその目は蕩ける。
そんな突然の出来事が終わると、リリンキッシュは認めるように言葉を紡いだ。
「今、漸く理解できました……。摩耶様をお慕いしている気持ちに嘘は無く……。
ですが、最も愛しい方は、アンネ様なのだと……♪」
「あーあー! いいないいな! リリンちゃんもアンネちゃんも!
これは負けてられないよクリムちゃん♪」
「そうね、摩耶っ♪ 見せつけてあげようじゃないっ!」
お互いがお互いの体を抱きよせあい、いちゃつきあう。
そして溜まりに溜まった愛情と言う名の欲望が太陽よりも輝いていた。
心なしかピンク色にすら見えてくる、気がした。
それを感じて、抱き合う二人は頷きあった。
「“色んなコたちと色んなコトして遊びたいもん、勿論創造主さんもね♪」
「それじゃ……あたしたちが、良いところにイかせてあげるわ!」
お互いの腰に手をやり引き寄せて、腕を突き出して愛情の塊を解放する二人。
自分たちへの心身への負荷など歯牙にもかけず構わずぶっぱなす。
解放された魔力は爆発し、多数の怪物たちを巻き込みに巻き込み、愛を持って制した。
魔力を解放した二人の心身にはかなりの負荷がかかっている。
それでもお互いのことを離さないで、笑顔でそこに立ち尽くしていた。
「お二人とも、大丈夫ですか!」
「今助けるぜ!」
その二人の様子を見たイナ・インバース(いな・いんばーす)、ミナ・インバース(みな・いんばーす)が駆けつける。
崩れ去る寸前の二人を抱きとめたリリンキッシュとアンネリースも心配そうな顔つきだ。
「更に後ろで休ませながら、治療をしましょう」
「お手伝いいたしますわ」
イナの言葉にアンネリースが助力を申し出る。
すぐに二人を移動させて、できる限りの治療をする。
「ミナは周囲の警戒をお願いっ!」
「合点だ! そっちのあんたも手伝ってくれるか?」
「勿論でございます」
ミナとリリンキッシュが周囲の警戒している間に、
イナとアンネリースが二人の治療をしていく。
この様にして治療に専念していたイナ。見ればところどころドロだらけで、生傷もあった。
それはミナも同様だったが、応急処置程度しかしていなかった。
「どうして完全に治さないのですか?」
「……他に治すべき人が出たときに何もできない。そうはなりたくなかった、から」
治療を続けるイナの横顔は、凛々しかった。
「そしてこう言いたいんです。
“わたくしにも多くの人を救えました”」
「“あたいにも多くの人を護れました”、ってな!」
イナに続いてミナが言葉を繋いだ。
その言葉はもう、実現しているも同然だった。