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リアクション
ニルヴァーナの戦い 1
ニルヴァーナ儀式場の防衛をするべく戦う、
メルヴィア・聆珈(めるう゛ぃあ・れいか)を補佐するため、
イコン小隊【西の風】が、
陣形を組み、空中のモンスターたちに相対していた。
セラフィムのゼフィロスは、
高崎 朋美(たかさき・ともみ)と
ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)の新機体であり、
西風の神の名を冠している。
この小隊名は、新機体にちなんでつけられたものだった。
「仕上がりは上々だ、油断はするつもりはないが、まあ負けやしないさ」
ウルスラーディは、
展開する、敵モンスターを前につぶやいた。
「機体は大きくなったけど、
これまでの戦法が有効なはずよ。
ここは、障害物のない、広大な空間だし、
それに、敵は何の遠慮もしなくていい、モンスターの群れだからね!」
朋美が、ウルスラーディにうなずく。
「ここは負けられへん。
討ち漏らさんと行くぞ!」
同じくセラフィムのトレーロに
大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は
讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)とともに搭乗している。
「ええ、もちろん!
ボクたちの連携、みせてあげようね!」
朋美がうなずいた。
2体のセラフィムの後衛を、
ストークのソプラノ・リリコに搭乗した、
ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)と
アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が、支える。
セラフィムのゼフィロスと
トレーロは、素早い連携で、モンスターの群れを撃破するが、
その隙間をぬって突撃してくるモンスターは、
ロレンツォが撃ち落とす。
「祈る人たちの気持ち、邪魔させない」
モンスターたちに知性はなく、
ひたすら破壊の衝動でもって、攻撃を行ってくるようであった。
「こんど生まれてくるときには、きっと、平和な世界で会おうネ!」
ロレンツォが、撃墜したモンスターたちに叫んだ。
「歌う人たちの声に意識が向くように、
少し頭を冷やさせることができればいいけど……」
荒ぶる“滅びを望むもの”への祈りの歌を歌っている仲間達を思い、
アリアンナがつぶやく。
(“滅びを望むもの”さんって、怖がりさんね。
本当は、きちんと気長にあやしてあげるのがいいんだけれども、
パニック状態を鎮めるためには、
しかたがないわよね)
多少、荒療治になってしまうとしても、
“滅びを望むもの”に想いを届けることができれば。
アリアンナはそう願った。
「メルメル……」
泰輔は、地上で戦いの指揮を執る、メルヴィアのことを思う。
(僕は、僕ができる最善の戦いをやろう。
メルメルも、そうしてるはずやから)
ワープ移動を繰り返す、トレーロは、
まさに闘牛士の名にふさわしく、
モンスターを攪乱していく。
(泰輔はメルヴィア少佐にご執心、とな。
わが恋仇にふさわしいかどうか?
議論の余地はあれども、泰輔は誰にも渡さぬ)
顕仁は、自分の愛する泰輔が、
メルヴィアのことを想っている横顔を見て、
対抗意識を燃やしていた。
「ほら、そのような顔をしているでない。
それとも、そなたの想い人は、戦場でそのような顔をするのか?」
顕仁は、あえての意地悪を口にする。
「せやな……!
朋美ん、機体交錯進路、いっつもどおりに!
顕仁、ワープでの移動、頼むで!」
「了解!」
「うむ」
トレーロの誘導で、モンスターは突撃し、
いきなりの移動で混乱させたところを、
ゼフィロスが仕留める。
「私たちも忘れないでネ!」
ロレンツォが叫び、
ソプラノ・リリコも支援射撃を行う。
かくして、ニルヴァーナ上空では、
激しい空中戦が繰り広げられた。
(メルメル!
帰ったら、また、遊ぼうな!)
泰輔は、思いのたけを、イコンの攻撃にぶつける。
「邪魔させんわ!」
■
「頑張ってくれているな……」
メルヴィアは地上で戦闘の指揮を行いつつ、
空を見上げ、イコン部隊の泰輔たちのことを気にかけている。
「全軍、儀式場に一匹も近づけるな!」
メルヴィアはすぐに軍人の表情となり、
部下達に指示を行った。