空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

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【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


大切な人、大切な場所 4

ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)のお茶会に参加している
東條 梓乃(とうじょう・しの)は、
新しいお茶をカップに注いだ。
「ありがとう」
鷹揚にうなずくジェイダスに、梓乃は問いかける。

「ところで、理事長先生。
こんな時に、なぜお茶を?」
ジェイダスは笑みを浮かべる。
「こんな時だから、お茶を楽しむのだ」
「こんな時だから、ですか……」
不思議そうにする梓乃に、ジェイダスは続ける。
「気持ちにゆとりを持っていなければ、
季節の移ろいを感じることもできない。
見てごらん。
夏が終わりかけている。
美しい世界はこうして目の前にも広がっているんだ」
ジェイダスの答えに、
梓乃は感心する。
(らしいなあ、理事長先生)

その後、梓乃はパートナーのティモシー・アンブローズ(てぃもしー・あんぶろーず)とともに、
タシガンの儀式場へと祈りを捧げる人々の護衛に向かう。

「グアアアアアアアアッ!」
翼を持ったモンスターが牙をむいて襲い掛かってくる。
コウモリのモンスターが、変異したものだろうか。

さきほどのジェイダスの言葉を思いだし、
梓乃は剣を持つ手に力を込める。
(季節の移ろいを楽しめる、平和な世界を、壊すわけにはいかない。
だから……)
「儀式場に怪物を入れる訳にはいかない」
ブーストソードを振るい、
梓乃はモンスターを斬り捨てる。

そこに、新手のモンスターが、梓乃の背後から迫っていたが。
「!」
梓乃が振り向くと、ティモシーが、
氷術で、もう一匹のコウモリのモンスターを氷漬けにしていた。
「ボクがこんなに働く事自体が珍しいんだから、感謝して欲しいね」
「うん、ありがとう」
「こう見えても新しい世界? には期待しているんだよ。
ボクの退屈を、吹き飛ばしてくれるんじゃないか……ってねぇ」
ティモシーは言った。

「夏の終わり、か。
感傷的になるのはまだ早いよ。
ボクはまだまだ新しいことを見て、楽しみたいんだ」
ティモシーが毒虫の群れをモンスターにけしかけ、
その支援の元、梓乃も、
他の仲間達と一緒に戦う。

儀式場を、祈りを捧げる人々を、守るために。




千返 かつみ(ちがえ・かつみ)は、
モンスターの群れを前に、
かつて、カールハインツ・ベッケンバウワー(かーるはいんつ・べっけんばうわー)とともに、
戦った時のことを思い出していた。

(そういえば初めて戦った時もこんな感じで、
カールハインツとゲートから現れる魔物を排除した。
あの頃は一人で強くなれると思ってたけど)

かつみは、傍らのパートナー、エドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)の横顔を見る。
エドゥアルトは、回復魔法などの支援の準備に集中している。

(パートナーや友達とよべる人々……。
そういう人たちと出会いつながることができて、
世界が広がっていったんだ。
だから、今、とても幸せだ)

かつみは、思い出を胸に、カールハインツへとメッセージを送る。
しかし、いろいろな思いがあふれてしまい、
うまく言葉を見つけることができない。

「これからも、よろしく」
「ん? どうしたんだ、急に」
「……とにかく『これからも、よろしく』って事だよ!
怪物退治行ってくる!」
「ああ。わかったよ。
俺も、かつみ達の無事を祈っているからな」

赤くなって叫んだ、かつみに、
カールハインツは、ふっと笑みをもらしつつ言った。


エドゥアルトも、グレーターヒールで味方の傷を癒し、
世界の無事を祈る。
(私もかつみに手を引っ張られて、
閉ざされた世界から新しい世界に出てきた。
だから、世界には、続いていってほしいんだ)

かつみとエドゥアルトは、
梓乃たちとも合流して、怪物退治に奮戦する。

大切な人々との、暮らしを守るために。





タシガンの上空。

上社 唯識(かみやしろ・ゆしき)戒 緋布斗(かい・ひふと)は、
ストークの稀緋斗に搭乗し、
タシガンの儀式場の護衛を行っていた。
いまのところまだ、数は多くはないが、
大型のモンスターも迫ってきている。



出撃時に、唯識は、親友であるカールハインツと話をしてきた。
カールハインツがいれば、
地上の儀式場の人々は、きっと守ってもらえる。
「レモから目を離すなよ」
「ああ、もちろんだ。
唯識も無理はするな。
撃墜されたりしたら、元も子もねぇぞ」
「うん。これからの世界を、もっと楽しみたいからね。
それに、カール達の様子も、もっと見守っていたいし」
「な……どう、見守るんだよ」
カールハインツを見て、唯識はふっと笑った。
「まあ、いろいろとね。
ところで、避難場所のことだけど」
「お、おう」
唯識に問われ、カールハインツは、手際よく、
避難経路や避難場所の説明を行う。

「あとは俺に任せておけ。
もちろん、皆が、そう簡単に負けるとは思ってねぇから、
最悪の場合の想定だけどな」
「うん、よろしくね」
唯識はうなずくと、あらためて、
カールハインツとレモの顔を見た。

「じゃあ、またね」
「ああ、またな」
「頑張って」
すぐに再会できることを信じて、唯識とカールハインツは挨拶を交わした。
レモも、同じように、唯識を信頼し、激励を送った。



(レモとカールが離ればなれにならないように)
緋布斗は、コックピットで、友人たちのことを想う。
緋布斗も、また、唯識と離れることは考えられない。
「……来たようです。
気を引き締めていきましょう」
「うん。僕達は僕達の役割を全うしよう」
敵影を確認した緋布斗に、唯識がうなずく。

機晶ブレード搭載型ライフルに、エネルギーが充填されていく。
「会場には近づけさせませんから」
緋布斗の言葉と同時に、モンスターが撃破される。
「ああ。カール達のためにも、ここが、頑張り時だからね」
唯識は言い、新たな敵影を、2人は狙い定めるのだった。