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リアクション
大切な人、大切な場所 2
タシガンにて。
ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)は、お茶を楽しんでいた。
同席しているリア・レオニス(りあ・れおにす)が、
ジェイダスにかしこまって告げる。
「理事長がイエニチェリに選んでくれた時から俺の人生は変わった。
アイシャに相応しい人間になろうとする俺を引上げてくれた……。
今、宮廷で働けているのも理事長のおかげです」
「君が面白い存在なのはわかっていたからね」
ジェイダスが、いつもどおりの妖しげな笑みを浮かべ、ティーカップを手に言った。
リアのパートナーのレムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が、
ジェイダスに問う。
「お茶のお替りはいかがですか」
「ありがとう」
ジェイダスは、レムテネルによって、
ティーカップにそそがれるお茶を見つめ、目を細めた。
「行動のゆとりと心のゆとりは不可分です。
どんな時でもそれを大切にされる、
それが理事長の導き方なんですね」
「ああ、もちろん」
頷くジェイダスに、レムテネルが問う。
「理事長にとって大切な物とは何ですか?」
「美を愛すること。
そして、愛を体現することだ」
ジェイダスは静かに答えた。
レムテネルはうなずき、続けた。
「“滅びの意思”に対抗できる唯一の武器は、
生きる創るといった“創造の意思”だと思います。
そうしてこの、美しい世界は受け継がれていくのでしょうね……」
「そう、滅びの美と創造の美、いずれも一体となっている。
それが世の理というものさ」
ジェイダスとレムテネルの会話を聞いていたリアが、
ジェイダスに告げる。
「俺、アイシャに電話してもいいですか。
理事長の言うとおり、愛を体現したいので」
「かまわないよ」
「ありがとうございます!」
リアは
絆のケータイで吸血鬼の少女 アイシャ(きゅうけつきのしょうじょ・あいしゃ)に電話をかける。
「アイシャ……。
今、祈りの力で皆が戦ってる。
君が大陸を祈りで守ったように、今度は俺達が祈りで世界を守るんだ。
そしてその世界で、俺はアイシャと共に人生を歩みたい。
……愛しているよ」
『リア……。
今、いろいろな気持ちがあふれて、なんと言えばいいかわからないのだけど。
皆と一緒に祈りを捧げられること、うれしく思うわ。
連絡をくれて、ありがとう』
電話のやりとりを見つめるジェイダスの視線に、
リアは顔を赤らめる。
「祈りを、捧げないと……!」
ジェイダスから視線を逸らし、目をつぶるリアを、
レムテネルが微笑ましげに見つめる。
「若いということはこういうことなのだろうね」
外見年齢はリアよりずっと若いジェイダスがつぶやいた。