空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆 【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション


この大地とともに 6

【アガルタの祈り】

 アガルタの街は今日も賑やかだ。
 忙しなくどこかへ連絡しながら歩いている人。
 買い物袋を抱え、メモを見ながら買い物している主婦。
 お菓子を買ってもらって嬉しげに走り回っている子ども。
 そんな子どもへ注意をかけながら見守っている父親と母親。
 ウィンドウショッピングをしている女子学生。
 腕を組みながらいちゃいちゃしやがっている恋人達。

 少し前まではただの空洞だったその場所に出来た、そんな当たり前の光景。
 そんな当たり前が、もうすぐ失われるかもしれない。

 土星くん 壱号(どせいくん・いちごう)はつぶらな瞳を少し鋭くさせた。

「ダメよダメよそんな顔じゃ」
『あいたっ』
 そんな土星くんの眉間? のしわを指ではじいたのは五十嵐 理沙(いがらし・りさ)だ。
「そんなこわい顔じゃ、祈りは届かないわ」
 土星くんはムッとした顔をしたが、やがて『わかっとるわい!』といつもの元気を取り戻した。
 そんな、いつもと同じやり取りにくすりと笑ったセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)が、土星くんに頭を下げる。

「これからもこんな楽しい時が続くと良いですわ。その為に、コッソリ私達も頑張りましょうね、土星くん!」
「ちょっと私は」
「もちろん、あなたも今以上に頑張ってもらわないとですわよ?」
「う、が、がんばります」
 そしていつものように番組が始まる。

「アミーゴ・アガルタの時間です。みなさん、こんにちは」
「元気にしてる? 今日もはりきっていろんな情報をお届けしていくから、最後まで見ていってね」
「……そして、先ほどからちらちらと画面に映っている輪っかでお分かりかもしれませんが、特別ゲストがいます」
「だれかなだれかな〜(棒)? なんてね。はーい、皆大好き土星くんよ〜」
『よっしゃ! わしが来たからには、視聴率3倍やな』

 始まるオープニングに悲壮感は無い。
 そして話しながら歩いているのはショッピングモール内。ふよふよと浮いている土星くんは非常に目立つ。子供が手を振ったり、女の子がキャーキャーと声を上げたり、と忙しない。もちろん、理沙たちも顔が売れている。
 そんな3人が歩いているのだ。騒がれないわけがない。

「ご覧のとおり、今ショッピングモールは夏祭り風に飾りが施されています。普段と違う雰囲気ですので、楽しいひと時が過ごせるはずですわ」
「ということでー、突撃取材よ! そこのあなたたち、少し良いかしら?」
「え? はい。俺は構いませんけど」
「私も大丈夫です」
 話しかけたのは男女のカップル。きょとんとし、ついで少し緊張しながらも頷いてくれたので続ける。

「今までで楽しかったこと、誰かに感謝したいことって何?」
 そう問いかける。
 2人は顔を見合わせた後、頬を染めて話す。
「俺、この街で彼女に告白したんです」
「あら、そうだったんですか」
「は、はい。なのでその……この街を作ってくれた方たちに、私たちに勇気をくれて背中を押してくれた方たちに」
「すごく感謝してます」
 そういって、同じような顔で笑った2人に、理沙もセレスティアモ、土星くんですら釣られて笑う。
 そして感謝を述べた後に2人とは分かれる。

(アガルタに儀式場がなくとも、私達の番組が儀式場になればいいだけよん。活気あるアガルタの街の暮らしをお知らせしながら、小さくても街の人達の希望や祈りを拾い上げれば、世界産みの助けになるはずよ)
 こうして街の人たちの希望を集め、その映像を儀式場にも送るのだ。

 その後も何人もの声を集めた後、ふいに理沙がマイクを土星くんに向けた。

「土星くんの楽しかったことってなに?」
『ん、わしか。わしは……そうやな。移動式住居内で、みんなと過ごしたこと、やな』
 遠くを見る目で、土星くんはぽつりと呟いた。
 再び目を開けるまで、土星くんの記憶はほとんど住居内しかなく、そして同時に辛い記憶でも在る。だが

『もうあいつらとはおらへんし、そもそも楽しい旅でもなかったけどな。だけどあいつらがいつかのためにわしらを残してくれて、そして今があるんや。やから、わしは……今を大事にしたいし、明日をこの目で確かめたいと思うとる』

 珍しく茶化さず、誤魔化さずに話す。
 理沙も、セレスティアも土星くんの話に頷いた。
「そうね。新しい世界、まだ見ぬ明日(未来)。私も見たいわ」
「ええ。楽しいこと、嬉しいこと。たくさんを、皆さんと一緒に経験したいですわ」

 話を聞いていた通りすがりの人たち、街の人たち、全員で天井――いや、空を見上げた。この想いよ、届けと言わんばかりに。


【紅き湖の街で】

 呼吸可能で濡れることのない不思議な湖の水は、その水に淡くばら色を溶け込ませながら柔らかい光を放っている。館下 鈴蘭(たてした・すずらん)霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)を連れてゆっくりとその水の中を進み、水底にあるスポーンたちの街へを訪れる。新たな世界生み。それは皆の意思の力、気持ちの結びつき、そういった要素が大きく影響してくるはずだ。彼女は『ダブル★ベル』の片割れとして、この街でライブを行おうと考えていた。歌に乗せ、祈りを届けたい。そしてこの日のために一人でも多く、創生の祈りに参加して欲しいと、沙霧とともにネットやチラシ、口コミ等あらゆるものを利用して、鈴蘭たちはニルヴァーナ開拓に来ている地球人やパラミタ人へのアピールを行ってきた。そして今。彼女らが向かっていたのはレナトゥスとアピスの住まいだった。現れたレナトゥスとアピスに、鈴蘭は呼びかける。
「レナちゃんお久し振り!
 世界産み……この街のスポーンさん達とこれからも一緒に生きていく為にも、絶対成功させなくちゃ。
 元は敵同士だった存在……それでもわかりあえて、こうして共存の道を歩み始めてる。
 今日はね、お願いがあって来たの。 ……レナちゃん、私と一緒にライブで歌ってもらえないかな?」
レナトゥスは驚いたようだった。アピスは穏やかな表情でレナトゥスを見守っている。
「歌ウ? ワタシが……?」
「前にも一度ステージに上がったこと、あったよね? 歌は嫌いじゃないでしょ? 歌に乗せて、祈りを届けたいの」
レナトゥスはあの恐ろしい環境から自分を救出し、自我を得るために協力してくれた人たちを想う。
「……アノ無ニ帰さねばならないというだけの世界カラ、ワタシを助け出してくれタ人……誰一人忘れた事はナイ……。
 わかった。行こウ……」
ライブの会場は人とスポーンたちでいっぱいだった。皆思いは同じ。世界に存続していってほしい、未来のためにできることをしたい。歌に祈りを込めて、鈴蘭とレナトゥスは歌う。ステージの合間に、『ダブル★ベル』のユニットのメンバー、度会 鈴鹿からの着信が入る。それは想い人への告白をするというものだった。鈴蘭はそのことを聴衆に伝える。
「あの子も勇気を出したのね……。でも、そういうの、前向きで素敵だよね。
 さあ、私達もポジティブにいきましょ! 新しい一歩を踏み出すのは、私達だって怖かったり不安だったりする……。
 でも大丈夫。その先には、素敵な出会いがきっとあるわ!」
鈴蘭が歌の合間に祈りの言葉として皆に呼びかける。沙霧はそんな鈴蘭を見つめて呟く。
「鈴鹿ちゃんもこの場で告白……勇気あるな……。
 でも、僕だって……鈴蘭ちゃんに認めて貰える男になる! そのためにも、世界をここで終わらせる訳にはいかないよ!」
沙霧は思う。自分も目標に向けて頑張っていけば、素敵だと、眩しいと、いつか鈴蘭から思って貰えるだろうか。希望は捨ててはいけない。希望を抱いて、今を生きてゆこう。そして新たな世界での未来を……。スポーンの住む湖から、鈴蘭とレナトゥスの歌にあわせて、聴衆全てが祈る。未来への希望をのせて。