空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


繋がれる絆 1

シャンバラ儀式場の外れ。

「来てくれてありがとな。千人力だぜ」
七尾 蒼也(ななお・そうや)は、
朝臣 そるじゃ子(あさしん・そるじゃこ)に礼を言った。

「あたいは生きる喜びを、愛の意味を知ったんだ。
恩人であるカツ丼の兄ちゃんのところに来るのは当たり前だぜ」
そるじゃ子がハードボイルドに言った。

かつて、暗殺者として
アーデルハイト連続殺人事件で出会ったそるじゃ子を、
蒼也は更生させたのである。

「そるじゃ子、なんだか、大きくなったな!」
当時10歳だったそるじゃ子も5年経ち、成長していた。
「へへ。
まるで、親戚の兄ちゃんみたいなこと、言うんだな。
あたいも、もう15歳なんだ。
あの頃と違うのは当たり前だろ」
「15歳だって!?
そっか、そりゃ、そうだよな!」
蒼也は、改めて、そるじゃ子の成長に驚いていた。

「弓月くると君もみんなのために祈ってくれてるそうです!
あたしたちも頑張らなくちゃ」
ペルディータ・マイナ(ぺるでぃーた・まいな)も、
メモリープロジェクターで、希望が出てくるような映像を投影していた。

笑っている赤ちゃんの映像だった。
「これ、ネフェルティティ女王か?」
「そうみたいだな」
そるじゃ子の問いに、蒼也は目を細める。
他にも、世界中の赤ちゃんの映像が、順番に映し出される。

人々が笑顔になり、希望を取り戻していくのを見つつ、
ペルディータは飲み物や軽食を配り歩く。
「皆さん、ここまで来るのにも大変だったでしょう。
一休みしてくださいね」


蒼也の防衛計画で、儀式場の警備を万全にし、
蒼也とそるじゃ子はモンスターを迎え撃つ。

「なあ、兄ちゃん。
あたい、兄ちゃんには、ほんとに感謝しているんだぜ」
「どうしたんだよ、そるじゃ子。改まって」
「いや、ガキの頃は、あんまりこういうこと、言うの苦手だったけど、
世界がこういうふうになって、ちゃんと伝えなきゃって思ってさ……」

そう、口にしたそるじゃ子の、表情が一転する。

「そるじゃ子!?」
そるじゃ子は、リボルバーで、蒼也に近づいていたモンスターを撃ちぬいたのだった。
「悪い。後で話す。
ここは、戦場だったな」
「ああ。あとでゆっくり、思い出話しような。
これまでの話と……。
それと、これからの、未来の話もな!」
蒼也が笑顔を向けると。
「ああ」
そるじゃ子は、ハードボイルドに微笑を浮かべ、うなずいたのだった。


◆   ◆   ◆


 少年探偵こと弓月くるとは、一小学生として怯えていた。
 
 体長五十メートルの怪獣もでてくる、惑星衝突パニックSF映画「○○ゴラス」(一九六二)。
 どちらもヒットしたけれど、オリジナルとリメイクでは日本列島の運命が違う「○本沈○」(一九七三・二〇〇六)。
 新型ウィルスで人類のほとんどが死滅した後の物語で、世界初の南極大陸ロケも話題になった「復○○日」(一九八〇)。

 近未来日本の首都、ネオ東京で不良少年と超能力者が激突する「AK○RA」(一九八八)。
 犯罪者と刑事の対決が地球滅亡レベルまで拡大する「D○A○ OR ○L○V○ ○罪○」(一九九九)。
 題名通り地球が砕け散る古典SF映画「○○最後○○」(一九五一)。
 核爆弾による放射能汚染で、滅亡が確定した人類の終末の日々を描く「渚○○」(一九五九)。

 NYに隕石が直撃する「○○オ」(一九七九)。
 地球に彗星が激突する「ディープ・○○○○○」(一九九八)。
 世界最高の石油採掘人が小惑星を破壊しに宇宙へゆく「ア○○○○ン」(一九九八)。
 環境破壊が原因らしい世界的な異常気象が起こり、NYがマイナス百八〇度の寒波に襲われたりする「○○・アフター・○○○○ー」(二〇〇四)。

 一見、破滅・パニックものにみえて、実はメフィラス星人的な古典侵略SFの「地球が○○する○」(二〇〇八)。
 天変地異でもお金持ちと賢い人が生き残るお話「○○○2」(二〇〇九)。
 一人の男の人が性欲をどれだけ我慢できるかで世界の明暗が決まる韓国映画「○○○○○・ビキニの侵略」(二〇一〇)。
 地球上全世界にある洪水説、その代表である旧約聖書のエピソードを映像化した「○ア ○○○舟」(二〇一四)。

 地球、世界が滅びる映画は他にもたくさんみてきたけれど、ほんとうに、僕が、その時に立ち会うかもしれないなんて、考えたことがなかった。
 くるとは、戦闘の被害を受け、半壊した空京の映画館にいた。
 屋根が半分崩れて、客席からは、なにも映っていない白いスクリーンと、曇り空がみえる。もちろん、いま、席に座っているのは、くると一人だけだ。
 日頃、彼の保護者代わりをしている遠い親戚の女子高生、古森あまねは、くるとをここに残して、表の通りの様子をみに行っている。

 世界は滅ぶのかな。そうなると、新しい映画はもうつくられない。
 くるとは、パラミタでの事件捜査の時に知り合った少女の顔を思い浮かべた。

 百合園女学院推理研究会のペルディータ・マイナちゃん。映画をつくりたいって言ってた。このまま、世界が終わってしまったら、僕はマイナちゃんの撮った映画をみられない。
 推理研、PMR、スコット商会、僕と一緒に捜査してくれた、事件にかかわってくれたみんな、あの人たちとももう二度と会えないのかな。
 マジェスティックや石庭の人たち。
 ノーマン・ゲイン。

「くるとくん。維新ちゃんやセリーヌちゃんたちと合流できそうよ。さ、急いで」
 シートに沈んで思いに耽っていたくるとは、あまねに呼ばれて席を立った。
「もしかして、寝てた」
「ううん。考えてた。いや、祈ってた。いまの僕にできるのは、祈ることしかない」
「そうかもしれないわね。早く戦争が終わればいいのに」
「みんなが自由に生きることができて、また映画館に新作映画のかかる世界になるように、僕は、祈ってたんだ」
 くるとの手を強く握り、あまねはうなづく。

「きっと、大丈夫よ」
「わかってる」

◆   ◆   ◆


パラ実生徒会長の姫宮 和希(ひめみや・かずき)は、
舎弟達を連れ、
横山 ミツエ(よこやま・みつえ)とともに、戦っていた。
ミツエも、乙王朝のメンバーを引き連れている。

「世界を壊されたら中原を制する野望が絶たれるじゃない!
あたしの野望のためにも、絶対に世界を守って見せるわ!」

「ああ、俺の『大荒野を復興する』って偉業を成し遂げる夢だって、
断たれるわけにはいかない!」

そう叫んだ次の瞬間、
先頭を切って、味方の士気を鼓舞するミツエと、和希のスカートが、
大荒野に吹き荒れる風によって、同時にめくれた。

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」

パラ実生達と、乙王朝メンバーの士気がおおいに高揚する。

「こいつら、あいかわらず、この程度で……。
おっぱい三国志のころと同じね!
でも、いいわ!
和希、もっと派手に戦いなさい!」

「おう!」
そう言うと、スカートがめくれたくらい、まったく気にしていない和希は、
ドラゴンアーツで敵をぶん殴るべく、
軽身功の軽業で戦場を飛び回る。
得意の蹴り技が炸裂するたびに、パンツが丸見えになっていた。

「ガイウス、できるだけ前線で戦うと、
今ならパラ実生徒会長のパンツが見えるって、皆に伝えるのよ!」
「わ、わかった。
士気を高めるためだからな……」
ガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)は、
ミツエの作戦に、頭痛をこらえつつ、うなずいた。

「生徒会長ー!」
「おう、皆も頑張れよ!」
一方、和希は、舎弟や乙王朝メンバー達の声援が、
パンツ目的であることなど気にも留めておらず、
全力で戦うのに集中していた。

ガイウスは、防衛計画と根回しにより、
一般人を守るための計画を事前に伝達しており、
和希やミツエがいくら無茶してもいいように準備していた。

(まさか、こういう時まで、
下着だのみとは、複雑な気持ちだが……。
しかし、平和な世界になれば、和希のスカートもめくれないのではないか)

そんなことを思いつつ、ガイウスも、
放電実験で敵を倒していく。

「これで、乙王朝の存在感を、大きく示すことができるわ!」
ほくそ笑むミツエだが、
実際に大きく示されたのは、和希のパンチラの存在感であった。

◆   ◆   ◆


遠くの怪物から放たれた火球や暗いエネルギーの塊が空を飛び、
祈りを捧げる人々の合間へと降り注いでいた。
避難を進めるため、怪物たちを押し戻すため、契約者たちが逃げる人々の合間を駆けていく。
「泣いたら駄目、泣いたら駄目、泣いたら駄目ですわっ!」
逃げ戸惑う人々の中でポミエラ・ヴェスティン(ぽみえら・う゛ぇすてぃん)が、必死に『何か』を抱きしめているのが見えた。
「ポミエラ!」
想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)はポミエラを見つけ、彼女の傍に駆け寄った。
「夢悠さん……! それに――」
「無事で良かった!」
想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)がポミエラを抱きしめる。
「瑠兎子さぁんん゛」
緊張が解けたのか、ポミエラの声がやや泣き声じみる。
「瑠兎姉はポミエラを連れて後方へ。オレはここで皆の援護を続ける」
「夢悠……」
「絶対にここは守りきる……新しい世界を作るため、オレ達の未来を守るため、皆の希望を絶やさないために!」
「わたくしも一緒に頑張りますわっ!」
「え、ポミエラちゃん……でも」
戸惑う瑠兎子から体を離し、ポミエラはグルグルと腕を動かして見せた。
「わたくし、瑠兎子さんの演武を見て体の動きを覚えてますのよ。どんな魔物が来たってへっちゃらですわっ!」
と、彼女は先ほどから抱えていたものを落としそうになって、慌ててそれを抱え直した。
「それは?」
「――オルゴール、ですの。わたくしの大切な」
紺色の四角いケース。金色の文字で『Dear my friend』と書かれている。
「わたくしにとって大切な生きることの喜び……他にもたくさんたくさんありますわ」
「ポミエラ……分かった」
「夢悠!」
「ポミエラはオレと一緒に援護を。瑠兎姉は、魔物たちからポミエラや他の人を護って。お願いしていい?」
夢悠は真剣に、でも、明るくそう言った。
「……分かったわ。任せて」
瑠兎子が軽く息をついてから、笑む。
そして、瑠兎子はポミエラの頭を一撫でし。
「さっきの演武。50点くらいね」
「まあ」
ポミエラが頬を膨らませる。
「だから、今度教えてあげるわ」
笑み残し、瑠兎子は軽やかに怪物たちへ向かい、駆けだした。
風術を放った次の所作で剣を抜き放ち、跳躍する。
「オレたちも行こう!」
「ですわっ!」
そして、彼らは必死の援護を続けたのだった。

◆   ◆   ◆


十本の鋼糸が戦場を舞う。
刹那の後に、肉と黒とを引き裂いた音が響き、一帯の魔物たちの身体が地に落ちた。
「……あたいは……覚悟を決めている」
アルブム・ラルウァは“終わらない”と決めていた。
あの日、兄弟を失い、新たな同胞を得、前へ進むと決めた時から。
「久しぶりですね……」
後ろから聴こえた声。
アルブムはそちらを見やることなく言った。
「……きっと来ると思ってた」
「朱鷺もです。ですが、今は再会を祝う時ではありませんね」
ラルウァ 朱鷺(らるうぁ・とき)が符の束を手にアルブムと並び、新たに集いつつある怪物の群れの方を見やった。
「……お姉さん、腕あげたね。わかるよ」
「キミも、あの時から停まらなかったようですね」
「……追われてるから」
「早く追い越したいものです」
「……それは、無理。だって……」
「キミは、アルブム・ラルウァ、ですからね。そして、朱鷺もまたラルウァの名を持った者」
怪物の群れが迫る。先ほどと比べものにならない程、多く。
アルブムは、ヒュッと十糸を引き、それらを見据えた。
「……あたいとお姉さんとで紡いだラルウァ家の歴史を、未来を」
「ここで無くす訳にはいきません。亡きラルウァ家の先人達、そして……ニゲル、ルクスの両名が切り開いたこの道を!!」
朱鷺が符を放ち、アルブムが鋼糸を躍らせる。
「逆にここに、ラルウァ家の全てを見せ付けてあげましょう。ルクス、ニゲルが見ていますよ」
――乾、坤、屯、蒙、需、訟、師、比、小畜、履、泰、否、同人、大有、謙、予、随、蠱、臨、観、噬ゴウ、賁、剥、復、无妄、大畜、頤、大過、坎、離、咸、恒、遯、大壮、普、明夷、家人、ケイ、蹇、解、損、益、夬、コウ、萃、升、困、井、革、鼎、震、艮、漸、帰妹、豊、旅、巽、兌、渙、節、中孚、小過、既済、未済――
「六十四卦の符よ、この戦場を駆け巡れ!!」

そして。

「ヌオー!!!!!」
彼女らの傍に、ぬぅっとそそり立つ巨大な影。
第七式・シュバルツヴァルド(まーくずぃーべん・しゅばるつう゛ぁるど)

『我が生まれし、この世界が終焉也?
まだ也
まだ我は歩める也

我が前にあるのは、我と我が主の未来也
それ以外の一切の障害を排除する也』

「我が歩み、止めることはあたわず」

ゴォッと振るわれたそれが、怪物を薙ぎ払う。

「我は古城也。
この程度で我は止まらぬ也。
止まれぬ也」

そして、彼らは数多くの怪物たちを駆逐していくのだった。