空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

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【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


祈りよ届け 1

シャンバラ儀式場の一角。
最も隅の方で、
あまり、人が周囲にいない場所。

メニエス・レイン(めにえす・れいん)は、
静かにたたずんでいた。
これまでの出来事を思い返し、
メニエスの心に後悔がよみがえる。
(でも……あたしはこの世界が好き……!)
孤独と絶望から、自分を救ってくれた、この世界を。
必ず守り通したいと、強く願っていた。
それは、これまでの渇望とは異なり、
心が温かくなる、そんな気持ちだった。
(あたしに生きる希望をくれたこの世界を、
この蒼い空の在る世界を終わらせたくない……!)
温かさは、熱を帯び、メニエスに決意を促す。

「アールマハト、あたしのワガママで申し訳ないけど……あたしに祈る時間をちょうだい!」

「――私は全能の書 『アールマハト』。メニエス様の命令を実行します」
全能の書 『アールマハト』(ぜんのうのしょ・あーるまはと)が、
いつもどおり、感情のこもらない声で告げる。

ひざまずき、祈りを捧げるメニエスの周囲に、
モンスターが近づいてくる。

『アールマハト』が、魔法を使って、モンスターを撃破していく……しかし。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」

「!」

『アールマハト』がメニエスに迫る敵に魔法で反応しようとするが、わずかにまにあわない。
メニエスは、両目をつぶり、強く願った。
(お願い、どうか、この世界を……!)

『アールマハト』が、メニエスをかばおうと、身体を割り込ませた。
その瞬間のことであった。

「グウウウウウウウッ!?」
モンスターが、悲鳴を上げ、倒れていた。

「まったく、おまえの自分勝手は、あいかわらずじゃのう」
アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)と、
イルミンスールのメンバー達が、
メニエスと『アールマハト』を助けたのであった。

「アーデルハイト様、どうして?」
驚くメニエスに、アーデルハイトが肩をすくめる。
「どうしても、なにも、あるか。
おまえたちも、これからも生き続けねばならないのは同じじゃ。
だから、無理はするなよ」
「はい、祈り続けるためにも、立ち上がらないと」
アーデルハイトにメニエスがうなずく。
「だから、これからの世界に、おまえたちも必要だと言っておるじゃろう?
もし、よければ、おまえの作ったシャンバラ山羊のミルクのアイスを食べてみたいのう」
アーデルハイトは、真面目な表情のメニエスにウインクして見せた。

「……はい! お約束します!」
メニエスは、微笑を浮かべ、うなずいた。

「全く、ココまで入り込んでくるとは。侵入経路が気になりますわね」
ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)が、
周囲を見渡してつぶやいた。

次の瞬間、別のモンスターが、上空から迫りくる。

「アーデルハイト様に
攻撃しようなど言語道断!」
風森 望(かぜもり・のぞみ)が、龍銃ヴィシャスで、モンスターを撃ち落とす。
「ご安心を。このわたくしが有る限り、皆様には指一本触れさせませんわ!」
ノートも、アーデルハイトたちに言う。

「お嬢様、ここは、お嬢様にお任せします。
私は、アーデルハイト様の伝令として、指示を伝えてまいります」
「うむ、頼んだぞ、望。
儀式場は広いからの。
なるべく、大勢で一箇所に集まるのじゃ。
護衛の契約者も、なるべく連携して、孤立しないようにと伝えてくれ」
「わかりました、アーデルハイト様!」
望は、アーデルハイトにうなずき、走っていった。


ノートに護衛されつつ、
アーデルハイトは、儀式場の安全な場所へと戻ってくる。
そこには、
【イルミンスール魔法学校生徒会会長】のフレデリカ・ベレッタ(ふれでりか・べれった)と、
パートナーのルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)が待っていた。

「ハイジ様、
そちらの状況はいかがでしたか?」
「うむ、油断をすることはできぬが、
皆、頑張ってくれておるからの。
そっちはどんな感じじゃ?
おまえがいるから安心だとは思っていたが」
「はい、こちらも、目立った変化はありませんが……。
やはり、モンスターの襲撃が、段階的に強くなっている懸念はありますね」

フレデリカは、状況をまとめ、アーデルハイトと共有する。

「そうか。必ず、ここを乗り切ろう。
おまえの身に宿る、新しい命のためにもな」
「はい。この子の生まれてくる世界を、私はなんとしても守りたいと思っています」
フレデリカは、お腹に手を当てて言った。

「フリッカ。あなたが大切と思う人が多くいるように、あなたのことを大切な人も多くいます。
そのことを忘れないでくださいね」
「ルイ姉……」
ルイーザが、フレデリカに、そっと寄り添う。

(この世界が楽しい事ばかりだとは言いません。
でも、この世界には辛い事以上に素晴らしい事が
あふれている事も忘れてはいけないのではないでしょうか?)
かつて、恋人を失ったルイーザを、救ってくれたのはフレデリカだった。
悲しみのどん底にいた時のように、「滅びを望む」のをわからないわけではない。
(ですが、それは誤りだと、胸を張って言えます)
ルイーザは、大切な人たちのいるこの世界を、
必ず守りたいと、パートナーとともに誓うのであった。


再び、アーデルハイトは、各地へと支援のため赴く。
「これが済んだら祝勝会ですよ。
校長の好物も沢山用意しておくのでちゃんと帰ってきて下さいね」
イルミンスール魔法学校校長のエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)に、
アーデルハイトを通じて、
ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)がエールを送る。
「もちろんですぅ!
おいしいもの、たくさん用意するんですよぉ!」
エリザベートの返事を受けて、
ザカコは微笑む。
「はい、もちろんです」

「アーデルさんの好きな物も用意しますから」
「うむ、私も楽しみにしておるからの」
ザカコに、アーデルハイトはうなずいた。

その後、傷ついた人の治療に、ザカコは奮闘する。

「頑張っておるな」
「はい。アーデルさん、少しだけ休憩しましょうか」
山羊のミルクを渡し、ザカコはアーデルハイトと休む。

「ほら、アーデルさん、ミルクがついてますよ」
「!?」
ザカコは、アーデルハイトの頬にキスをした。

「幸運のおまじない、ってやつですよ。心が熱くなるおまけつきです」
「こ、こんなときに何を考えておるのじゃ」
「こんなときだからですよ、アーデルさん。
帰ったら続きもしましょうか? なんて」
「今はこんな場合じゃ……と、こんな話をしている場合じゃないな。
ふざけておらずにとっとと行くぞ!」
「はい、色々補給できましたし、改めていきましょう!」

その様子を見ていた、
ザカコのパートナーの強盗 ヘル(ごうとう・へる)は。
「へいへい、ごちそうさま」
肩をすくめていた。

そして、ヘルは、改めて、敵に向かっていく。

「滅びたい奴は自分だけで地獄に落ちやがれ!
他の奴まで巻き込むなっつーの!」
機晶スナイパーライフルで射撃を行い、
ヘルは味方を支援するのだった。