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リアクション
『エントリーナンバー7……』
舞台袖から絢爛豪華な衣装を纏ったアーシラト・シュメール(あーしらと・しゅめーる)が現れた瞬間、どよめきが起きた。胸元を大きく開き、その美脚を脚の付け根まで惜し気なく晒した、女王然とした姿。
今まで登場したアイドルたちとはガラリと雰囲気が変わり、魔性の雰囲気を纏ったアーシラトに熱い視線が集まる。
『レンタル彼女ならぬ、レンタルアイドル。会いに行けるアイドルならぬ、デートの出来るアイドル……シュメール!!』
舞台袖では如月 和馬(きさらぎ・かずま)が、アーシラトをじっと見ている。和馬は、どこか自信がありそうな笑みを浮かべて、ステージが進行していく様子を見つめていた。
『ということは、実際にファンの方とデートをしているということなの?』
「ええ、その通りです」
『デートをするにあたって、どのような気持ちを抱いているのかしら?』
「今この一瞬が、人生において死ぬその瞬間に良い思い出として記憶されるなら、これに勝る喜びはありません」
寿命があって無いようなアーシラトにとって、その言葉が全てだった。
観客席には、首を捻る観客がいる一方で、食いついたように身を乗り出す観客も見受けられる。どちらにせよ、インパクトは十分だ。
『それでは、実際にファンとデートをしたドキュメンタリー映像をどうぞ』
エンジュの言葉が終わるとともに、ステージのライトが消えてオーロラビジョンに映像が映し出された。
魔性の背徳の美学溢れる衣装を纏ったアーシラトの前に、俯いておどおどとした男が立っている。
「ほほほほ本日は宜しくお願い致します……」
蚊の鳴くような声で言う男の手を、アーシラトが取った。
「何も気にすることはありません。デートをするのでしょう?」
「はっ、は、はい!」
アーシラトにリードされて歩き始める男。
『彼は、女性と手を握ったことも、会話をしたこともない、奥手で純情な男性でした』
アーシラトが説明を加える。映像の中のアーシラトは、その男を伴ってどこかの店に入っていく。
「こ、ここって……」
「どうかしました?」
「その……ここ、男が入ってもいいところなんですか……?」
アーシラトが向かったのは、女性用下着専門店だったのだ。戸惑う男に、アーシラトは妖艶な笑みを向ける。
「デートをしているのだから、何も戸惑うことはないでしょう」
「ででで、デート……」
男は改めて、アーシラトとデートをしているということを認識したように、顔を真っ赤にする。
「さあ、行きましょう?」
その後もアーシラトは男を連れ、女性同伴でしか入れそうにないスポットを巡った。
映像も終盤に差し掛かった。ホストクラブから出てきた男は、刺激が強すぎたとでも言うかのように目を白黒させている。
「少し、刺激が強かった?」
「そ、そんなことは……でも、……はい、少し」
「ふふふ、そう」
アーシラトがデートの最後に行ったのは、耳かきだった。男たちを釘付けにするその脚に男を横たえ、癒しの時間を提供する。
「気持ちいいでしょう?」
アーシラトに甘い吐息をかけられ、男は魂を抜かれたようにアーシラトの太ももに身を任せた。
「素晴らしいよキミ!!! 是非僕にもしてくれたまえ!!!!」
映像が終わった瞬間審査員の一人が叫んだ。しめた、とばかりに和馬がにやりと笑う。
アーシラトのアピールは、主に特定の男性層に多大な影響を及ぼしたようだった。
♪ ♪ ♪
『エントリーナンバー8、魔法を駆使するジュニアアイドル……
エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)!!』
名前を呼ばれたエリザベートは、ステージ中央へと歩み出た。
『本日ははどのようなアピールをするのでしょう?』
「夢と希望の象徴と言えば、星ですぅ。ということで、星を振らせてみせるのですぅ」
エリザベートが言い終わる前に、イベントホールの外から轟音が鳴り響いた。
『ちょ……ちょっと待って!?』
会場は一時騒然となった。なんと、隕石の塊がコンテスト会場目掛けて降り注いできたのだ。
この時、最強アイドルコンテストの裏で、パラミタ滅亡を救った者たちがいたとかいなかったとか。
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