text:砂原かける
パラミタの自然や文明の特色をご紹介します。
自然
- パラミタの海
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パラミタ大陸は「浮遊大陸」の二つ名の通り、一面の雲の中に浮いています。
雲海は地球上と同様に氷の粒からなる雲で形成され、パラミタはいわば空に浮いている状態です。そのため雲海を進むのには、空を飛ばなくてはいけません。
地球における船や飛行機の代わりに、機晶エネルギーで飛ぶ飛空艇が雲海やパラミタ上での輸送を担っています。
雲海の遥か下には、死後の世界であるナラカが広がっていると言われています。
伝説では、ナラカには大巨人アトラスがいて、パラミタ大陸を掲げ持って雲海の上に出しているのだそうです。
なお地球で言うような「海」は、大陸中央部にあるパラミタ内海しかありません。
内海の水は塩水ですし、面積も非常に広大なので、海岸から見た景色は地球の海とそう変わりありません。
内海には波も立っており、大陸そのものの魔力や、周辺を浮遊する島の影響で波が起きる、とされています。
パラミタの川は最終的に、パラミタ内海や湖に注ぐものと、大陸の端から雲海へと流れ落ちるものに大別できます。雲海へと落ちた水は長距離を落ちるうちに水蒸気となり、雲海の雲と変わります。
地球とパラミタが繋がって以降は、地球側の太平洋に流れ落ちている川も存在します。
- パラミタの天体
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雲海に浮かぶのは、浮遊大陸パラミタだけではありません。この空には、さまざまな性質を持った大小の島々が、無数に存在しています。
夜空を彩る星や月、さらには大陸を照らす太陽も、パラミタを周回している島です。それらの島々は皆、非常に遠い所にあり、普通に飛空艇などで行ける距離ではありません。
当然、星の配置は地球と違いますし、星座などは地域ごとにバラバラです。
こうした天体は基本的に、パラミタから見て東から空に上り、西で雲海に没します。ただ中には、ずっと空にある星や、不規則な動きをする星もあります。
こうした島々(星、月、太陽)は行く事はできなくとも、古くからパラミタで魔法や予知に利用されています。
なお、地球とパラミタが繋がって以降、両世界の境界であるトワイライトベルトの地球側は、地球上に突き出した形です。
その為、ベルトの地球側(2020年現在は西シャンバラの領土)では、太陽、月、星は地球のそれです。この地域では、日本の南部地域で見えるのとほぼ同じ夜空、星座を見る事ができます。
- 巨獣
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パラミタには巨獣と呼ばれる、大きな獣が多数、生息しています。
巨獣は地球上の生物と姿は似ているものの、大きさは象ほどの大きさから数十mもあり、中には数百mの大きさになるものまでいます。
一口に「巨獣」と言われていますが、哺乳類だけでなく、昆虫や爬虫類など、多くの生物の巨獣が確認されています。
巨獣の中には、地球の中生代に生息していた恐竜や、人類が繁栄する以前に現れた巨大哺乳類に酷似したものもいます。
彼らがなぜ巨大化したのか理由は分かっていません。諸説では、パラミタ特有の放射線であるパラミタ線の影響だとか、ナラカを登る際の生存競争で大きくなった、などと言われています。
荒野の住人の中には、この巨獣を飼いならし、荷物運びや開墾に利用している者もいます。
他に、イルミンスールでは、巨大な甲虫を戦わせる試合なども開かれています。
パラミタでの単位
パラミタの度量衡は統一されておらず、種族や地域ごとに独自の単位を持っています。他地域の住人と交渉する際には、それぞれの単位を確認する事が大切でしょう。
ただ最近は地球人の進出により、m(メートル)やg(グラム)などの単位も各地で通用するようになってきています。
時期により上下しますが、1ゴルダは日本円にすると100円~500円の価値があります。
交通
- 道路
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エリュシオン帝国やマホロバなど、比較的文明が高くて治安が安定している国では、主要な街をつなぐ幹線道路があります。
東西シャンバラでは、地球の資本によって、そうした幹線道路が整備されたばかりです。
古王国期には「すべての道は王都シャンバラに通じる」と言われたほど、シャンバラの道路網は整備されていましたが、古王国滅亡で消失してしまいました。
道路の状態は、各国各都市によって、まちまちです。
例えば空京では、魔法的工法によってアスファルトを超える耐久性と滑らかさを持つ舗装が施されています。
石畳の道もパラミタの都市部では、よく見られます。
しかし都市間の幹線道路となると、舗装されていなかったり、無法者が占拠して違法に通行料をせしめるなどの問題も起こっています。
道路を通るのは、徒歩以外にも馬や馬車が見られます。
なお、パラミタにも馬や牛、ヤギ、犬などの家畜がおり、運搬や農作業、牧畜に利用されています。
また地域によっては、大型の鳥、恐竜、巨獣などが乗用や荷物引きに使われます。
なお大きな戦いが起これば、これらの家畜や動物も戦いに使われるでしょう。古代の城攻めでは巨獣が使われた、などの記録も残っています。
さらにシャンバラでは最近、地球人が作ったバイクや自動車、自転車なども走っています。
ただ、それらはまだ数が限られており、特に自動車やトラックは贅沢品です。空京工場で自動車の生産が進んでいるとは言え、まだ当分の間、陸上輸送の核は馬車が担いそうです。
- 水運
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パラミタ内海やシャンバラ各地を流れる大河では、帆船やガレー船による輸送が行なわれています。
特に巨大輸送船による内海での海上貿易は、関わる国や都市を潤しています。しかしシャンバラは利益の見込めない辺境であるとして、それらのルートから外されてきました。
パラミタでよく見られる船は、風を利用する帆船で、蛮族などは奴隷に漕ぎ手をさせるガレー船を走らせています。羽振りの良い海賊には、機晶姫が漕ぐガレー船を乗り回す者もいます。
またシャンバラのヴァイシャリーのように水路で囲まれた街では、細い水路をゴンドラが行きかっています。
他にも、機晶石や魔法を利用した高性能の船や、内海一周を謳う豪華客船があります。
また運送とは関係ありませんが、内海には幽霊船にまつわる怪談や目撃談もあります。
- 飛空艇
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機晶石のエネルギーで飛ぶ飛空艇は、古王国シャンバラで作られていました。
当時は、軍用で大型の「飛空艦」、小型の「飛空艇」、民間用の「飛空船」という区分が存在しました。しかし現在では飛空艇以外はほとんど残っていない為、すべてが飛空艇と言われています。
古王国期、シャンバラの飛空艇は大陸各地を行きかっており、その為に大陸各地に飛空艇が残されています。
シャンバラでは、飛空艇での輸送を請け負う民間輸送業者も多く見られます。その一方で、彼らを狙う空賊も活動しており、空も安全とは言えません。
なお、飛空艇は地球のジェット機に比べるとさほど速いものではなく、プロペラ機程度の速度しか出せません。
動力は機晶石から取っている為、他に燃料は入りません。しかし定期的な補修や手入れは、地球の機械同様に必要です。
小型飛空艇という一~二人乗りの乗物もありますが、こちらはスクーター程度の性能とスピードしかなく、あまり丈夫な物でもありません。馬に代わる乗物のひとつ、という位置づけでしょう。
最近では、積載量や稼動性能を特化させた小型飛空艇も出てきているようです。
- 鉄道
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西シャンバラ王国では、機械都市ヒラニプラと空京の間に鉄道が通っています。
空京がある島から大陸本土には、この鉄道が通る専用の鉄橋も架けられており、大型機械などの輸送に使われています。
この鉄道は、もともとは空京で発掘された魔列車が元になっています。魔列車の動力は、飛空艇と同じく機晶石です。
同じく魔列車を応用したものが、地球の東京上野と空京の間を結ぶ空京新幹線です。空京新幹線は世界の壁を越える為、有能な空間魔術師が運用をサポートしています。
この空京新幹線の開通で、地球によるシャンバラ開発が本格的に始まったと言ってよいでしょう。
さらに、シャンバラとナラカの間をつなぐナラカエクスプレスという列車も存在するようですが、一般の人々の間では伝説でしかありません。
通信
- 古くからのパラミタの通信手段
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昔からパラミタの大都市間では、街道や馬車を活用した郵便制度がありました。ただし、蛮族の襲撃にあえば郵便物は消失するなど信頼性は低い物です。
その為、冒険者などに独自に手紙や荷物の配達を頼む事も行なわれてきました。
一方、軍用や外交用など国家に関わる重要なシーンでは、魔法を使った通信やテレポートなども行なわれています。
テレポートにはいくつか方法がありますが、そのどれもが非常にコストがかかるため、民間で利用される事は滅多にありません。
これは、テレポート技能を収めた者が瞬時に移動するのでも、魔法陣や魔導装置を使うのでも、その使用に強大で特殊なエネルギーや、珍しく高価な触媒や材料が必要となるためです。
シャンバラ地方では地球の技術導入によって、通信インフラも急激に整ってきています。
- 携帯電話
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シャンバラ地方の都市周辺と、都市間をつなぐ道路周辺では、携帯電話の使用が可能です。
携帯電話はシャンバラ人の間でも非常に人気があり、携帯基地局の建設はほとんどの街や村が希望を出しています。
パラミタの他の地域でも、地球の話はまともに伝わっていませんが、携帯電話の話だけはほぼ正確に伝わっています。
離れた人間と自由に話すことが出来ることはそれほど革新的なことなのです。
この為、携帯電話の基地局の設置が、STT(シャンバラ電信電話株式会社)と学校により急ピッチで進められています。
なお契約者は、パートナー同士なら電波に関係なく携帯での通話が可能なため、ほぼ間違いなく携帯電話を所有しています。
- インターネット
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東西シャンバラの都市周辺ではインターネットの使用が可能です。
ただし、地上との常時接続は不可能で、一週間に一度、データのやりとりが行われている状況です。そのため、シャンバラ内での閉じたネットワークとなります。
ですが、天御柱学院のある海京は地球にあるため常時接続が可能です。また、2020年に入って完成した天沼矛によって空京でも常時接続が可能となりました。
その他の西シャンバラの都市ではインフラが未整備のため、政府専用の回線以外は、これまでと同じく一週間に一度の更新となっております。
また、東シャンバラ側では例外なくデータは一週間に一度の更新です。
エネルギー問題
2020年の地球でもエネルギー問題は解決しておらず、パラミタの資源により解決が図れるのではないか、と期待されています。
エネルギー問題について熱心な学校は、蒼空学園と薔薇の学舎です。
特に薔薇の学舎は、新たなエネルギーを発見しているものの石油が枯渇するタイミングまで隠しているのではないか、という噂がまことしやかに囁かれています。
ー問題の解決も遠ざかったのではないか、と地球では心配が高まっています。
しかしパラミタには、神秘の国ポータラカの技術を始め、まだまだ未知のテクノロジーやエネルギーが眠っているかもしれません。
- 太陽電池
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日本では太陽電池の小型化、大出力化の研究が進んでおり、特に蒼空学園で使われる小型電子機器の多くに高性能な太陽電池が内蔵されています。
しかし太陽電池だけではすべての電力をまかなえないため、決定的な解決案とはなっていません。
なお同じくクリーンエネルギーで、風力発電のプラントも作られてはいます。
しかし低周波の問題などから、人里離れた場所に設置する為、賊による略奪や破壊の対象とされる事が多く、設置は進んでいません。
- 原子力
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現在のところ、パラミタからはウランなどの鉱石が発掘されておらず、原子力の開発は行われていません。
- 魔法と奇跡
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魔法と奇跡が大きな力を持つようになった今、こうした力は地球でも代替エネルギーとして期待されています。
特に魔法使いは熱の操作と電気を放出させる力を持っていることが判明しており、優秀な魔法使いが充分な人数確保できればほとんどの問題が解決できるとされています。
しかし、魔法の才能を持った人間の数が限られること、そうした優秀な人材は単純作業を嫌うこと、魔法使いは安易に自分たちの能力を使いたがらないこと、魔法の出力は不安定であること、などの理由から実現には至っていません。
噂によると、問題を起こした魔法使いは所属する魔術結社によって捕らえられ、懲役として強制発電刑に処されることもあるということです。
パラミタの神の中には、一柱で発電所以上のエネルギーを発する能力を持つ者もいますが、彼らが自国民以外に力を貸す事はあまりないでしょう。
- 機晶石
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パラミタには機晶石と呼ばれる謎の石があり、これを用いることで機械を動かせることがわかっています。詳しい原理はパラミタ人も理解できておらず、ただ伝統技術として引き継いでいるだけです。
機晶石からは熱や電磁波などが観測されますが、計測されるエネルギーでは動かせないような大きな機械をも動かすことができます。
空京新幹線やイコン、さらには機晶姫が、この機晶石を動力源にしています。
シャンバラではアムリアナ女王の復活時に、多くの遺跡が復活しましたが、これらも機晶石を動力源とする生産プラントでした。
現在、それらプラントではイコンの生産が進められています。
機晶石は、日本で特に期待されている次世代エネルギー候補ですが、しばしば機械が暴走することが判明しています。各国政府はこの問題について公表しないようにしています。
- パラミタトウモロコシ
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トウモロコシによく似た植物ですが、トウモロコシ以上に豊富な油脂を取り出すことができるうえ、繊維からはプラスチックのようなものを作ることもできます。
これによってより効率的なバイオエタノール生産が可能になるとして、特にアメリカが関心を寄せています。
パラミタトウモロコシは荒地でも育つため、シャンバラ大荒野にあるパラ実の分校の中には、パラミタトウモロコシの生産を行なう農場などもあります。
パラミタトウモロコシは一応、食用にもなりますが、それほど美味ではありません。しかし、ゆる族は好んで食べると言われています。