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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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兵は詭道なり-06 岩城攻防戦(2)

 最も倒れている数が多いのは、ならず者らの部隊のようだ。黒羊軍は、統率は高いが、後方に固まっており、あまり攻めてきていない。後方の龍雷援軍とあたっているのは、専ら獣人兵のようだ。ならず者らは積極的に城に取り付き、よじ登ろうとしているが、弓と術にそれを阻まれ、多くの犠牲を出していた。中にはローグ・忍のスキルを持っている者もいるらしく、城内に侵入できる者もいるようだが、数は多くなく、城内に残るフェイトらによって討たれるか、囚われるかしている。
 岩造の率いる食い詰めは、ならず者とはほぼ互角に打ち合っている。
「おお、鍛えてきたかいがあったというものだ。食い詰めが、兵としてきちんと戦っている。
 一人も犠牲者は出させん!」
 倒れている食い詰めは少ない。
 だが……
「ぎゃぁぁぁ! た、隊長…………」
「く、何が起こった」
 食い詰めの首が二つ三つ転がってくる。
 豪壮な槍に串刺された浪人の体。……ドストーワの獣人兵だ。
「ガンゾウ……グッヘヘ」
 せり出していた浪人らを串刺しにした獣人兵が、城の前で戦う岩造らのもとまで上がってきたのだ。
 ブライトグラディウスを構え、向き合う。「浪人どもは下がっておれ。むっ?」
「貴様が龍雷の隊長か」
 巨大な朴刀を片手でかかえた男が来た。
「随分と、俺達の大事な仲間を葬ってくれたなぁ。許さんよ? このならず者首領メリガーゼカセ。貴様を殺し、仲間の供養にしてやんよ」
 首領と、三人の手練れのならず者が、岩造を囲んだ。「逃がさねえ」「殺す」「犯す」
 獣人兵が、ならず者を蹴散らし始めている。
「……岩造様」
 カルスノウトを弾かれたファルコンがさざれ石の短刀を取り出す。ファルコンでも、凌ぐのがやっとだ。



 後方。黒乃の采配は見事だった。クレベールとルクレールに指示を繰り出す。
 二人は、プーマを御し、混戦になる前に、おのおのがツインスラッシュとスプレーショットで群がる敵をひるませ、爆炎波で敵を吹き飛ばす戦法をとらせた。敵の塊を中心に集め、ドリヒの攻撃対象がばらけないようにしようというのだ。
「それが無秩序に機動戦の正体です」「それが無秩序に機動戦の正体です」
 クレベール、ルクレールは巧みに各々の機晶姫を操る。
 二人はなるべく、敵に直にあたらないように、この敵の誘導に努めた。獣人兵の威力は半端ではない。フランソワでさえ息切れをしている。ただドリヒの破壊力は兵器並で塊った敵まるごと押し潰していた。黒乃はこのドリヒの一騎当千に目を付け捕獲したわけだった。
「ヤロウ!!」「怪物メ!」
 ドリヒを仕留めようと躍起になる獣人兵。
 後方に布陣していたラッテンハッハ(らってんはっは)が来た。
「よし今である。遠巻きにせよ。弓隊」
 黒羊の隊が、一斉に展開し、ドリヒに狙いを定めた。
「あっ。ドリヒ」
 ドリヒテガに降り注ぐ矢。みるみる朱に染まっていく。ドリヒが咆えた。



 城壁の縁に手をかけ、唸る、甲賀。
 もともと、数が違いすぎる。しかも敵は、バンダロハムの戦いのときに相手になった食い詰めではないのだ。黒羊兵よりも歴戦の強者と言えるならず者と、何よりドストーワの獣人兵。(おそらく信徒兵(まだその存在の知られていない)を除けば)今シナリオ中最強の兵と思われる。(しかもここに来ているのは、未だその先鋒隊に過ぎないのだ。)
 だが、そのために甲賀が奥の一手を打ってあるのだ。それが動けば、敵は壊走する。それが動けば……
 甲賀は再び、唸った。
「ロザリオ……! ナイン……! どうした、まだか?」