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兵は詭道なり 後編 兵は詭道なり-06 ナインとロザリオと、ひろし 龍雷連隊の隊員・ナインとロザリオは、甲賀の下命のように、グレタナシァを北から窺う砂漠の軍と接触していたのだ。 「通行手形と馬車を使って、あなた方の尖兵を奴隷と偽り、グレタナシァ国内に送り込むこともさせて頂くわ」 小国の一隊を率いる指揮官は、それが本当なら、乗る、と返した。ナインは見事に交渉を成立させた。 戦力の大きくない彼らにとっても、正面から攻めるより、奇策を用いたい。 城の内部に部隊ごと潜入させられるなら、攻略は容易だ。 ナインは、にっこり微笑む。 「ええ、是非ご一緒に」 とだけ彼女は言った。ロザリオ曰く、まだこの時点では゛同盟゛とか゛約束゛めいたい交渉は一切認めない、ここが肝要なのにゃ。 しかし彼女らには思わぬ事態となった。 「!」 黒羊旗だ。 黒羊軍は前回において、小国の侵攻を察知しており、これを迎撃すべく一隊を差し向けたきていたのであった(6-02)。 将旗には゛ひろし゛とある。 「ひろし……?」 「ナイン殿と言ったか、下がっておりなされ。敵は多くない(見たところ我等の半数程か)。将も名の知れた将ではないようだ。 おそらく、見回りの部隊に遭遇したのかも知れん。ひと息に殲滅致す」 砂漠の軍は、一気に攻勢を仕掛けた。 * 「いましたな。そして、来ましたな」 黒羊軍の将{bold五月蝿 ひろし(さつきばえ・ひろし)は、自らの率いる主力隊を前面に展開させた。 すぐに交戦となったが、攻勢をかけてきた敵の勢いが勝っている。数もあちらのが多いのだ。 ひろしの隊は、程なく、後退を始めた。 「……腐るんじゃないよ。騎兵隊ってのは最後においしいところをかっさらっていく役目だからね。それまで我慢しとくんだね」 後方で、甘利 砲煙(あまり・ほうえん)が兵を叱咤する。 甘利が指揮するのは、竜騎兵隊こと騎兵隊だ。まだひろしは騎兵を出していない。 砂漠の軍にとっては案外にしぶとく、数を減らせない。 砂漠の軍は相手を押し、数里程も後退させたところで、一度攻撃の手を休めた。 「むぅ」 戦術を知るひろしは、「砂漠の戦は補給の有無が死命を決するのですよ」と、敵を本国から十分離したところで……と考えていた。魔道書チトー・リヴィオ(ちとー・りう゛ぃお)には、三日月湖での任務を終えた後、そのことをラッテンハッハに伝えてからこちらへ合流してくるように伝えてある。 だが、一戦交えてみて、どうもひと息に潰せそうだと判断できた。 ひろしは甘利に攻撃命令を下す。 「……これは予想外だったねぇ。おら、総員騎乗! とっとと片付けに行くよ!」 同時に、伏兵として敵の補給を絶つべく後方に回っていたフランシスコ・ザビエル(ふらんしすこ・ざびえる)ら猟兵隊が出現。 「降伏せよ! 降伏すれば命までは取らぬ!」 退路を断たれた敵部隊100は、あっさりと降伏、ひろしに投降したのであった。(王羊隊200) 更に、思わぬことがあった。 「ひろし隊長。降伏した敵軍の中に、教導団らしき者を見つけました!」 「何。連れて参れ」 「ちょ、ちょっと。何するつもりよ」「にゃー。逃がしてよ」 龍雷連隊の隊員・ナインとロザリオだった。 「むぅ。……」 「な、何恐い顔で見てるのよっ」「にゃー。このひと恐いにゃ」 「どうします? ひろし殿。これがかの、教導団最凶の部隊、龍雷連隊の隊員でしょ?」 「…………」 更に更に、予想外のことが起こった。 「何故、ドストーワの中軍がこれほど早く?」 まだ砂漠を行軍している筈の軍勢なのだが。グレタナシァと砂漠小国(砂漠の中央から西)の中間にあるひろしの隊と行き当たった。 「オマエラ、黒羊軍……砂漠ノ小国ヲ攻メテイル、ソウカ。ソレハイイ。 ダガオイ、我々ドストーワノ先鋒ガ、ならず者ノ裏切リデ、半壊シタト聞イタゾ!! 黒羊、ドウナッテル!?」 「何ですと。そのような情報が何処から……」 |
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