リアクション
* 北の森の手前にまでやって来た敵勢。 ならず者どもの一隊だ。 「ここを抜ければ、本陣だ。防御拠点というべきものもない。 民も殺せ。混乱に陥れ、一気に叩く。 本陣が落ちれば、俺達の勝利だ。ぬかるな!」 「副リーダー?」 「……何か。む、何だ」 ごく静かな足音が聞こえ、北の森へ近付いた敵に、襲いかかったのは、林田率いる騎狼部隊であった。 指揮を振るって統率を執り、敵勢の足並みを乱す。今日は【ショットガンプリースト】の林田 樹(はやしだ・いつき)が、騎上からショットガンをぶっ放す。 「喧しい!! 雑魚は黙っていろ!」 倒れていく、敵兵。 「後ろをとったぞ!」 敵将が、林田の背中に斬りかかるが、スプレーショットに撃ち抜かれた。 「馬鹿な……どこから?」 光学迷彩で林田の後ろにくっついて乗っかっている林田 コタロー(はやしだ・こたろう)だった。 「こた、ねーたんまもるお」 林田が振り向く。「私は約束したのだ。帰る場所は、私が守るとな」 林田のショットガン、相手を討ち取った。 * 北の森に逃げ込んだならず者…… 「く、忌々しい。急に霧が出てきてやがっ……」 だが、それは、アシッドミストであった。 森の中では、エル・ウィンド(える・うぃんど)が禁じられた言葉を詠唱しその魔力を最大限に高めていた。敵グループの侵入を察知すると、エルは魔法の霧アシッドミストを散布し、殲滅した。 静かな森。エルは神経を研ぎ澄ます。 「エル……一人で、大丈夫か?」 後方では、ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)が黄金の鷲の仲間と共に、退路を確保している。 民も、めいめいに軽い武装をして、一人でも抜けてくる敵があれば一斉にかかって討ち取ろうと、構えている。 ギルガメシュの後ろには可愛い少女がいるのだが。 「わたくしの出番は……」 「まだ、もう少し後だぞ」 エルの近辺は、黄金の鷲の中でもとくに腕の立つ食い詰め者数名が固めている。中には、手練れの元傭兵からの加盟者も一人見られた。 「はぁ、はぁ……」 「エル殿。大丈夫か?」「おい、こっちへ十人程来るぞ。アシッドミストを抜けたやつらか。エル、やれるか? それとも、俺達が」 「はぁ、はぁ。いや、ここはまだボクに任せてくれ。 来たか。ならば……」 エルの手に、炎が立ち現れる。「ファイアストーム!」炎の渦が、敵を巻き込んだ。 兵は詭道なり-10 反撃(2) 岩城。 攻めていた敵が凍りついた。 本営から編成された岩城への援軍が到着したのだ。 「ちゃんと到着するまで落ちずに持ってましたねぇ」 クレアからの300(パティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)率いる)。 「ちと、遅くなってしまったがのぅ。よくぞ持ちこたえたわい」 戦部からの200(グスタフ・アドルフ(ぐすたふ・あどるふ)率いる)。 林田の騎狼部隊、エルら黄金の鷲もいる。 600近い援軍だ。 「孔中尉、吶喊するであります!」 孔中尉が剣を抜き、切り込んだ。 グスタフ、パティが手を挙げ、指揮を執る。軍勢が動いた。 敵は、怯みを見せた。 このとき、すでに敵は最初の半数近くにまで数を減らしていた。策を持って(奇襲・挟撃)、練度を上げた兵およびPC・NPCによっての攻撃、また、スキル等を駆使しての防衛による。 攻城の中心兵力として前線にあたったならず者勢はほぼ壊滅(200→0(数人))、同じく積極的に攻めていた獣人兵も、三分の一程が戦死している(300→200)。 後方で陣形を固めている黒羊軍はまだ戦力を保持している(300→250)。(敵総数800→450) もちろん、味方勢も危うい状況ではあった。 (*味方:龍雷連隊 白兵戦80→40※判定上のことで、全てが戦死者ではなくひとまず戦闘不能者(戦闘後回復が可能)としておく。城の防衛20→10※同じく。MC・LCの安否・状態に関しては、次回に。)(味方総数100→50) (ゲームにおけるこういった判定は難しいところ。たとえば、50LvのPCやNPC(ドリヒとか)が一人いれば、1から2Lv程の敵一般兵をどれだけ殺せるか。まさに一騎当千のように、数十から、更にスキル等を使えば100単位で相手にできることが可能と言えることになるのでは。無論、レベルとスキルだけで強さが決まるのもまたゲームとして面白いとは言えない。そこに、策略も関わってくる。50Lvのキャラであっても、策に嵌れば、あっけなく討ち取られてしまうこともあるだろう。 今まで、敵兵が弱すぎる傾向にあったのだが、この回避のために南部戦記・序からやっているように兵にもレベルを設定することと数を明記することで、どうあたればいいかの指標とできると考えている。(ちなみにこれは、「黒羊郷探訪」二回目のバンダロハムの傭兵にレベルを設定することで試行的にやりたかったことなのだけど、そのときはなしになった。) とにかく、敵兵は減りやすく、味方は減りにくいの差が極端だと、戦いのバランスが悪く、面白みがない。必ず勝ってしまえるのは、ゲームとして面白くないのだ。 その上、PC(プレイヤーキャラ)には原則的に死亡がないことが、このバランスとりの難しさを助長しているのだが、たとえば「着ぐるみ戦争」にあった戦闘不能状態を設定することで、より戦闘における緊張感を高め、バランスをとっていくことを、「南部戦記」や今後のシナリオにおいて行おうと思う。今後、エリュシオンとの戦いになってくれば、そう簡単に勝利できる筈はないのだ。まだ、この戦いはその前哨戦に過ぎない。とも言える。) ともあれ、ここにようやく、最前線・龍雷と後方の本隊(本陣)との連携が成った。 反撃は開始された。 「ドストーワがどれだけの力量を持ってるかどうかはわからんのじゃが、嘗て我輩も一軍を率いていた将。おめおめと負けるわけにはいかんわい」 アドルフは獣人らに兵を繰り出す。 「ちゃんと一部隊ずつかかってきてくださいよ〜。でないと"どこが一番強いのかワカラナイ"じゃないですか〜?」 パティはでっかい拡声器を取り出すと、敵の各部隊にそう聞かせた。 フル武装した機晶姫レールガン&六連ミサイルポッドで向かってくる敵を更に分散させると、兵に指示を出して撃破させる。 「皆の帰る場所を、守るであります!」 最前列では、かけ声を上げ、一層奮迅する孔 牙澪(こう・やりん)。 「この戦いの鍵はボク達の士気を保ち、敵の士気をくじくことにあると思うのでありますっ!」 孔は、辺りを見回す。ほわん ぽわん(ほわん・ぽわん)の姿が見えない。 だが、孔は心配しない。姿が見えない。そう、それでいいのだ。今頃、ほわんぽわんがきっと…… 敵が襲い来る。形成は逆転している。だが、まだ、敵方も諦めてはいない。 孔は、あとは余計なことは考えず、兵士としての使命を全うするのでありますっ! と、敵を斬りつけていく。 程なく、後方で同士討ちが起こったらしい、という声が聞こえる。 黒羊軍の指揮官ラッテンハッハは、弓を射よ、と言い放ち、矢は教導団に追われてくる獣人兵に向けて放たれた。 撤退準備をし、殿軍にあたらせていた兵が、一部の獣人が裏切り、教導団に付いたようだと言ってきた。倒れされた黒羊兵らに獣人の槍が突き立っていたのである。その付近では、光学迷彩で姿を消したほわんぽわんが、その槍を集めていたのだが……勿論、彼らには見える由もなかった。 「獣人め。劣勢になった途端に寝返るとは。 殿軍は、ここで敵を食い止めよ! 私はグレタナシァに撤退し、援軍を呼んでくる!」 そして……戦場に、歌が流れ始めた。 シャンダリア・サイフィード(しゃんだりあ・さいふぃーど)は、強敵・獣人相手に、彼らの鋭い耳(超感覚)に効くだろう、恐れの歌を歌い、彼らを撤退に追い詰めるつもりだった。 だが、やがてそれはもう恐れの歌ではなく、戦いの終わりを告げる穏やかな調べに変わっている。 もう、向かってくる敵はいない。 岩城の周囲には、ならず者を中心に夥しい敵の遺骸が、グレタナシァに続くまでの荒地にも追撃に討たれた兵達が、倒れ伏していた。多くの者が死んだ。 投降する者もいた。教導団はそういった者達は殺めず、投降を受け入れ、捕虜とし丁重に扱った。 ゛シャンダリアの歌゛は、更に、三日月湖に生きる人達の希望と平和を想った歌として、歌われていくことになる。 |
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