リアクション
マオの歌が終わる頃、セルシウスはカウンターの上で突っ伏して眠っていた。
「……アスコルド様……」
幸せそうな寝顔を浮かべて寝言を呟くセルシウスに、マオが微笑み、
「君の功績は、きっと大帝を安心させる事ができるよ……お疲れ様」
と、その頬にキスをする。
「!?」
これまで無言でグラスを磨いていたブルーズが一瞬手の動きを止め、ピクリと眉を動かす。
「フフ……最初のお客様がセルシウスで良かったわ」
「(……天音も罪な男だな)」
やや呆れた顔を見せるブルーズが、厨房へグラスとスープの器を片づけに向かう。食器を洗おうとすると、付けっぱなしだった小さなアンティークラジオが何やらニュースを伝えている。
「たった今入ってきたニュースです。エリュシオン帝国のアスコルド大帝が亡くなられました。繰り返します……」
「……」
ブルーズが背後に気配を感じると、マオが驚いた表情のまま固まっている。
「天音……そなたがあの男に伝えてやるべきだと思うが?」
「……」
マオは首を二度三度横に振ると、カウンターで眠るセルシウスに、やるせない視線を送る。
「いいえ……よしましょう」
「天音……?」
「今だけは……今だけは良い夢を見せてたいの……」
そう言って店内へ戻ったマオは、カウンターで眠るセルシウスの背にそっとショールを掛けてやる。
「アスコルド様……私は……未来を……」
寝言を呟くセルシウスの頬を一筋の涙が伝っていく。
「……」
一体誰が、目覚めたセルシウスが知るだろう絶望を止めてやることができるだろうか?
幾度か己に問いかけたマオだったが、今はただ黙って彼の涙を拭いてやる事しか出来ないのであった。
(終わり)
はじめましての方もお久しぶりの方もこんにちは、深池豪(みいけ ごう)です。
またしても遅れてしまい本当に申し訳ありません!
頂いた時間で精一杯書こうとしましたら、ブランクゆえか随分長いお話となってしまいましたが、果たして皆様は楽しんで頂けたでしょうか?
さて、今回のお話は、アディティラーヤ宮殿の改装工事に携わる匠達とセルシウス。一方、新しい街で家やお店を作る人々、さらには、アディティラーヤの遺跡探索に関わる人々等、とにかく描いている私も戸惑うほど盛り沢山な内容でした。
また、家や店舗を発注して頂いた方々、本当に有難うございました!
一部の方は、宮殿と家造り或いは遺跡探索と家造りをダブルで書かれていましたので、その辺は一部省略させて頂きました。ごめんなさい。
ここで、今回、アクションを拝見させて頂いた中で幾つか気になった事を少し書かせて頂きます。(尚、これらは全て私の判定作業での事に限ります)
私のリアクション内で失敗するアクションとしては、1『具体的手段が描かれていない』2『絶対成功を元に描かれてある』3『スキルの羅列』が大半です。
まず、1ですが、これはほぼ絶対成功しません。何故なら「どうやったか?」が無いため、その手段をマスターサイドで全て考えてしまうと他のPL様と不平等になってしまうからです。
2は、判断の難しいところですがかなりをボツにしてます。成功を元に描かれたアクションには、良く言えば隙がありません。しかし、その分、誰かの介入等でほころびが生じれば、後との繋がりが難しくなってしまうためです(例外もありますが)。
尚、『根回し』は、「交渉が成功しやすくなる」スキルに過ぎず、『絶対成功』させるためには、キャラクターが更なるアプローチをかける必要があると判断しています。(『トラッパー』等も同じです)
最後に3ですが、これはかなり多くの方が該当される気がします。前記した1や2と内容が重複しますが、「どうやったか?」という過程の部分をスキルで飛ばしてしまうのは中々描写や判定が難しいです。「コレを描いておけば万事OK」というスキルはありませんし、不安だからと羅列するのも使用方法と状況により効果が異なります(私的には、羅列されたスキルがあると「使わないスキル」も混ざっていると判断しています)。上手にスキルを使われてるPL様は大抵1つか2つに絞って、最大限にその効果を発揮されていますし、何よりスキルを使う目的が明確で、私も納得した上で成功判定を与えられます。
と、色々書いて来ましたが、アクションはそもそもキャラクターの行動ですので、GMよりも皆様の方がずっとお詳しいのです。だからこそ、そのキャラクターが一番取りそうな行動は、PL様に書いて頂かないといけないのだと考えています。上手にアクションをかけているPL様は、大体1つのシーンの主役を持っていっちゃう様な、キャラクター性を全面に押し出した個性的なアクションをかけておられる方が多いですね。
……話がすっかり長くなってしまいました。
今回も、私信で多くのお言葉を頂き、本当に有難うございます!
個別コメントは提出が遅いのでまたも省略させて頂きますが、その分、称号を増やしていますので、付いていた方には気に入って頂けると幸いです。
それでは、今回は限定的復活な深池でしたが、またいつの日にか皆様とお会いできる時を楽しみにしております。