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リアクション
第11章
「……ならば語ろう、儂の目的と……儂の正義を」
フューチャーXはフレデリカ・ベレッタと正面から向き合い、言葉を紡いだ。
「……ええ」
フレデリカは頷き、フューチャーXを見つめた。
ふざけた格好をしているが、この老人の話す内容にも興味があるし、信頼に耐うる人物かどうか判断する必要があるのだ。
「信じるかどうかは別にして……儂は未来から来た。方法は……まぁ儂にはよく分からん。なんか科学の力だ」
フレデリカのパートナー、ルイーザ・レイシュタインは拍子抜けしたように聞き返した。
「なんかって……そんないい加減な」
だが、フューチャーXは苦笑いを浮かべて話し続ける。
「まぁそう言うな……儂も未来のことには詳しくない。
ま、今回のことには関係ない。とにかく儂は未来から来た、それでよかろう。
目的は『アニーを救う』こと。つまり、儂の知っている未来では、アニーはいなかった……救われていないのさ」
「……アニーが……いない?」
フレデリカの疑問に、フューチャーXは答えた。
「ああ、死んだそうだ。……殺された、と聞いている」
そこに、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が現れた。
「……殺された?」
最初はフューチャーXと敵対したローザマリアだったが、彼の話を聞くうち、必ずしも敵ではないと判断したのだ。
「ある意味では事故死、と言えるかも知れん。ハッピークローバー社の本社ビル落成パーティ。
その日、四葉 恋歌は地下に幽閉されたアニーを救出すべく多くのコントラクターに助けを求めた。
結果として、アニーは救出された。アニーはカプセルから出され……そして、殺された。
殺したのは、救出したコントラクター達だったそうだ」
「……え? どういうこと?」
フレデリカは息を呑んだ。
「アニーは強化人間としても不安定だったのだろうな。力が暴走した――まぁ、こう言っちゃなんだが、よくある話さ。
その結果としてビルは崩落し、アニーの暴走を止めるためにコントラクターの一人が誤って殺してしまった……ということだ」
「それで……どうなったの? パートナーを失った恋歌は? 四葉 幸輝は?」
ローザマリアの問いに、フューチャーXは首を振って答えた。
「さあな、儂が知っているのもそこまでだ。儂の依頼人自身、ここまでしか知らないのではないかな」
「つまり……」
そこに、また一人の人物が現れた。
月摘 怜奈だ。魔鎧として躑躅森 那言を装着した姿で、フューチャーXへと問いかける。
「そこまでの事情を知っていながら、アニーの死以降の未来を知りえない人物……。
フューチャーX、あなたの依頼人とは……未来の『四葉 恋歌』本人……ですよね。
そして、あなたが本当に助けたいのは『アニー』と今の『四葉 恋歌』の両方なのでは……?」
その問いかけに、フューチャーXは肩をすくめる。
「まぁ、そういうことだな。アニーの死によるパートナーロストの影響で未来の恋歌自身も意識を失い……気付いたときにははるか未来だったそうだ」
「では、未来においても事件の詳細は分からない、ということ?」
ローザマリアが疑問を補足する。
「本当のところはな。その後、恋歌や幸輝がどうなったのか。恋歌は何故長い時間を越えて未来で目が覚めたのか。
まぁ、予想はついているそうだが……だが、儂はそれとは別件で未来において恋歌に助けられた。その恩義もあって過去に飛んで――過去のアニーを助けてほしいという恋歌の依頼を受けた。
儂もまたその時代の人間ではなかったから、二度と戻れないとしてもあの時代に未練はなかったし、な」
フューチャーXの言葉を聞いた怜奈は、軽くため息をついた。
「それならば私達の目的は、アニーさんを救うという点で一致しています。
私達がお互いに争う必要はありません。あなたの知っている情報を話して、もっと協力し合うべきです」
だが、フューチャーXはニヤリと笑った。長い犬歯が、凶暴な印象を与える。
「ふん、儂はいつも一人さ。誰かと協力なんてぇのは大の苦手でね」
と、そこに。
「よーし、くっだらねぇお喋りはそこまでだ、クッソ爺ぃ」
一人の男が割って入った。白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)である。
「!!」
他のコントラクターと違って、竜造は明らかにフューチャーXとの敵対姿勢を見せていた。ブールダルギルを構え、隠そうともしない殺気は真っ直ぐにフューチャーXに向けられている。
「まぁ、そこの未来人さんとやらがお仕事で来ているのは承知したよ。
けど、こっちもプロとしてお仕事受けた以上、何があっても完遂しないとねぇ」
そのパートナー、松岡 徹雄(まつおか・てつお)もその横にいる。もとより幸輝に雇われている彼らは、幸輝の次なる命令である『フューチャーXの始末』を断る理由はない。
「ひひひぃ〜!! そのむぅすめが研究に必要不可欠といいながらぁ〜、最悪殺しても構わないとは、どういうことでしょうか。興味深いですねぇ〜!!」
ゼブル・ナウレィージ(ぜぶる・なうれぃーじ)も控えている。手術着姿の老いた赤子の上半身という不気味なフラワシ『ラブ・デス・ドクトル』を呼び出した。
「しかぁし、殺してしまっては資源の無駄と言うものでぇす。ならば廃品回収と行きましょうかねぇ〜!!!」
そして、竜造に純白の外套として纏われている魔鎧、アユナ・レッケス(あゆな・れっけす)は呟く。
「でも、あの人おかしいですよね。アニーさんを救うといいながら、パートナーである恋歌さんは救おうとしないなんて。
恋歌さんが死んじゃったら、アニーさんにも影響あるんじゃないですか」
そして、ふと。
「ああ……とはいえ、恋歌さんは死にたがっているんだから、死なせてあげればいいじゃないですか……。
それで少なくとも恋歌さんの望みがかなうなら……」
突如として現れた一行に、臨戦態勢を取るフューチャーX。その横で怜奈とフレデリカもまた構えを取った。
「幸輝さんの依頼を受けた人たちですね……邪魔しないで下さい。私たちはアニーさんを救い出し、恋歌さんを守る」
怜奈は竜造に言い放った。
「そういうこと。四葉 幸輝の非道な研究はなんとしても止めるわ。その為には恋歌とアニーは絶対に守り通さないと」
フレデリカもまた魔法の腕に覚えはある、鋭い眼差しで竜造を睨みつけた。
そんな中、ローザマリアはその一行から少し離れた。
「すまないけど、ここは任せるわ。
……どうも、下の方に行かなければいけないみたい。
こちらも、パートナーの因縁ってヤツがありそうで」
見ると、パートナーであるグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が一人パーティ会場に向かっている。どうやら、会場の何らかの騒ぎを察知したのだろう。
だが、こちらの事情などに構う竜造ではない。
「ああ、どうでもいいんだよ、んなこた。誰の依頼だとか、事情がどうとか。
――俺はな、気に喰わねぇんだよ。とにかく気に喰わねぇ」
ゆらりと、両手剣を構えた竜造はフューチャーXを更に睨みつけた。
「……ほう」
対峙するフューチャーX。ただならぬ殺気に身構える。
「未来からそのカプセルの小娘を救いに来ただと……ふざけてるんじゃねぇぞフューチャー野郎!!!」
竜造の咆哮が、戦いの合図だった。
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