空京

校長室

ニルヴァーナの夏休み

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ニルヴァーナの夏休み
ニルヴァーナの夏休み ニルヴァーナの夏休み

リアクション


●時限爆弾バレー

『皆さん大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。ただいまより時限爆弾バレーを開始したいと思います。関係者の皆さんはご準備をよろしくお願いいたします。
 なお、キロス・コンモドゥスさんのご容態に関してご報告させていただきます。彼はまだ目を覚ましていませんが、医師によりますと少なくとも命に別状はないそうです。ご心配されていた皆さん、どうかご安心ください』
 プールから場を移した人工の砂場に設置されたモニターに、実況席についた橘 美咲(たちばな・みさき)の姿が映し出され、流暢な声が流れ出す。
 用意していた紙を読み終わると、美咲は少し前のめり気味に設置マイクへと近付いた。
『それでは準備が整うまでの間に、私、実況担当の橘 美咲より簡単なルール説明と対戦カードをご案内させていただきます。
 ペアになった選手は対戦ビーチバレーをします。ボールが砂の上に落ちたらアウトです。ですが落ちなくても、制限時間がきたら爆発するようになっています。爆発しても選手が大けがをすることはありませんのでご安心ください。せいぜいがこのような髪型になるだけです』
『……お嬢。笑いながら俺の頭指差しするのはよしてもらえないですかね?』
 移動用の無線マイクを持って背後に立っていた工藤 源三郎(くどう・げんざぶろう)が、ぼそっとツッコミを入れる。本人は小さな声で美咲にだけ聞こえるつもりで言ったかもしれないが、しっかりマイクのスイッチはオンになっていて、声を拾われていた。
『だって、あんた爆発頭じゃない』
 ぷくく、と美咲がふくみ笑う。
『爆発頭ではございせん。これはアフロヘアーという由緒正しき髪型です』
『はいはいアフロね、アフロ。
 というわけで、敗北すれば皆さん由緒正しいアフロヘアーになるだけですから、爆発しても気にせずお楽しみください。制限時間は3分です。
 そして対戦カードですが、第1試合は茅野 菫&パビェーダ・フィヴラーリペア対遠藤 寿子&アイリ・ファンブロウペアになります。第2試合は――』


 全体放送で名前を呼ばれて、遠藤 寿子(えんどう・ひさこ)は身をびくっとさせた。
「どうしたんです? 寿子」
「は、はう〜。緊張してきた〜」
 え? またですか? という顔でアイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう)は腰に手をあてる。
 苦悩する寿子の視界に、砂を踏みしめながらこちらへやってくる源三郎とカメラマンの姿が見えた。
『お嬢さん方、試合前のインタビュー収録にまいりやしたぜ。この夏の創世祭はパラミタにも中継放送されておりやす。ぜひ彼らに向けて、試合への意気込みをひと言』
『はう〜……が、頑張ります…』
 つばを飲み込み飲み込み、緊張しきった顔で寿子は答える。
『勝利には運が強く作用すると思います。ですが、その運を自分の側に向けられるよう、精一杯努力したいと思います』
 次にアイリが淡々と、優等生の落ち着きで発言していると、そこに茅野 菫(ちの・すみれ)パビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)がやってきた。
「遅れちゃった?」
 インタビューを受けている2人を見て菫が言う。
『時間どおりですぜ』
「そう。良かった。2人とも、今日はよろしくね!」
「よろしくです」
 ぺこっとパビェーダも頭を下げる。2人に源三郎が近付いてマイクを向けた。
『お二方、試合に対する意気込みをひと言お願いしやす』
『んーと……優勝すればジェイダ須クリニックの出張エステが受けられるんでしょ? 絶対優勝して、エステを堪能します!』
『菫がエステを受けられるように頑張ります』
 2人へのインタビューが済むと、源三郎は軽く頭を下げて次の対戦ペアの元へ向かった。
 アイリと菫がじゃんけんでコート分けをして、定位置についたところで美咲の実況が入る。

『さあ、いよいよ試合開始です。波乱含みでした水上騎馬戦、水上チャンバラのように、この時限爆弾バレーでも何か起きるのでしょうか? そう考えると皆さん、わくわくしてきませんか?』
 ボールが爆発するとアフロになるというだけで、もう十分波乱万丈だと思うのだが。
『それでは、始めてください』
 ピーーーーーッ。

「パビェーダ、絶対勝つわよ!」
「え、ええ…」
「必殺技も積極的に使っていくから。チャンスがきたら、即たたき込む!」
 目指せ高級エステ! 菫はやる気に満ちているが、パビェーダはちょっと違う。あのおそろしい技を使うのは、良心的にちょっとかなり気が退ける。
(でも、菫のためだし…)
 パビェーダは頭を振って、ためらいを払しょくした。そして
「はい!」
 と、自分に言い聞かせるように元気よく菫に答える。
 それは、寿子とアイリも同じだった。
「勝てば次が控えています。早期決着。この手でいきましょう」
「うん」
 互いにチャンスボールを求めてボールを打ち合う。
 何度かコートを往復させたのち、先にチャンスがきたのは寿子・アイリペアの方だった。
「行きます! 準備はいいですね? 寿子」
「ま、待って待って……はう〜」
 もたもたする寿子のため、アイリはボールを高く打ち上げる。その隙に、寿子は同人誌を高く高く山と積み上げ、よいしょっとその上に立った。
「と、寿子の赤裸々イコン日記〜!」
 寝ないで一生懸命考えた必殺技名を叫びつつ、寿子はシューティングスター☆彡を発動させ、アタックした。
 落ちてくる星とともに空中にばら巻かれる同人誌。それは今まで寿子が描きためたイコン擬人化同人誌である。
「こんなもの!」
 イコンに興味がある者なら垂涎のレアアイテムかもしれないが、そうでない者にはタダでもらってもどうかという、微妙な物だ。菫もパビェーダも惑わされない。視界をふさがれてボールの位置が分かりにくくなっているのが難点だが、パビェーダはなんとか受け止めた。
「よし! こっちもお返しよ! パビェーダ!」
 菫の合図でパビェーダは菫がアタックした直後に恐れの歌を歌い始めた。
「何ですか? 普通のアタックのようですが…」
 いぶかしみつつもボールを取ろうとするアイリの足に、ちくりと痛みが……。
「って、きゃああっ!!」
 下を見て、アイリは絶叫した。
 菫が毒虫の群れで呼び寄せたフナムシやGに似た虫たちがワサワサと周囲に集まり始めている。というか、もうかなり集まっている。しかもバビェーダの恐れの歌が嫌悪感をさらに増加させて、一瞬でザワッと鳥肌が立った。
「いやーーーんっ! 虫〜〜」
 すぐ近くまで飛んできたGにクリソツの虫に、思わず飛び退いた寿子の顔からメガネがずり落ちた。
「やっ……メガネ……メガネ…」
「寿子! ボールです!」
「えっ?」
 ずり落ちたメガネを元の位置に正して顔を上げると、アイリが打ち上げたボールがもうすぐそこまで迫っていた。
 寿子にはトスを上げるひまもない。硬直し、そのままの体勢でボールを顔面に受けてしまう。
「寿子!」
 ぼふんっ、という音とともに寿子が黒煙に包まれる。煙が晴れたとき、そこにはアフロになった寿子の姿があった。
「どう? あたしたちの必殺技魔女的CQCその21 生理的嫌悪感から相手の動きを封じる精神的拷問による方法は!」
 菫は勝ち誇った。

『コントラクターの戦いにふさわしい幕開けでした! 第1試合は菫・バヒェーダペアの勝利が確定しました!』



「おそろしい……なんておそろしいことに…」
 アイリになぐさめられながらコートをあとにするアフロヘアーの寿子に、月詠 司(つくよみ・つかさ)はごくりと唾を飲む。
 あれを受けなくてはならないのだろうか……いやもちろん負けた場合だが。
 今から負けたときのことを考えるなどどうかしていると思うが、それでも気になって仕方がない。
「ツカサ〜何悩んでるわけー?」
 インタビューを終えたシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が司の様子に気付いて声をかける。
「……いや、何でも…」
 ごまかそうとしたが、視線を追えば丸分かりだ。
「ああ、あれ? 気にしない気にしない」
「シオンくんは気にならないんですか?」
「ならないわよ〜。だって、ああなるとしたらツカサに決まってるじゃない ♪ 」
「ええっ?」
 そこで「可能性は2人ともにあるでしょう」と言えないのが司とシオンのヒエラルキーだ。『シオン>越えられない壁>司』これが全てを物語っている。
「さあさあ。早くコートへ入らないと、不戦敗になっちゃうわよ〜 ♪ 」
「シオンくん、ち、ちょっと待ってください」
 司はもつれる足でシオンのあとを追いかけた。

『お待たせしました、ただいまコートの消毒が終わりました!
 早くも盛り上がってきました時限爆弾バレー、第2回試合は月詠 司&シオン・エヴァンジェリウスペア対ルシア・ミュー・アルテミス&夏來 香菜ペアになります。こちらはどんなハプニングを見せてくれるでしょうか!?』

「……解せないわ」
 夏來 香菜(なつき・かな)は頭上を流れる実況の声に眉をしかめる。
「バレーの試合なのに、なぜ突発事故を期待する音声が流れるの?」
「だって、これパラミタにも流れてるっていうし。テレビってそういうのがうけるんでしょ? この前も夜中の再放送でやってたよ?『ろくりんピック衝撃のおもしろ映像ハプニング集』って」
 ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)の屈託ない答えに
「うけたくてバレーやるんじゃないわよ! 勝つためでしょう!? あなた、まさかそんな不純な動機で申し込んだんじゃないでしょうね!?」
 香菜の雷が落ちた。しかしルシアも慣れたもので、
「そんなことないよ。香菜ちゃんやみんなと一緒に楽しく遊べたらいいなと思っただけ。
 楽しもうね! 香菜ちゃん」
 とにこにこ笑顔を崩さない。いつもながらその無邪気さには、香菜も怒りを保てなかった。
「まったく……気張りなさいよ」
「うん」
「……あの2人に、あの技をかけるんですか…?」
 向かいのコートでのやりとりを見て、司がシオンを振り返った。いかにも気がすすまないといった顔だ。
「考えない考えない。香菜も言ったけど、これは勝つためにやるんだから ♪
 ツカサ、かまえて。いくわよ〜」
 シオンがサーブを打つ。試合開始だ。
「きた!」
「うん。えいっ!」
 ルシアがレシーブし、香菜がトスを上げ、それをルシアがアタック。2人とも背が高い方でなく、ブロックする司の方が20センチ近く上背があってかなり不利な戦いだったが、2人はツーアタックやフェイントもまじえて攻撃に変化をつけ、敵コートへボールをたたき込んでいく。対するシオンもディテクトエビルを用いて司をすり抜けてくるボールを拾い、レシーブしていった。
 やがて、ころあいを見計らったシオンが必殺技の合図を出す。

「ぁ、今UFOが横切ったっ!!」

「……なに、その幼稚な手。今どき小学生でも――」
「えっ!? どこどこ? 香菜ちゃん見えた?」
「って、あなたの方こそ宇宙人のようなものでしょうが!」
 シオンの指差した方角をきょろきょろ見渡しているルシアに香菜がツッコむ。
「……うう…。香菜さん、ルシアさん、すみません!」
「必殺! 胸囲的格差社会!!
 喜々としてシオンはボールをサイコキネシスで打った。
 一見普通のボールがまっすぐ飛んでいるようにしか見えないそれは、よくよく見れば光のプリズムが周囲ではじけている。
 UFO探しをしていたルシアの胸にボールが触れた瞬間、ルシアの水着がビリビリに破けた。
「はにゃ?」
 ボールはルシアの胸ではずんで、あり得ない軌道を描きつつ次に香菜へと向かう。(シオンのサイコキネシスで)
「ルシア!? ――きゃあっ!」
 ボールは残念な香菜の胸をかすめただけに終わったが、それでもまとった真空波は周囲の布――香菜の水着を引き千切る。
 面白いのは、ルシアが破けているのは胸元だけだが、香菜の方はおなかのあたりまで破けてしまっているところだろうか。
「香菜ちゃん、大丈夫?」
 思わずしゃがみ込んで胸を隠した香菜にルシアが訊く。
「大丈夫なわけ――って、なんであなたそんなの着てるのよ!」
 香菜は真っ赤になった顔でルシアの胸元を指差す。ルシアの破けたワンピース水着の下からは、下着が現れていた。
「え? だって下着はお洋服の下に着るものでしょう?」
「水着は服じゃなーい!」
 司の真空波は水着だけを切る設定になっていた。その下の肌を傷つけないようにという思いやりからだったのだろうが――惜しい! 惜しいぞ、司!!
 まあ、水着の下に何か着込む者がいるとは思わないのが普通だが。
「それより香菜ちゃん、ボールボール」
「あなたの番よ!」
「あ、そーか」
 香菜は水着を裂かれながらもしっかりボールを上げていた。
「えーい」
 ルシアのアタックを司がブロックする。
 跳ね返ってきたボールを見て、香菜の目がきらりと光った。
「成敗ッ!!」
「ぶっ…!」
 片手で胸を隠しながらボールを司の顔面へたたきつけるようにアタック。
「あらあ。胸が小さいって便利ね〜、片手で隠せちゃうんだから」
「なんですってー!!」
 ほほほほっ ♪
 笑うシオンの足元近くで仰向けになった司は気絶してしまっていた。

『ボールは爆発しませんでしたが、司選手失神で試合続行不可能となりました。この試合、ルシア・香菜ペアの勝利です』

「負けちゃったけど、まあいいわ。すっごく楽しかったから ♪」
 いいもの見させてもらったし。
「香菜ちゃん、今のアレでしょ! 必殺技! ねっ!?」
「そんなわけないでしょ! ただのアタックよ!」
 興奮したルシアと会話しつつも彼女の肩越しにシオンをにらみ続ける香菜。しかし当のシオンはカエルの面に何とやらで、高笑いしながら観客席の方へ去って行ったのだった。――司は放置で。



『第3試合は風森 巽&・ティア・ユースティペア対六本木 優希&アレクセイ・ヴァングライドペアになります。両ペアはコートに入ってください』

 第3試合は当初から波乱の幕開けだった。
 六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)が打ち込んできたサーブを、風森 巽(かぜもり・たつみ)がいきなり足を使ってレシーブしたのだ。
 ボールはサッカーでのゴールのように、中央の網に突き刺さった。
「なんだよ! ルール改正で身体中のどこで触ってもOKになった(はず)だろ!?」
 ピーーーーッと鳴った笛に、巽はあせって弁解する。
 実況席の近くに集まった5人の鳥人審判が、ポッポーポッポーと話し合っていた。
「……そんなルールありましたっけ?」
 ネットの向こう側でアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)がそしらぬ顔して言う。
 手で打ったボールと足で蹴ったボールでは速度が断然違う。ネットに突き刺さった威力を見れば一目瞭然だ。あんな球を優希に向けられてはたまらない。
「あるよ! これ、バレーだろ!?」
 そのとき、またもピーッと笛が鳴った。
『鳥人審判の協議の結果、足の使用は認められることになりました。理由は「さっきの面白かったから」だそうです』
 その決定に、巽はホッと胸をなでおろす。
「今ので何分ぐらい消費しちゃったかな?」
 ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)がそわついた。
「まだ1分も経ってない、と思う。多分」
「そっか」
 笛が鳴って、打ち込まれたボールを、今度はティアがレシーブした。ティアは手を使ってボールを打っている。
 巽は足のみを使ってレシーブもトスもしていた。アタックのみ、角度の問題からオーバーヘッドキックを用いている。ネットにかかる可能性があったが、そうなればティアがすぐさまフォローに入ったし、決まれば派手な技だった。
「たあーーーーっ!!」
「……くっ」
 巽のオーバヘッドキックを、あやういところでアレクセイがレシーブする。
 ボールは高く飛んで、そのまま相手コートへ戻っていった。
「ごめんなさい…」
「気にするな。あんなのユーリの細腕で受け止めようとしたら手の方を痛める」
 すぐそばにきたのに一歩も動けなかったことに気落ちする優希の肩をぽんと叩いて、アレクセイはなぐさめた。
「ここ最近あわただしいことが続いたから、今日は楽しむために来たんだろ? だったらそんな顔すんな。思いっきり楽しめ!」
「アレク…」
「おまえのフォローなんか、とっくに慣れてるからな。あいつのボールは俺が全部受け止めてやる。
 それより、準備をしていろ。もう残り1分を切った。次にチャンスがきたら仕掛けるぞ」
「分かりました!」
 ジェイダ須クリニックの出張エステを受けるために! と優希は奮起する。
「きたぞ!」
 チャンスボール――つまり、巽でなくティアが打ったボール――と見て、アレクセイは魔法力を結集、雷術を発動させた手でボールを高くトスする。その一瞬でボールは帯電した。
「行けっ! 優希!」
「はいっ!」
 答える優希の準備は万端だった。手には盾型をしたパイルバンカーの光条兵器深き森の杭が装着済みで――

「って、ちょっと審判!! あれ思いっきり武器じゃないか!!」

 バレーに武器使用なんてアリ!?
 巽の抗議に、またも鳥人審判はごにょごにょと会議った。
『OKだそうです。理由は「水着に似合っててカワイイから」』
「バレー関係ないいいいいいっ!!」
「巽、来るよっ」
 ティアの喚起にはっとなって、巽は向き直った。
「はあっ!」
 楕円を描き、自由落下を始めたボールの下に走り込んだ優希がジャンプする。
「ライジングバンカースパイクッ!!」
 全身をバネのようにした、その力も乗せて、渾身の一撃を深き森の杭で叩き込む。パチパチと白く放電しながらボールは急角度で敵陣営に突っ込んだ。
 それを腰を低く落としたティアが慎重にレシーブする。直後、ティアは雷撃にしびれながら後方へはじけ飛んだが、ボールは高く真上に上がった。
「ティア!
 ――くっ! そっちが雷術でくるなら、こっちはこうだ!」
 巽は龍飛翔突を発動させ、龍のごとく高く飛翔する。そして頂点の高さでくるっと身をねじって上下を回転させた。
「くらえ! 必殺! カウンター雷神キーーーック!!」
 やはり手は使わずオーバーヘッドキックだ。
 ボールは先よりもさらに激しく火花を散らして優希たちの元へ返ってくる。
 アレクセイは受け止めようとしたが、受け止めきれなかった。
「うわあああっ」
 カッと白く炸裂する光が走る。それと同時に巽は地に下り立ち、爆発の黒煙をバックに特撮ヒーローばりのポーズを決めた。

『ボールは優希・アレクセイペア陣営で爆発! 第3試合は巽・ティアペアの勝利となりました!』