校長室
ニルヴァーナの夏休み
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プール・リゾート 1章ワイル・アウェイ・ザ・タイム 新設されたばかりの広いプールは強い日差しを受け、空の輝きを映して煌いていた。その日の暑さはプールで遊ぶのにぴったりだった。軽食や各種ドリンクを売る屋台や、ビーチサイドには日光を避けプールを眺めつつのんびり出来る、人間工学に基づきつつもデザイン性も重視した優雅なデッキチェアなども多数設置されている。 「うーん、青い空、広大なプール、オシャレなデッキチェア。これぞバカンス! っていう感じよね」 ターラ・ラプティス(たーら・らぷてぃす)がゆったりとデッキチェアにもたれ、トロピカルフルーツをたっぷり使ったエキゾチックな香りのドリンクを啜りながら言う。グラスの縁には、愛らしい紅色の花が添えられ、そよ風に花びらを震わせている。リィナ・ヴァレン(りぃな・う゛ぁれん)はターラが落ち着く前にプールに飛び込み、ひと泳ぎしてきたようだ。ツインテールから水を滴らせながら、ターラのそばにやってくる。 「ねーねー、ターラおねえちゃん、バレーとか騎馬戦とか参加しないのー?」 ターラはふっとため息をつく。 「……あのメンバー相手にして私に勝ち目がある訳ないでしょ?」 「え、あー……確かにそう言われるとリィナも勝てる気がしない……」 「でしょ? 躍起になるだけ無駄よ無駄。だったら優雅に楽しんだほうがずっと良いわ」 先ほどまでゆったりと泳いでいた白雪 魔姫(しらゆき・まき)が、優雅に歩いてきた。受け取ってきたドリンクのグラスをサイドテーブルに置く。元気良く急ぎ足でやってきた白雪 妃華琉(しらゆき・ひかる)が、そわそわと競技が行われるプールの方を見ている。 「いつ始まるんだろ? せっかくだから出たかったんだけど……今回は応援をがんばるよっ!」 「種目に出るつもりはないわ。だって疲れるし。 結構参加者も居るし、こうやって見てる人も居なくちゃ参加者だってやる気がでないでしょ?」」 けだるげに魔姫が言う。元気をもてあましている妃華琉の方は、本当は競技に参加したかったのだが、肝心の姉に全くやる気が無いので、目いっぱい応援を楽しむ気でいた。競技が行われるほうのプールをそわそわと見ながら、浮き足立っている、魔姫はそんな妹の様子を見て言った。 「ワタシは暑苦しいところへいく気はないわ。ここから見える範囲で十分。妃華琉は行って来たらいいわ」 「そう? じゃ、行ってくるねっ!」 妃華琉は元気良く応えると、屋台で買ってきた軽食と飲み物を手に、跳ねるような足取りで競技用プールのほうへ向かって行った。 ピンクのボーダーフリル・ビキニにかわいらしいオーバースカート姿のエンデ・マノリア(えんで・まのりあ)はカラフルなビタミンカラーのビーチボールを高く跳ね上げた。長い髪は水中で絡まったりジャマにならないように頭のてっぺんにお団子にまとめている。 「うなれっ、僕の魔球ー!」 エンデが叫んで叩いたビーチボールが水色のチェック柄、フリルいっぱいのワンピース水着のオーフェ・マノリア(おーふぇ・まのりあ)のアタマにポコンとボールが命中する。 「やったわねー! これでもくらえー」 オーフェが盛大な水しぶきを目くらましにして、ボールをはたき返す。 「きゃあ〜〜! もー、水と一緒とは卑怯だぞ!」 エンデが髪にきらめく水滴をいっぱいにかぶって、オデコに当たったボールをキャッチ。叫び返すとボールを放り出し、両手にいっぱいの水をすくってエンデに連続してばしゃばしゃとやり返す。 「きゃー! 目にお水が入った〜〜」 楽しげな2人を見て、ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)とともにやってきていた広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は立ち止まった。 「ビーチボール遊びも楽しそうですが……せっかくなので、ウィルちゃん! 1往復の泳ぎ勝負しましょうです〜」 「いいですよ〜。じゃこっち側から行きましょうか?」 エンデらと一緒にビーチボールで遊んでいた紺地に白い水玉模様のビキニを着た三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)が、競争と聞いて目を輝かせた。胸元の大きなリボンがかわいらしい。 「なになに、競争? 混ぜて混ぜてー」 「いいですよ〜〜」 ファイリアがのんびりと笑顔で応える。 「やったー、ありがとー! 最近ちょっと運動不足だったからちょうどいい! 今日は泳ぐよー!」 「お、なんか楽しそうじゃないか、その勝負、乗った!!」 セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)が元気良く声をかけてきた。 「負けないですよ〜」 ファイリアが言った。 「よーし、本気出すー!」 のぞみが笑顔でセシルに応じる。 「あ、ちょっと待ってね」 セシルはすぐに取って返すと、やや人見知りのきらいがあり、楽しげに遊ぶほかの女の子たちを遠巻きに眺めていた幸田 恋(こうだ・れん)も、引っ張ってくる。 「一緒に入れてやってくれな」 「もちろんですとも」 ウィルヘルミナが花のような笑顔を向けた。もじもじと立っていた恋は、顔を赤らめてペコンと頭を下げる。 (とはいえ……せっかく勝負するのだから負けたくはないですね。全力で挑みます!) 内心で呟く。 「海賊として、泳ぎで負ける訳にはいかないからねっ!」 セシルが息巻いた。ビーチサイドでドリンクを飲んでいたのぞみのパートナー、エイディエール・イルナン(えいでぃえーる・いるなん)はポニーテールをぎゅっと引き締め、ゆったりとしたデッキチェアに座りなおした。紅い花柄のホルターネックがちょっと大人の雰囲気だ。 「では行きますよー。1往復ねー。それじゃあ、準備してー! ……よーい、ドンッ!」 のぞみの号令とともに、5人は一斉に飛び込んだ。群を抜いてセシルが早い。なんと言っても特技は水泳。「鮫肌の服」の効果と、「不死者の呪印」の効果による1時間呼吸を必要としない技を使い、息継ぎ無しの潜水状態で一気に距離を引き離した。同じく水泳を得意とする恋は、「鮫肌の服」に加えてオーダリーアウェイク」を使って鬼人化し、総合身体能力を底上げしてあっという間にセシルに迫る。水の抵抗が一切ないかのようだ。あっという間に2人は一往復してプールサイドに上がった。 「ま、負けなかったぜ」 セシルが息を切らしながら恋に言う。 「……次回こそは……っ」 恋が切り返す。 バタフライで泳いでいたウィルヘルミーナがプールサイドにたどり着き、水に浸かったまま息を整えている。 「はわわ〜、やっぱりウィルちゃんは早かったのです〜。ファイも運動は自信あるのですけど、勝てませんでした〜」 クロールで泳いでいたファイリアが息を切らしながら上がってきた。 「はぁ、はぁ、はぁ……ファ、ファイリアさん、あの胸の大きさでこれだけ早く泳ぐなんて……。 凄すぎます……危うく負けそうになりましたよ」 ファイリアと同着ののぞみが、セシルらを見て目を丸くする。 「セシルさんと恋さん、すごーい……」 「ま、海賊としてはこんなものよ。ジュース奢るよ、何でも好きなのを選んでー」 セシルが気前良く声をかけ、皆はニコニコと売店へ向かった。 「いろんな水着がたくさんあって、地球のファッションはやっぱり勉強になるなー のぞみの水着もバッチリにあってるね。さすが僕が選んだデザインだ!」 さざめく皆を見てエイディエールが呟く。競争がひと段落し、笑いさざめきながら大輪の花の群れのようにテーブルを囲む彼女たちを見て、フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)が呟いた。 「うーむ。競争とあらばポロリもあるかと期待してたのに……」 彼女は巨大な浮き輪に乗って、プールを漂いながら邪な目線で周囲で遊ぶ女性たちを眺めていたのだった。一方ひたすらフィーアのそばに控える隠岐次郎左衛門 広有(おきのじろうざえもん・ひろあり)は、さざめく娘たちも、水着も目に入っていないようだ。気配すら薄くなっている。 「もっとこう……決定的瞬間がないかねー。ポロリといえばやっぱりビキニが定番だな……。 やっぱこれはチャンバラか騎馬戦に期待か〜」 フィーアは新たなる獲物を求めて、忠実な広有を従え、だらだらと手で水をかいて浮き輪を移動させていった。