校長室
ニルヴァーナの夏休み
リアクション公開中!
プール・リゾート 3章スプリッシュ・スプラッシュ 武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)は一泳ぎした後、男性用の競泳黒ビキニに白のパーカーを引っ掛け、デッキチェアで寛いでいた。すっと近寄ってきた真紅のブラジリアンカットのセクシービキニ姿の蘇 妲己(そ・だっき)がすぐ脇に侍るように腰を下ろし、その腕に自分の腕を絡ませてくる。 「……なんだいきなり?」 「ウフフ。幸祐なら色を好んでも罰は当たらないわよ、でしょ!」 豊満な胸を幸祐の肩に押し当て、妲己はマニキュアをした細い指を幸祐の胸につと走らせた。 「よせ……」 「ウフフ。嘘、本当は嬉しい癖に……」 「よせって……」 無表情を装いつつも、幸祐は内心ひどく動揺していた。裸の肩に当たる妲己の胸の弾むような感触、婀娜っぽい眼差しが激しく心をかき乱す。彼女の瞳は、そんな幸祐の内心の動揺を見透かしているようで、目を合わせることが出来なかった。妲己の誘惑の結果は、すでに彼女のほうが知っているのかもしれない。 「ライトブリンガーからワルプルギスの夜に連携、さらに秘奥義『リア充ブラックホール』はどうかな?」 上條 優夏(かみじょう・ゆうか)はプールでビーチボールを使い、必殺技の開発に余念がなかった。このあと開催される時限爆弾バレーに出るつもりは毛頭なかったが、脳内で出場をイメージし、必殺技で敵(?)を沈めるイメージングで遊んでいるのである。 (あんなおっそろしい競技で痛い目に遭うのはイヤやしな……。何好き好んで痛そうな目に合いに行くんやろな。 ……黒歴史暴露されそーな予感もするからフィーと必殺技開発楽しむでー!) 「それ逆に放って『ワルプルギスの夜明け』にした方がいいって」 声をかけてフィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)はため息をついた。いかにもリゾート、夏の絵に描いたようなプールデートだというのに……。下ろしたてのキュートなピンクのビキニが寂しい。 (夏のステキなプールでデート……リア充だと思うんだけどなー……) 「なんか言ったか?」 「優夏って……言ってる事はカッコいいんだけどね、まぁ外で遊ぶようになっただけでも進歩かな……」 「厨二が怖くて必殺技の開発なんてできるかい!」 必殺技の命名と連携を考えるのに忙しい優夏にほど近いプールの片隅。牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)はあらかじめ邪魔されないように、自分の姿が周囲の人間の目に触れないようプールの底にインビジブルトラップを密集させ、ちぎのたくらみで5歳児の姿を保ちつつ、分身の術を使い、水死体のようにうつぶせに浮いて漂っていた。風術で風を操り、口元に空気を送り込む。酸素対策も万全である。超高度なスキルを無駄に使いつつ、集団で浮く水死体の群れを演出しているのだ。パートナーのラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)はつまらなそうに独り、プールサイドでビーチボールや浮き輪を膨らませ続けていた。彼女の横にはいくつもの浮き輪やビーチボールが積み上げられている。たまに声をかけてくれる人もいたが、ラズンはまったくの無反応で、ただひたすらアルコリアの死体ごっこをうつろな瞳で見据えたまま、無表情にひたすら浮き輪を膨らませている。 (……イルカ……ぷー……ぷーぷーー……) 今度のはなかなか膨らまない。横腹の少し伸びた位置に、地球語で書かれたタグがついていた。 『リトルホエール』 「くじら……?」 目の前に鮮やかな緑色の斑点がはじけ始め、ラズンはそのまま酸欠でばたりと倒れた。 「良い天気で、皆さん、楽しんでおられますが……忙しくなりましたねえ」 救護班としてやってきていた白のパーカーと黒のハーフパンツ姿の神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)が呟いた。プールサイドで転んですりむいた人の手当や、日光浴をしすぎて熱射病になったなど、場所も広大なだけに人の数も多く、ちょくちょく手当てを必要とする人が訪れてくる。一緒に手当てを担当している山南 桂(やまなみ・けい)が翡翠に声をかけた。こちらは紺色のハーフパンツに灰色のパーカー姿だ。 「日差しが強いですから、主殿は少し休んで下さい。元々無理しやすいんですから」 小休止してプールサイドに退いた翡翠。その視線が倒れたラズンに留まる。 「あ、大変、人が倒れていますね」 急いで駆け寄り、ラズンの様子を見る。 「……酸欠……ですかね?」 小型の酸素ボンベで吸入を行い、やれやれと立ち上がる。と、景色がぐらりと傾いだ。 「……あれ? 地震……ですか?」 桂が駆け寄って翡翠を受け止め、そばの陰になったサマーベッドに横にならせる。 「主殿! 熱射病になりかけていますよ。それに……赤くなっていますよ。日焼けですね。 これは、冷やさないと駄目でしょう。それに無理しないで休んで下さいと言ったはずですが?」 桂が手当てしながら説教を垂れる。 「赤いですか? あ〜忙し過ぎて、日焼け止め忘れてました……」 起き上がろうとする翡翠を押しとどめる桂。 「だめです。良いというまでそこで休んでいてください」 翡翠の隣のサマーベッドににラズンを横にならせると、桂は再び忙しく救護所に戻っていった。