校長室
ニルヴァーナの夏休み
リアクション公開中!
今日のこの日のために設置された野外ステージではアイドルたちが躍動していた。 『♪不確定要素を暴きたいけど暴けないよ』 歌い出しは 下川 忍(しもかわ・しのぶ)、これに赤坂 優衣(あかさか・ゆい)の不安定な声が続く。 『♪不確定要素を知りたくないけど知らないといけない』 曲名は「不確定要素のパラドックス」、二人のオリジナル曲だ。 『♪それを暴いても癒されないと思ったから それを確かめて知らせなきゃいけないから 不確定要素を暴いたらボク達は癒されるのかな 女の子としての矛盾を抱えながらボクは歌うよ 矛盾を穿つように私は歌うよ 未来に希望がとどくように』 二人で共に精一杯に、最後のユニゾンを歌いあげた。それに呼応して会場の熱気もまた更に激しさを増してゆく。そんな中、 「どうぞ。ありがとうございます。どうぞ」 会場の外で一人、ビラ配りをしているセラフィーナ・メルファ(せらふぃーな・めるふぁ)は、どうにも不安げな表情を隠し切れないでいた。理由は正に配っているビラの内容にある。 『サプライズ企画! 皆さんの声援で「4人の姫」をステージへ!!』 4人の姫、すなわち『プリンセスカルテットの4人』をコールや演出で煽り、ライブのステージにあげようというものだ。話題のプリンセスカルテットが見られるチャンスという事で、これまでにビラを受け取ってくれた客の反応は上々だ。 そのこと自体はセラフィーナにとっても喜ばしい事なのだが…… 「これ……4人が来てくれなかったら、ワタシ、大嘘つきです……」 残念ながらその通り。実はプリンセスカルテットへの打診は正に今、行われている最中……の予定なのだ。 「大丈夫、必ずその気にさせてみせるわ」 交渉に向かった響 未来(ひびき・みらい)の顔はとても頼もしかったが、プリンセスたちは水上騎馬戦に出場する予定だと聞いている。そもそもこの会場に来られるかどうかが不明なのだ。 「まぁ任せとき。なんなら校長も一緒に連れて来たるさかい」 846プロダクションの社長として日下部 社(くさかべ・やしろ)も交渉に同席するという。水上騎馬戦ではプリンセスカルテットは{SNL9998758#ラクシュミ}のチームに所属するらしいので、一緒にまとめて交渉するには条件は揃ってはいる……のだが、 「平気や。校長とは顔馴染みやからな、バッチリ話しつけてくるで」 なんて言ってはいたのだが……。 「くぅぅ……。頼みますよ、日下部さん」 チラシを配れば配るほど「大嘘つき」に近づいてゆく。二人の事を信じていないわけではない、そうではないのだが……。 「きゃっ!!」 突然背後から、いや、ライブ会場の方から一際大きな歓声が上がった。時計に目をやれば、ちょうどサプライズ演出が始まる頃合だった。 ステージ上には「人型のプリンとカルメ焼き」が歌い、踊り、会場の注目を集めていた。織部 イル(おりべ・いる)と霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)の二人で結成したユニット『プリ☆カル!』である。「プリンセスカルテットの略」ではなく「プリンとカルメ焼きの略」だという。名前の由来こそふざけてるが、フリフリの衣装とキレキレのパフォーマンスは会場を一気にヒートアップさせていた。 「ここでもう一組、紹介しよう!」 曲の終わり、小さく息を切らしたままにイルが言う。「ニルヴァーナの探索中に交流を深めた二人が、アイドルとしてコンビを結成! 鈴蘭(館下 鈴蘭(たてした・すずらん))と鈴鹿(度会 鈴鹿(わたらい・すずか))の『ダブル☆ベル』!」 「清楚で可憐な鈴鹿ちゃんと元気で快活な鈴蘭ちゃん。そんな二人が歌うのは……」 パートナーたちに繋ぐため。沙霧は恥ずかしい気持ちを懸命に抑えて紹介を続ける。 「曲は「START!」ダンスリミックスと、オリジナル曲の「落花流水」です、どうぞ楽しんで下さい……」 スモークが溢れ、その中から『ダブル☆ベル』の二人が飛び出した。 「さぁみんな、アゲアゲでいくわよ! 楽しみましょう♪」 鈴蘭に続いて鈴鹿もステージへ。曲の始まりと共に左右に駆け出したかと思ったら突然に二人同時にターンをして、そのままに曲が始まった。 色違いのヘソ出しトップスにミニスカート。和の雰囲気を取り入れた衣装を着た二人は所狭しとステージ上を駆け回り、そして息のあったダンスで観客を魅了してゆく。 最後は4人でダンスandセッション。最後まで笑顔で駆け抜けた。