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リアクション
第三章 ああ、勘違い、勘違い 1
<月への港・施設外部>
やや時間は遡って、港の外。
「あの奇怪な叫び、名前と言い容姿と言い、間違いなく変質者の類です……夜道で会ったら通報するレベルですね」
その巨大さや怪力などに対する恐怖ではなく、生理的な嫌悪感から顔をしかめているのはシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)。
まあ、彼女の言うことは実にもっともなのだが、彼女が特にそう感じるのには、さらにもう一つの理由があった。
実は、彼女自身は問題の「ゲルバッキーからのメール」を受け取っていないのである。
メールを受け取ったのは、彼女のパートナーであるミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)。
シフはミネシアから話を聞いたのだが……ミネシアはまだ語彙も少なく、内容を正確に理解するのも苦手であった。
よって、シフにもたらされたのは。
「デヘペロっていう悪魔がペロペロしに来たから、ゲルバッキーの子犬(子供……クローンの未熟体?)を守れ」という、だいぶおかしな方向にねじ曲がった情報だったのである。
「敵も変質者、そして敵の狙いもキャバクラに入り浸る変態犬とは……しかも、そんなものを量産するなんて……」
変質者+変態犬=大惨事。
怖気に身震いするシフに、ミネシアが無邪気に追い討ちをかける。
「でも、デヘペロってヘンな名前だよね! 捕まったら『でへへへ……』とかいいながらペロペロされるんじゃない?」
「み、ミネシア! ヘンなことは言わないでください……!!」
そんな二人の様子を、四瑞 霊亀(しずい・れいき)は黙って見ていた。
ロングコート状になってシフに着られている彼女であるが、実は彼女もゲルバッキーからのメールは受け取っていた。
なので、シフの誤解の理由と内容にはすっかり気づいているのだが……単純に面白そうなので、一切教えていないのである。
ともあれ、そうこうしているうちに、突入組が突入を開始し、それに伴って外の戦闘も本格的に開始される。
「元を叩きさえすれば残りは何とかなるはず……行きますよ!」
気を取り直して、シフのアイオーンも戦闘態勢に入ったのであった。
集まったイコンや巨大生物などの数は総勢14体。
十二分に数的優位は確保できているが、巨大デヘペロの圧倒的な存在感を前にして、真っ向からの勝負を挑もうとするものは皆無だった。
「いかにかく乱し、急所や弱点を突くか」。
改めて相談するまでもなく、全員がその意識を共有できたことはとても大きなプラスであった。
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