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リアクション
第五章 それぞれの戦い 1
<月への港・施設外部>
「ペロロロロロウゥー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
外での戦闘は、戦況五分五分のまま続いていた。
より厳密に言うならば、どちらも決定打を放てずにいる、というべきか。
距離をとっての射撃戦をメインとするイコン隊に対し、機動力で劣る巨大デヘペロはなかなか攻撃を当てられない。
しかし、その巨大さから想像できる通り……どころか、それをもさらに上回る頑丈さの巨大デヘペロに対して、散発的な射撃攻撃ではほとんど目立ったダメージを与えられていないのである。
「あのサイズだし、あれで意外と中身スカスカだったり……とか思ったんだけど」
そんなことを言っているのは、天目一箇神機のサブパイロット・水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)。
人間と同じ質量比なら、あの形状、あのサイズでは自重を支えられないのでは……という仮説だったのだが、まあ、パラミタ……どころか、ザナドゥの種族にそんな理屈は通用しないのである。
「そんなに甘いものでもなかろう。中の小さい連中もそうとう硬いようじゃしな」
メインパイロットの天津 麻羅(あまつ・まら)がそう答えながら、再度魔法の投げ矢を投げた。
「……やっぱりこうなるんですね」
げんなりした表情で呟いたのは、龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)。
彼女の目の前のスクリーンには、大きくエラーメッセージが表示されている。
「まあ、わかってたことだけどな」
むしろさばさばした様子で答えるのは、正義のヒーロー・ケンリュウガーこと武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)……とはいえ、今はケンリュウガーの鎧になるはずの灯がサブパイロットを務めているため、ケンリュウガーの姿ではないのだが。
彼らの乗るイコン「ダイリュウオー」は、もともと白兵戦に主眼をおいたイコンではあるが、一応射撃戦に備えたアサルトライフルも所持している。
所持してはいるのだが、このダイリュウオー、どういうわけか射撃を全くしたがらないのである。
今回も一応試してはみたのだが、FCSに射撃プログラムを入れようとしただけでエラーメッセージを……それも、「やだ」の二文字を返してくる始末である。
「しかし、何もできないのも歯がゆいな……」
とはいえ、敵の攻撃力はかなり高いと想定され、一撃でもまともにもらえば即座に戦闘継続不可能になることも考えられる。
そこに単機で突撃しても格好の餌食にされるだけであり、他にも接近戦を好みそうな面々がいることを考えれば、それとタイミングを合わせて仕掛けるのが最善であろう。
「早く子犬たちのところに行きたいんですけど、そう楽な相手じゃなさそうですし……まあ、今は待ちましょう」
「ヒャッハァ〜! ちょっとでも効いてんなら、手を止めずに倒せるまでやるしかねぇだろォ〜!!」
近すぎず遠すぎずの間合いから火炎放射機で断続的に炎を浴びせかけ、実際のダメージはともかく、とりあえず嫌がらせとしては多大な効果を上げているのが南 鮪(みなみ・まぐろ)の駆る恐竜・パンティーレックス。
一応鮪本人も火炎放射器を振り回していたりするのだが、さすがにそんなものが届く間合いまで近づくのは危険すぎるため、今のところ自重している。
「オラオラオラァ〜! 悪魔は消毒だァ〜!!」
そんな鮪の狙いは、とある目的のために「キャバクラ王」のゲルバッキーにうまく恩を売ること。
なので、実際の活躍もさることながら、「活躍しているように見せる」ことが何より重要だったりするのであった。
そういう意味では、実に彼のアピールはうまくいっているといえるだろう。
そんな中、あんまり緊張感がないのがジェファルコンカスタムのコンクリート モモ(こんくりーと・もも)。
射撃特化機体のように見えるのに、あまり射撃戦にも参加せず、ふらふらと辺りを飛び回っている。
と、他のイコンの射撃攻撃が一段落した辺りで、いきなりモモが外部スピーカーの音量を上げて、デヘペロに話しかけ始めた。
「んー……最初に見た時からスゴいボディラインだと思ってたけど、ナカミは見た目以上みたいね。さっきからの攻撃、実はほとんど効いてないでしょう?」
その言葉に、デヘペロがドヤ顔で胸を張る。
「当たり前だァ! そんなちゃちい攻撃がデヘペロに通じるもんかよォ!!」
「さすがね……ねぇデヘペロさん、一体何食べたらそんなに硬くギンギンになるの?」
そう尋ねるモモの顔に浮かんでいる笑みは、スピーカー越しに声を聞くデヘペロには見えない。
故に、モモの真意になど全く気づかず、デヘペロは余裕の表情でこう答えた。
「肉、肉、野菜、肉、野菜ィィ! 何でも食べて、パーフェクト・バディイィィ!!」
それを聞いて、モモはスピーカーの電源を落とし、くすりと笑った。
「まあ、生き物だし……食べる、ってことは、やっぱり出るところもあるのよね」
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