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狙われた乙女~別荘編~(第1回/全3回)

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狙われた乙女~別荘編~(第1回/全3回)

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第4章 調査

 昨晩、下見に向かった皆が、不良達と戯れていた間に、依頼主であるミルミ・ルリマーレンをはじめとして、高原瀬蓮(たかはら・せれん)に、アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)、それからミルミの執事や召使い達もすやすやと安らかな眠りに落ち、気持ちの良い朝を迎えていた。
 他の学園の生徒もいることから、朝食は少し遅くしてもらって、丁寧に顔を洗い、ゆっくり髪を梳いて、結ってもらって。
 可愛らしい洋服に着替え、悠々と食堂で食事を楽しんだ。
 昨晩の下見の結果を聞いたのはその時だった。
「ミクルちゃんとか、他にも帰ってこない子達がいる……」
 ミルミは協力者全てを把握していたわけではないが、出発した時より人数が減っている事は明らかであった。
「自ら捕まった人も多いみたいだから、大丈夫だよ。占拠している人たちを追い出して別荘で休んでるかもね」
 瀬蓮や白百合団のメンバー達に励まされ、ミルミは準備を進めて、おやつタイムを済ませた後に一行は馬車で集落を出発した。

 現地近くに到着したのは昼頃だった。
 舗装されていない道や狭い道が通れない分、馬車の方が徒歩より時間がかかってしまった。
「下見に向かった方々の話しでは、占拠している方がいるそうですが……」
 蒼空学園のルーシー・トランブル(るーしー・とらんぶる)は、別荘の方向に目を向ける。
 ここからでは別荘は見えないのだが……。
 実はここに来る途中、見張りと思われる柄の悪い少年を馬車の中から見かけていた。
「できれば穏便な方法で立ち退いていただきたいのですが、相手が相手ですし難しいでしょうね」
「不良少年など気にする必要はないでしょう。それよりも、害虫が繁殖しているならば、まずは消毒をしてからでないと調査自体が危険であります」
 教導団の守護天使黒金烏(こく・きんう)がどさりと集めてきた噴射機を置く。中には消毒剤が入っているようだ。
「うむ、黒、おぬしの言うとおりじゃ」
 パートナーの青野武(せい・やぶ)は頷いて噴射機を1つ手に取った。
「戦闘訓練を受けている我等がリスクを犯さなければ!」
「はい」
 教導団の一色仁(いっしき・じん)と、ミラ・アシュフォーヂ(みら・あしゅふぉーぢ)も噴射機を手に取る。
「教導団のメンバー中心で、ミルミさんの依頼を受け『SOS班』を結成しましたですぅ〜。まず最初に私達が見てきますので皆さんはテントの設置をお願いしますですぅ」
「任せるでござる」
 教導団の皇甫伽羅(こうほ・きゃら)と、うんちょうタン(うんちょう・たん)の言葉に、ルーシーは不安気な目を向ける。
「近くから調査するだけに留めて下さいね。捕まった方々もいるようですし」
「あたしも行く! 大丈夫そんなドジはしないよ」
 そう八重歯を見せて笑った蒼空学園の初島伽耶(ういしま・かや)は、消毒剤を持ってはいない。彼女が持っているのは消火剤だ。
「もっちろん、ワタシも伽耶に同行するよ」
 パートナーのアルラミナ・オーガスティア(あるらみな・おーがすてぃあ)も、消火剤持参だ。
「それでは、お任せいただいます。よろしくお願いしますね。何かあったら直ぐに声をかけて下さい。加勢しますから!」
「調査を終えたら即刻戻ることにしよう。ここはおぬしらに任せるぞ」
 教導団のミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)がそう言い、パートナーのアマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)と仲間達に目を向ける。
 『SOS班』のメンバーは頷きあうと、方々に散り、別荘への接近と調査を目指すことにする。

○   ○   ○


「それではまず、皆様のお世話をする班用の休憩所を作りましょう」
 一行は蒼空学園の本郷翔(ほんごう・かける)の提案で、まずは調査に向かった人々や、依頼主達の世話を買って出た人々用の休憩所の設置から始めることにした。
 ミルミ・ルリマーレン高原瀬蓮(たかはら・せれん)達は、まだ豪華な馬車の中にいる。
 このあたりは携帯電話は使えないのだが、ミルミのパートナーにして、白百合団団長の桜谷鈴子(さくらたに・すずこ)とは繋がる為、現地に着いた旨の報告をしているようだ。
「テント、このあたりでよろしいでしょうか」
 馬車からテントを運んできた機晶姫ジェーン・ドゥ(じぇーん・どぅ)が、パートナーのファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)に訊ねる。
「そうじゃのう、もう少し水辺に近い方が便利かものう」
 ファタはそう答えて、川に近い場所にテントを下ろさせ、設置の作業を始めることにする。
「手伝います」
 と、イルミンスールの沢渡真言(さわたり・まこと)が近付き、共にテントを組み立てていく。
「人数多いので大変ですけれど、頑張りましょうね」
 翔は水を汲んで、テント近くまで運んでくる。
「こちらでは、簡単な作業が行えると便利そうですよね」
 イルミンスールのナナ・ノルデン(なな・のるでん)は、床に敷物を敷いてく。
「お、重かった……」
 ナナのパートナーのズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が、担いでいたポリタンクをテントの中に置いた。
 ポリタンクの中には、消毒用のエタノールが入っている。
「水出し用の紅茶、用意してきました」
 蒼空学園の牛皮消アルコリア(いけま・あるこりあ)は、なんだか凄く楽しそうにテーブルの上に紅茶のパックを置いた。
「ぐぬ……なぜボクまで……」
 その隣ではパートナーの シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が、落ち着かない様子で辺りを見回していた。
 別荘付近には害虫が繁殖しているという……。シーマは極力近付きたくなかった。1人で行けばいいものをと思いながらも、アルコリアを放っておけず、仕方なくついてきたのだ。
「それじゃ、皆さん用のテントの設置しよっ!」
 可愛らしい輝く笑顔を見せたのは、百合園女学院の七瀬歩(ななせ・あゆむ)だ。
「お嬢様方をいつまでも窮屈な馬車に入れておけませんしね。急ぎましょう」
 真言は設置したばかりの世話係用のテントの中に、自分の荷物を下ろした後、歩と共に、皆のテントの設置を始める。
「あのねー、ユーリはねー、マコトの邪魔にならないようにお茶とお菓子を食べてるよー!」
 真言のパートナーで魔女のユーリエンテ・レヴィ(ゆーりえんて・れう゛ぃ)は、真言の荷物の中からお菓子を取り出して抱えると、真言の傍で嬉しそうな笑みを見せた。
 真言は外見は美しい女性だが、執事であるため執事服を纏い、その上に汚れないようにユーリの男物制服のローブを身につけている。
 代わりに男の子のユーリーが女の子の格好をしていた。
「そして皆とおしゃべりして元気が出るように、話し相手になるんだよ」
 嬉しそうに言うユーリーに、真言は優しい微笑みを見せる。歩も一緒になって微笑んだ。
「どれ、わしも手伝おうか。大きなテントになりそうじゃのう」
 ファタが2人の傍に近付いて共に微笑み合い、テントの端の紐を結んでいく作業を手伝う。
「テーブルどうしますか」
 ジェーンが馬車の中からテーブルを運んでくる。
「一緒に中にいれよ」
 歩はパタパタと歩みより、ジェーンと一緒にテーブルを入れて、茶菓子を並べていくことにする。