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狙われた乙女~別荘編~(第1回/全3回)

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狙われた乙女~別荘編~(第1回/全3回)

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「変態舞士に、不良の軍団。なんなんだ、この依頼は」
 永夷零(ながい・ぜろ)は、不良の攻撃を躱し、闇の中に在る別荘に目を向ける。
「穴は、大方落とし穴を掘っていたってところか。落とし穴があろうが槍が飛んで来ようが別荘まで突っ切ってやるぜ!」
「ゼロ、気をつけて下さい」
 廃墟の下見と聞いていたため、こんなことになるとは思ってもいなかったルナ・テュリン(るな・てゅりん)は、おろおろしながらも零に付き従う。
「別荘ぶっ壊しちゃうとか面白そ……じゃなくて、大変そうだと思って、手伝い(遊びに)来たんだけど、なんだかもっと大変なことに!」
 イルミンスールのクラーク波音(くらーく・はのん)は、不良が武器振り回して跳びまわっている様子を、悲し……いや、楽しげに見守っていた。
「んーと、間違ってはいないけど、ちょっとずれてます……」
 パートナーのアンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)は、波音の姿に苦笑し通しだ。
 波音は女の子なのだけれど、付け髭に、安全第一の文字入り工事帽を被ったりしてる。
 自宅の近所で見かけた工事のおじさんの姿を真似ているようだ。
「よーし、出る杭はこのハンマーで吹き飛ばしちゃうぞ〜!」
 でも、手に持っているのは見たこともないドデカイハンマー。マジックで100tと書かれている。ただし、段ボールで出来ているのでホントはとっても軽いのだっ。
「そのことわざ間違ってますし、使い方も間違ってます」
 アンナが溜息交じりに言うが、聞いちゃおらず波音は不良に向かって走り出す。
「あ、波音ちゃん!」
「ええーい♪」
「えっ」
「いたっ」
「きゃっ」
 振り回したハンマーはぱこんとルナにあたり、殺虫剤を放り込み続けているさけと晶にもあたる。
「ごめんね、皆! お詫びに工事頑張るから! スーパーミラクル幅跳び
 波音は大きな穴を飛び越えようとする。が、大して重くは無いとはいえ大きなハンマーを抱えているため上手くバランスが取れず、というか元々穴の大きさを見誤っており、一番深い部分に「あ〜れ〜」と声を上げて見事に落下していく。
「大変ですっ」
 アンナは急いで空飛ぶ箒にまたがって、落ちた波音を引き上げた。
「穴の下に仕掛けが施されてたら、大変なことになってましたよ」
「ありがと、アンナ! それじゃ突撃よ〜!」
 全然懲りてないらしく、波音は100tハンマーをぶんぶん振り回しながら、不良達に突撃していく。
「な、なんだてめぇは!」
 夜闇の中では段ボール制であることが一見して判らないため、不良達はアンナの攻撃を避けて回る。

「みんな、頑張ってっ! 足元に気をつけて。落とし穴もあるみたい!」
 真崎加奈(まざき・かな)は、声を上げて皆に注意を促しながら、非戦闘員を庇っているアメリアに近付いて、ヒールで癒す。
「ありがとう!」
 アメリアはカルスノウトを振るい、不良を1人打ち飛ばす。
 傷ついた不良は、ゆらりと起き上がり加奈の腕を掴んだ。
「きゃっ」
 加奈は小さく叫んだ後、右手を振り上げて不良の顔に打ち下ろす。
 パンパパン!
「ふ、不良なんて怖くないんだから……!」
 必殺の往復ビンタを決め、後方に跳んで叫んだ。
 傷を受けていたこともあり、激しい殴打に不良は昏倒する。
「こっちの掃除は任せました」
 蒼空学園の志位大地(しい・だいち)は、荷物を抱えて、不良や皆の間を潜り抜け、足元に気をつけながら別荘へと近付いて行く。
 別荘の正面へは、さけのコンビが殺虫剤を投げ込んでいるため、大地は不良を避けながら別荘の側面へと回り込む。
 暑い時期な為、多くの窓が僅かに空いており、その隙間から大地もまた燻煙式殺虫剤を別荘へと投げ込んでいく。
「うわっ」
「火事か」
 中にはまだ虫――もとい、不良がいたらしく、がさがさと動き回り外へと飛び出して来る。
「てめぇらいい加減にしろよ!」
 殺虫剤と気づいた不良が、窓から飛び出し大地に手を伸ばす。
「……駆除します」
 大地は噴射式殺虫剤を不良に吹きかける。
「ぐはっ、目が……っ!」
 怒りのあまり見開いた目に入ったらしく、不良がのた打ち回る。
 大地は不良を振り切り、別荘の周りを回って殺虫に勤しんでいく。

「ゴミだのネズミだのGだのワンサカいるって話だったけど……なんか、楽しいことになってきたじゃねーか」
 イルミンスールのウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)は、けらけらと笑いながら、魔法で不良の相手をしていた。
 近付かねば、ゴミもゴキブリも鼠もただの物体だ。
 見かけても遠方から対処すればいいだけのこと……。
 だがしかし。
 殺虫剤から逃げてきたのは、不良だけではなかった。
 羽音を立てることもなく、突如現れた黒い物体が、ウィルネストの顔面に直撃した。
 「う、うわああああああああああああーーーーっ」
 手で振り払うことは出来ず、目を強く閉じ、顔をぶんぶん振ってその黒くて不潔な人類の敵を振り落とし、ぎらりと目を開いた途端、ウィルネストは火術を連続で放ちだす。
「やっ、焼くっ! 焼いてやる!! ぜーんぶ焼き尽くすーッ!!!」
 無我夢中半泣き状態で、無差別に放たれた炎に、仲間からも悲鳴が上がる。
「ウィルネストさん、お、落ち着いて! きゃっ」
「皆、燃えて無くなれーッ!」
 向けられた炎に、加奈は思わずアメリアに抱きつく。
「皆、下がって!」
 アメリアと加奈はウィルネストの手からも非戦闘員を庇うべく、その場を退く。