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リアクション
第3章 蠢く者
「くぅ放せ、俺様は男に虐げられる趣味はもっておらん」
別荘に連れ込まれ、両手、両足を縛られたヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)は、激しく抵抗をし、近付く男達を拒絶した。
外倒し窓が少し空いているが、窓から逃げることは不可能なようだ。
「やるならつかさにしろ!」
びしっと指差した先には、同じく縄で縛られた秋葉つかさ(あきば・つかさ)の姿がある。
「男性のお相手は苦手ですが、ヴァレリー様の分まで私を思う存分お好きなようにしてください」
つかさは悲壮に目を輝かせた。……?
「頼まれちゃしょうがねぇな、くくくっ」
「順番にするか? 一気にいくか?」
監視であるはずの不良達がつかさに手を伸ばし、つかさは小さく嬌声……いや、悲鳴を上げた。
その時。
「不審者発見。集まれ」
ドアが叩かれて小さな声が響く。
集落からミルミの別荘までは、徒歩で1時間ほどの距離だった。
本格的な調査や掃除は明日にするとして、下見に続々と協力者達が別荘近くに訪れていた。
「おっ、あの別荘だよな! 結構でかいなー。いい品が眠ってそうだ。持って帰ったものを商人とかに売れば、高くなるかなぁ。そしたら知り合いと一緒に美味しい物食べに行きたいな!」
ウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)は、袋やロープを手に想像を膨らませながら近付いていく。
「そうだね! さて、何かいいもの……いいゴミは落ちてないかなー?」
クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)は、周囲を見回してみる。
「あれ?」
しかし、何故か別荘の周りには大きな穴が沢山空いている。
「なんだか様子変だね。いきなり行くのは危険だよ。私が先に近付いて様子を見てくるよ」
百合園女学院の雷霆リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が前に出る。
「暗いから、気をつけてな」
ウォーレンの言葉に、「任せておいて」と、リナリエッタはひひひっと意味ありげな笑いを見せた。
「行くよ」
「……はい」
穴を避けて、リナリエッタは側面から回り込んで別荘に近付いて行く。彼女の後に、機晶姫の南西風こち(やまじ・こち)がついていく。
「それでは、ワタシはお庭の掃除してますね〜」
イルミンスールの晃月蒼(あきつき・あお)は、散らばっているゴミを集めていく。
「足元に注意しろよ」
「はい」
ウォーレンに返事をして、蒼は穴に注意しながら、足場を少しでも良くしようと片付けて行く。
「穴がぼこぼこ空いていて、休憩所を作るのも大変そうですよね。あ……スコップ」
別荘の傍に、スコップやバケツが乱雑に置かれていることに気づき、蒼は近付いた。
大きなスコップとバケツには土がこびりついていて、まるで先ほどまで使っていたかのようだった。
「……他にも、穴を埋めようとされている方がいるんですね。あ、もしかしてゴミを埋めるための穴でしょうか。あちらの方とか、ゴミ、沢山散らかってますしね〜♪」
蒼はバケツを手にとって、ゴミが大量に投棄されている屋敷の裏側の方へと歩いていった――途端。
太い腕が伸び、蒼の口を覆った。
「ぐっ……?」
「百合オジョウサマ1匹ゲット!」
「んんぐっ!」
自分は手伝いに来ただけで、百合園女学院のお嬢様じゃないと言おうにも、背後から布で口を強く押さえられており、視界に仲間の姿は見えなくて――抵抗むなしく、蒼はずるずると引き摺られていった。
「この穴、不審だよな……。害虫とか鼠より大きな生物の気配もする気が」
イルミンスールの和原樹(なぎはら・いつき)は不審に思い、とりあえず空飛ぶ箒に乗って、バルコニーに近付いた。
別荘のバルコニーは真っ暗だけれど……なんだろう、月の光を反射してなんだか光った気が。
樹は、箒から下りて、バルコニーの手すりに手をついた。
「うっ、わ、何だっ!?」
「樹!」
悲鳴のような声を上げたパートナーの元に、心配気に見ていたフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)が急ぎ空飛ぶ箒で駆けつけた。
「手がっ!」
樹は真っ赤に染まった手を、フォルクスに見せる。
「どうした、罠かッ!」
フォルクスが怒りの形相で目を光らせる。
「ああ、ペンキ塗り立てだったみたいだっ」
樹は赤く染まった両手を悔しげに見ながら言った。
「ネズミやゴキ……などの害虫は苦手だけど、害虫は退治しなきゃダメだよね」
百合園女学院の真崎加奈(まざき・かな)は、恐怖を振り払おうと少し大きな声を上げながら、別荘の様子を探ろうと近付いた。
暗くて、不気味だ。
不用意に窓に近付いた加奈は見てしまった。……窓の置くに光る目、怒りの形相を。
バリンと窓が叩き割られ、柄の悪い男が飛び出す。
「誰が害虫だーーーーー!」
男がバットを振り下ろす。
「うっ、やあああああっ」
加奈はバーストダッシュで、男の攻撃から逃れて、皆が集まっている方へと飛んだ。
「樹、後だ!」
2階のバルコニーに上がっていた樹とフォルクスの元にも、部屋から不良が飛び出してくる。
「野郎か、容赦しねぇぜ!」
不良が剣を抜く。
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