リアクション
5.その後のこと
セルマははっとした。すっかり日が傾いてしまっている。
「ここは、ど……って、何この格好!? 何で俺こんなことに!?」
と、ピンク色のワンピースに動揺するセルマ。
そこへ現われたのは氷雨だった。
「はい、セルマ君。これ」
「氷雨さん……?」
差し出された写真には、笑顔で男の娘を満喫している自分の姿があった。
「……こ、これは」
「セルマ君、ノリノリだったねー。その服だって、自分から喜んで着てたよ」
にっこり微笑む氷雨。
「じ、自分からっ……!?」
セルマは一気に身体中が火照り、死んでもおかしくないほどの羞恥に身悶えた。
消し去りたい黒歴史が生まれた瞬間だった。
眠りから覚めたイランダに、北斗は疑問を投げかけた。
「あ、あの、イランダ? 聞きたいことが――」
「それよりもお腹空いたわ」
と、視線を合わせようとしない。
「え、あ……」
困惑する北斗を無視して、イランダは起き上がった。
彼が自分に何を聞こうとしているかくらい、分かっていた。というよりも、記憶にばっちり残っていたのだ。
だからこそ、イランダははぐらかす。
「何見てるのよ?」
「あ、いや……別に、何でもない」
と、北斗は返すと、溜め息をついた。もどかしかったが、それをはっきり聞くだけの度胸は、まだ北斗にはなかった。
空京にいた間のことを、叶月はすっかり忘れていた。
ヤチェルの荷物持ちとして買い物に付いていったはずなのだが……昨日のことなのに、どうも思い出せない。
「カナ君、これ見る?」
と、ヤチェルが一枚の写真を手渡してきた。
「あ? 何だよ、こ……――」
そこに写っているのは、自分とヤチェル。何故かヤチェルを抱きしめている、叶月。
「他にもあるわよ」
と、ちょっぴり意地悪に、ヤチェルは里也から焼き増ししてもらった写真を次々に差し出した。
「っ……!!」
恥ずかしすぎる。顔から火が出そうだ。穴があったら入りたい。
「――くそっ!」
耐えきれずその場から逃走した叶月に、ヤチェルは首を傾げた。
「変ね、カナ君ったら。逃げ出すことないじゃない」
と、写真を束にし始める。
――またたび花粉のもたらした影響は、彼らのその後にも響きそうである。
お疲れ様でした!
これにてまたたびトレントの脅威は消え去り、一件落着です。
酔っていた皆さんも、そろそろ正気に戻ってくださいませ。もうすぐ四月ですよー。
マスターページにも書きましたが、皆さんの腹筋が壊れるようなリアクションを目指して書かせて頂きました。
えーと、いかがでしたでしょうか? お腹、痛くなりましたかね……?
腹筋は壊れなかったかもしれませんが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
それでは、またの機会にお会いしましょう。
ありがとうございました。