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リアクション
目を覚ました夜月鴉(やづき・からす)は、自分が猫耳メイド姿になっていることに気がついた。
「……っ!?」
あまりのことに言葉も出ない。
だが、鴉は目の前にいる魏延文長(ぎえん・ぶんちょう)が原因だと思った。そして、思ったが直後、鴉は酔った。
「っ、てめえがやったんだろ!」
と、文長へ殴りかかる鴉。
「うひゃっ、いきなり何するん!? わっ、あぶないやろって!」
慌てて避けた文長だが、鴉の勢いは止まらない。
「ちょっと、どうしたんですか!」
「落ち着け、鴉!」
その異変にアルティナ・ヴァンス(あるてぃな・う゛ぁんす)とレーネ・メリベール(れーね・めりべーる)が止めに入る。
左右から二人に拘束されて、鴉は息を切らせながらも動きを止めた。
「く、くそ……文長め、許さねぇぞ……」
「た、助かった……」
さすがに猫耳メイドはやばかったかと、文長は焦っていた。――けっこう、似合ってんねんけどな。
「……文長、私の格好、どう思う?」
「へ?」
しかし、今度はレーネが酔いだした。
「私の格好だ。外見とか、服とか……どう思う?」
と、質問をぶつけられて文長は戸惑った。
「えーと、そこそこかわ――」
「じゃあ、性格は? 何か問題はないか?」
「な、ないんちゃうか……?」
「私の長所は? 何をどう活かしたら――」
文長は苦笑いを浮かべた。まったくもって、めんどくさい酔い方だ。
「わ、私も気になる奴ぐらい……、っ! 文長、なにを言わすんだ!」
唐突に照れだしたレーネは、何故か文長に蹴りを入れた。どうっと遠くへ飛ばされる文長。
何が起こったのか文長が理解する前に、鴉が叫んだ。
「捕まえろ、ティナ!」
「りょうかーいっ」
アルティナは何を思ったか、『ネコ』のムー太をがしっと掴んだ。
「にゃふふ、いきなさーい、ムー太ぁ!」
と、文長めがけて投げつける。どうやらアルティナも花粉にやられたらしい。
「急に何しよんね――っ!?」
立ち上がろうとした直後、顔面にのしかかってくるはデブネコのムー太。
後ろにバタッと倒れた文長を、追いついた鴉が再び殴り始めた。
「ちょ、ま、わて何もしとら――ぎゃあああ!」
いつの間にかアルティナも加わって逃げ場を失う文長。
レーネに助けを求めようと視線を向けると、彼女はどこからか摘んできた花を手に、呟いていた。
「……すき……きらい……すき」
ぷちっ、ぷちっと花びらを取っていくレーネ。すっかり花占いに夢中の様子だ。
――何てこった!!
文長は一気に顔を青ざめさせると、鴉たちのされるがままに殴られたり蹴られたりするのだった……。
黒崎竜斗(くろさき・りゅうと)は苦労していた。
「駄目だ、ユリナ!」
「は、放してくださいっ……私、もう我慢の限界なんですっ」
と、上気した顔で叫ぶユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)。
ごろごろと猫撫で声で甘える北郷鬱姫(きたごう・うつき)をぎゅうと抱きしめては、されるがままになっていた。
「うみゃぁー……」
『超感覚』で猫化した鬱姫は、すっかりまたたび花粉症で酔っていた。
「も、持ち帰らせてもらっても良いでしょうか?」
「駄目よ、鬱姫はパルフェのなんだから!」
と、声を張り上げるのはパルフェリア・シオット(ぱるふぇりあ・しおっと)。猫化した鬱姫の面倒を見てくれる人を探していたのだが、選択を誤ってユリナに渡してしまったのだ。
「で、ですが、相性も悪くなさそうですし……」
鬱姫に頬を舐められながら返すユリナ、興奮しすぎて目がやばい。
「そーいう問題じゃないだろ!」
「そうよ! 早く鬱姫を放してっ」
竜斗がユリナを、パルフェリアが鬱姫を掴んで引き離そうとするが、離れない。
「こんなに可愛らしい猫さん、私は手放せませんっ」
すると、鬱姫が竜斗の顔面に猫パンチを食らわせた。どうやら、離れたくないのはユリナだけではないらしい。
「くっ……こんなはずじゃ」
と、痛む頬を押さえる竜斗。
彼もまた、またたびトレントの伐採に参加する気でいたのだが、ユリナが暴走を始めたおかげで台無しになってしまった。20
それに加え、ユリナが猫っぽい娘を持ち帰ろうとするから大変だ。
「もうどうしたらいいのよ、鬱姫ってば!」
と、力ずくで鬱姫をユリナから離そうとするパルフェリア。
しかし、鬱姫はそんなパートナーさえも嫌がってユリナにひっついている。これは骨が折れそうだ。
「どうか、悪いようにはしませんから……」
と、ユリナがパルフェリアへ頼み込む。
「許可もらったって駄目なものは駄目だ!」
「ってゆーか許可なんて、絶対しないんだから!」
叫ぶ竜斗とパルフェリア。
ユリナと鬱姫はびくっとしたが、構わずにまたいちゃつき始めた。
「きゃっ」
ふいに鬱姫がユリナを押し倒して、彼女の胸の上でごろごろと甘え出す。
「……ったく、一体どうしたら良いんだ」
「それはこっちの台詞よ」
竜斗とパルフェリアは困った表情を浮かべると、互いに顔を見合わせて息をついた。
「ふにゃぁ、何だか、頭がぼうっとするにゃぁ……」
暴れ出したまたたびトレントの花粉は、空京市内によりいっそう飛散していた。
「調査に来た、はずにゃんだけど……にゃぁー」
と、ふらふら歩く風森巽(かぜもり・たつみ)。
隣を歩くフゥ・バイェン(ふぅ・ばいぇん)も花粉症にかかったのか、先ほどからテンションが高い。
「気分が良いなぁ! おい!!」
と、声を張り上げては周囲の人々を驚かせている。
「ふにゃ……猫っぽい特徴は、にゃいと思ってたんだけどにゃぁ」
「猫、だと――!?」
はっとしたフゥが目をぎらり輝かせた。
「あたいは虎だぁぁぁぁぁ!!」
ばきっとその辺の木をへし折って、何故か人の多い場所へ突っ込んでいくフゥ。
「にゃ、フゥさん!!」
慌てて彼女の後を追う巽だが、足がもつれて転んでしまった。
「ふにゃ……あ、あるけにゃい……」
くらくらする頭で、巽はずずっと地面を這い出した。
「なーんか良い気分だよねぇ? なんだろ、なんか、なんか、うずうずするねぇ?」
一人、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)はおかしそうに笑い出した。どうやら酔っぱらった様子だ。
すると、彼女の前をフゥが暴れながら通り過ぎていった。
「気持ちよさそう! 一緒に暴れよっか、そうしよー!」
と、見るも無惨なショッピングモールをさらにめちゃくちゃにしていく。
フゥが開けた壁の穴を広げたり、フゥが倒した柱を粉々にしたり……酔っぱらいの力、恐るべし。
「あたいは猫じゃねぇ! 虎だぁーーー!!」
「男は肉体美だ! 上半身だけでもいいから脱げー!!」
楽しそうに暴れ回る二人を止めたのは『天のいかづち』だった。和泉真奈(いずみ・まな)だ。
「探しましたよ、ミルディア!」
「きゃあ、真奈だー! どこ行ってたのー?」
「それはこちらの台詞です!」
まったく反省の色が見えないミルディアに、真奈が詰め寄る。
「何があったかは知りませんが、他人に迷惑をかけてはいけません。そこのあなたもです!」
と、指を指されるフゥ。びくっとして身を縮めたが、まだまだ暴れたそうだ。
それを見て取ると、真奈は『ファイアストーム』を発現させた。
凄みを効かせてにっこり微笑む真奈に、さすがのフゥも怖じ気づく。
「分かったならよろしい。さあミルディ、帰りますよ」
と、真奈はミルディアの腕を引いて歩き出す。
「ちょっと遊びすぎただけなのにぃ」
「言い訳は後にして下さいっ」
そして、地面を必死に這ってきた巽とすれ違った。
「あ、あれ……フゥさん?」
いくつもの店がごっちゃになって壊滅している中、フゥはその中心で大人しく座り込んでいた。
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