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リアクション
買い物に来ていたイランダ・テューダー(いらんだ・てゅーだー)は、またたび花粉にやられて酔っぱらっていた。
「変ね、あるけない……頭も、ぐらぐらするぅ」
パートナーの柊北斗(ひいらぎ・ほくと)は荷物を持ち直すと、地面に座り込んだ彼女を軽々と抱き上げた。
「ちょっとぉ、何勝手なことしてるのよ?」
「歩けないんでしょう?」
「あ、歩けるわよぅ! ちょっと、ふらふらするだけ、で……」
相変わらず子どもっぽい彼女だ。
北斗はいつものことだと気にせずに歩き出し、イランダは彼に抱きつきながらも声を上げた。
「だいたい、あんたねぇ! ちょっとカラダが大きいからって、子供扱いばっかりして、なんなのよぉ! 腹が立つわ!!」
「はいはい」
「私だって、私だって、子供なんかじゃなくて一人のレディなのよ! ちゃんと扱いなさいよ!」
ばしばしと背中を叩かれるが痛くない。
「だいたい何よ、他の女の子には話しかけられるだけで赤くなっちゃってるくせに、私には平然としちゃって」
と、口を尖らせるイランダ。
「むかつくわ! あんた、むかつくんだから!!」
それはどう聞いても焼きもちだった。
子どもであれば誰だって持ちうる感情であると、北斗は微笑ましくそれを受け流す。
すると、イランダが両目を潤ませて叫んだ。
「そもそも、私のほうがあなたより年上なんだからー!」
「……はい?」
彼女の表情を見ようと顔を横へ向けると、イランダが大声で泣き始めた。
「あんたなんか、あんたなんかーっ! うああーん」
困惑する北斗だが、それよりも先ほどの言葉が気になる。――どう見ても子どもな彼女が、自分より年上だって?
「落ち着いて、イランダ」
「いや! もう嫌よっ、あんたなんか知らないんだからあっ!」
「さあ、ブリジット! これを」
と、緋ノ神紅凛(ひのかみ・こうりん)はブリジット・イェーガー(ぶりじっと・いぇーがー)の頭に何かを装着させた。
「緋ノ神紅凛、一体何を!? ……これは、ネコミミ?」
ぶわっと吹いた風にくしゃみをするブリジット。次の瞬間には目がとろんとしていた。
「さあ、イヴも」
「んー? 何、お姉さま、なにこれネコミミ?」
と、イヴ・クリスタルハート(いぶ・くりすたるはーと)も猫耳を装着させられてふらつく。
「今こそ、天音の貞操を狙う時! 行くわよ!」
「ふにゃー!」
「にゃあ!」
まるで発情期の猫のように高揚する三人。
空京市内を散歩していた姫神天音(ひめかみ・あまね)を見つけるやいなや、紅凛を筆頭に襲いかかった!
「天音ぇ、今日こそいただくにゃ!」
「紅凛さん!? ブリさんにイヴさんまで!!」
慌てて逃げ出す天音。
しかし、発情した猫たちはしつこかった。
「待つにゃあ!」
「今日こそ逃がさないわよっ」
「ふにゃー!!」
見知らぬ通行人を巻き込んで逃げ続ける天音。
何故こんな事になってしまったのか分からないが、ふと思い出されたのはまたたびトレントの噂だった。
「まさか、猫耳のせいで酔っぱらって……!?」
空気中に舞っているまたたび花粉をどうにかしないと、天音の貞操が奪われてしまう!
「トレントを何とかしないと、私の貞操が!!」
だがしかし、三人に追いかけられている状況でまたたびトレントをどうにかするのは不可能なことだった。
「天音ぇー!!」
どうも足元がおぼつかない。
「イグー、どうしちゃったの?」
「さあ、何やら目の前がふわふわして……酔いそうです」
いつもの高飛車な態度はどこへ行ったのか、イグテシア・ミュドリャゼンカ(いぐてしあ・みゅどりゃぜんか)は酔っていた。
「大丈夫?」
と、筑摩彩(ちくま・いろどり)が彼女の手を握ると、イグテシアは嫌がることなくその手を握りかえした。
「ええ……どうにか」
彩はその様子を見て取ると、何かひらめいた。
「じゃあ、とりあえずプリクラ撮りに行こっか」
「ええ」
普段なら拒否されるところだが、イグテシアにはその判断さえも出来なくなっていた。
ルンルン気分で貸衣装有りのプリクラ屋へ彼女を連れて行く彩。
「まずはねー、これ!」
と、イグテシアにアイドルコスチュームを着せ、プリクラの機械へ促す。
ふわふわのスカートを少し気にしながらも、イグテシアは嫌がらずに写真に写った。
「次は定番!」
メイド服。
いつもの印象が払拭されたようで可愛らしい。彩が思わず頬にキスをしても、イグテシアは動じなかった。
「せっかくだし、ロリータ服でお揃いにしよっ」
と、今度は白色のロリータ服をイグテシアに着せ、彩はその色違いを身に纏った。
「イェーイ!」
二人でピース。こんな風に二人で思いっきり遊ぶのは初めてかもしれない。
そんなことを彩が考えていると、イグテシアが酔った勢いなのか、ぎゅっと抱きついてきた。
「イグー、可愛い!」
ぎゅっと抱きしめ返し、最後の一枚を撮り終える。
出来上がったプリクラは全て、彩が所持するつもりだった。そして秘密のアルバムにしまって取っておくのだ。
――あとから一人でそーっと見て、うっとりするの。でも、酔いが覚めてからがちょっとコワいかな。どうか、みつかりませんよーに!
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