First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
「久しぶりだねカヤノ! よーし、それじゃいつものいっくよー!」
「えっ!? いつものって何!? どうして身体が勝手に動くのよー!」
久しぶりにティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の顔を見たと思いきや、なんだかノリノリのティアにつられてカヤノもポーズを決めたり、口上を述べたりする。そして最後に、
「ふたりは、カヤティア!」
と決めた所で、
「……カヤノさん?」
何が起きたのか理解していない様子の赤羽 美央(あかばね・みお)と、目が合う。
「み、ミオ! 違うの、これはあたしの意思じゃないの!」
湯気が出るんじゃないかと思うくらい真っ赤になって弁明するカヤノを見、美央がくす、と笑みを浮かべる。
「元気になったんですね。よかったです」
そんな美央を見て、カヤノは自分が休んでいる間、美央が頑張ってきたのだと思い至る。自らに無理を強いた上で、なお自分の所に来てくれたのだと。
「もちろんよ! あたしを誰だと思ってるの!? 魔族だろうと何だろうと、みんなまとめて凍らせてあげるわ!」
それを分かりつつ、カヤノはいつものように振る舞うことにした。しんみりしたって似合わないから。
「お二人はどうか、攻撃に専念を。私は皆さんを護る盾になります」
美央の言葉に、自分のことも忘れるなとばかりにアンブラも一声啼いて応える。
「おぉ、頼もしいねー! 待ってて、この先でタツミが魔族を引きつけてると思うから!」
ティアが、一足先に魔族の下へ向かった風森 巽(かぜもり・たつみ)に触れれば、当の巽は――。
「前ばかり見ていては、このように痛い目に遭うことになる!」
樹上を伝い、進んできた魔族の軍勢に頭上から必殺の一撃を見舞い昏倒させ、反撃を受ける前に再び樹上に逃れる。その際に身体を麻痺させる効果のある粉を撒き、戦力を少しずつ削りながらカヤノたちの下へ誘引していた。
(顔見せも済んだ頃であろう。二人を信じて、今はこいつらを連れて行く!)
あえて姿を見せるようにして、魔族が自分を追ってくるように巽が立ち回る。魔族はそれが罠だとも知らず巽を追い、隊列が徐々に縦に長くなっていった。
「来たよ! カヤノ、どうするの!?」
「今日は絶好調だから、新技を特別に見せてあげるわ! ティア、力貸しなさい!」
カヤノが片手を掲げれば、瞬く間に円錐状の氷柱が作り出される。表面に刻まれる螺旋模様は、言ってしまえば『ドリル』であった。
そして、カヤノとティアの頭上で、巨大な氷の突角が完成する。
「あたしたちを相手にしたこと、後悔しなさい!
ツイン・アイシクル・ブレイクゥゥゥ!!」
水平方向に傾けられ、推進力を与えられた突角は地面を削りながら魔族の軍勢に飛び、縦に伸びていた隊列をなぎ倒していく。仕事を終えた突角が弾けて消える頃には、多くの魔族が吹き飛ばされ、地面に転がっていた。
『カヤノ様、すっかり体調を取り戻したようですな。……とはいえ、いささか敵の数が多いご様子。……やはり、行かれますかな?』
「ええ。私に出来ることは、カヤノさんのようにまっすぐ戦うのみです」
纏った魔鎧 『サイレントスノー』(まがい・さいれんとすのー)の声に、アンブラに跨った美央が答える。
『カヤノ様も薄々気付かれているご様子、くれぐれも無理はなさらず。……尤も、無理するのは今に始まったことではないと――おっと、無駄口はここまでにしておきましょうか』
見れば、敵の軍勢がすぐ傍まで迫っていた。数で押し切るつもりなのだ。
『皆様の闘気、骨身に染み入りました。しかと焼き付け、力を尽くしましょう』
サイレントスノーの声が消え、美央は身体が軽くなるのを感じる。そのままアンブラの腹を蹴り飛び上がると、愛用の槍を構え、敵の軍勢に突っ込む。強烈な地響きと共に十数の魔族が打ち上げられ、地面に叩き付けられる。
(カヤノさん、戦いが終わったら、ぜひ雪だるまの湯へいらして下さいね)
槍を振るい、美央が一行の盾となって奮戦する――。
「魔族の奴らは、どうやら俺たち後ろにある『フォレストブレイズ』を狙っているらしい。
……ふん、そう簡単に近付かせるかよ! みんな、盛大にやろうぜ!」
「ああ! おまえたちと一緒なんだ、魔族なんて怖くないぜ!
向かってくる奴から切り裂いてやる!」
「『フォレストブレイズ』の所へは、誰も近付けさせません!
健闘先輩、猪川先輩、一緒に頑張りましょう!」
全員で戦う意思を高め合った後、先陣を切って健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)が箒に乗り、上空から敵の姿を確認する。視界に群れをなして近付いて来る魔族の姿が映ると、勇刃は左手に光を放つブーメランを握る。
「こいつをくらえっ!」
放られたブーメランは、唸りを上げて敵軍の先頭集団を薙ぐ。一部の魔族が魔弾にて対空迎撃を試みるが、それらに対して抵抗を高めてあったおかげで、さほどの損害は受けなかった。
戻って来たブーメランをもう一度敵陣に放った所で、地上を敵軍へ進む仲間の姿が見える。
(みんな……絶対に生きて帰ってこいよ!
誰か一人でも何かあったら、俺は一生後悔するからな……!)
もちろんそんなことをさせるつもりはないと改めて誓いながら、勇刃は魔族を相手にする。
「炎よ集え! 目の前の敵を切り裂け!」
猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)の掲げた剣に、炎が纏う。魔族に向かって振り抜けば、炎が牙を剥くように魔族に襲いかかり、数体の魔族を塵と化す。
「へっ、こんなもんだぜ!」
得意気な表情を浮かべるが、魔族はなおも攻撃の手を緩めない。数を以て連携を断ち、そのまま押し潰さんと迫ってくる。勇平も応戦するが、周囲を取り囲まれてしまう。
「うわっ! ……ちっ、キリがないな」
樹に背を預け、勇平が周囲に視線を配る。体力を消耗し、十数の魔族に囲まれた状況は、正直言って厳しい。
(だけど、俺には信じる仲間がいる!)
気持ちを奮い立たせ剣を握りしめた直後、一角の魔族が後ろから突かれて押し出されてくる。勇平の身体は即座に反応し、隙を見せた魔族を一刀の下に切り伏せる。
「猪川先輩! 大丈夫ですか!?」
心配する表情の藤原 歩美(ふじわら・あゆみ)、だが彼女の下に、複数の魔族が鉤爪を煌めかせて迫る。二撃までは手にした武器で受け止めるが、三撃目を空いた腹部に喰らい、パッ、と鮮血が迸る。
「藤原!」
「このくらいで……負けないよーっ!」
武器に力を込めた渾身の一撃が、鉤爪を引いて再度攻撃に移ろうとした魔族二体を真っ二つに切り裂く。それでもなお襲いかかろうとする魔族だったが、突如上空から降り注いだ隕石でまとめて吹き飛ばされ、プスプスと身体から煙を立てていた。
「あ、今日は上手にできました〜」
隕石を呼び出した張本人、リスティ・オーディラス(りすてぃ・おーでぃらす)が戦場でありながらもほわんとした笑みを浮かべる。普段は失敗することの多い技だったが、パートナーのピンチに反応したのだろうか。ともかく、ひとまずの危機は去った。
「藤原、大丈夫か!? ウイシア、治療してやってくれ!」
勇平の求めに応じ、ウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)が歩美に癒しの力を施す。
「少しの間、我慢なさってください」
幸い、傷はそれほど深くはなく、少しすればまた戦線に復帰出来そうなものであった。
「勇平! 悪い、魔族を振り切るのに手間取った。怪我はないか?」
そこに、天鐘 咲夜(あまがね・さきや)を連れて勇刃が戻ってくる。
「ああ、なんとかな。……だが、戦いはこれからが本番みたいだな」
視線を向けた先では、金属音、炎が爆ぜる音、氷が弾ける音、雷が炸裂する音などが響き、人間と魔族の肉声が加わっていた。
「回復と援護は、私にお任せ下さい。無理だけは、しないでくださいね」
咲夜が告げた直後、治療を終えたウイシアに続いて、歩美が現れる。
「ご心配をおかけしました! もう大丈夫です、私、戦えます!」
「よし……必ず生きて帰るぞ!」
勇刃の言葉に一行が頷き、戦線に復帰する――。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last