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リアクション
クリフォトに作られた入り口は、ザナドゥの本拠地ベルゼビュート城へと繋がっている。この先では既に、ザナドゥの大魔王ルシファーとエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の戦いが行われているはずであった。
ある意味で国の存亡を賭けた戦いに、契約者たちはそれぞれの目的のため、馳せ参じる――。
●イルミンスール:世界樹クリフォト
「ニーズヘッグ、まだベルゼビュート城への道は開いているか?」
レイヴン・ラプンツェル(れいぶん・らぷんつぇる)を装着しやって来た瓜生 コウ(うりゅう・こう)が、地上とベルゼビュート城とを繋ぐゲートを守る番人の如く佇むニーズヘッグに問いかける。
「おうよ、まだ繋がってるぜ。気をつけろ、ここから向かった先は城の一階部分に繋がってるって報告があった。
そこから先は、テメェら自力で行かなきゃなんねぇ。……ま、一度は到達してんだ、ダメってこたぁねぇだろ?」
コウが疑問視していた、『道の先はどこに繋がっているのか』に答える形で、ニーズヘッグが返答する。ニーズヘッグの言う通り、契約者は一度ここからベルゼビュート城に入り、アーデルハイトを連れ帰って来たのだ。
「あぁそうだ、コイツを持っていけ。契約者であるテメェが中でケガするようなことがありゃあ、オレが困るからな」
言ってニーズヘッグがふん、と自らの鱗を剥がし、コウに渡す。過去にこれを渡された契約者は、致死に至る攻撃をこれによって防がれていた。
「ありがとう……必ず返しに戻る!」
鱗を収め、コウはゲートを潜り、ベルゼビュート城へと飛ぶ――。
●ザナドゥ:ベルゼビュート城:地上1階
飛んだ先、コウの視界に吊り橋と、壮大な門が映る。その部分は確かに城のようであったが、上を見上げれば禍々しい凶相の枝葉が広がっていた。
(これが……ザナドゥの世界樹、クリフォト……)
あまりの大きさに気圧されそうになるのを堪え、コウは吊り橋を渡り、中へと向かう。これから続々とやって来るであろう契約者に先んじて、内部から撹乱を行うために。
(さて、一階には多数の罠が仕掛けられていると聞いたが……なるほど、確かに噂は本当のようだ)
内部に足を踏み入れた源 鉄心(みなもと・てっしん)が、罠という目に見えにくいものを感知するため、視力の強化や直感を働かせる。来客者を歓迎するように置かれた像の一部に穴が穿たれているのを見、そこから何かが飛んでくるだろうと予測できたし、そうでないものはもしかしたら動き出すのでは、と予測できた。
『――――!』
事実、侵入者を察知した像は穿たれた穴から魔弾を発射してきたし、像が震え出したかと思うと、羽を広げて羽ばたき、侵入者に襲いかかろうとしていた。
「ティー、俺は魔弾を発射する像を破壊していく。飛来する像への対応、任せていいか?」
「はい、任せてください。鉄心の邪魔は、させません」
鉄心の問いに、ティー・ティー(てぃー・てぃー)が頷き、得物を抜き放つ。
「床に注意しろ、その場に釘付けにする罠が仕掛けてあると見ていい」
罠は単発で仕掛けても効果が薄い、ならば複数の罠を仕掛けてあるはず、鉄心の予測に基づいた助言を残して、二人はそれぞれの目的のために駆け出す。後からやって来た契約者が、彼らの方針を聞いて力添えする。
(像が相手なら、殺意をごまかさなくてもいい……よね?)
魔弾を避け、光の刃を出現させた剣を両手に、峰谷 恵(みねたに・けい)が目についた像から無力化していく。魔弾の発射口が口にあれば首を落とし、手にあれば手を切り落とし、胸にあれば上半身と下半身を分かれさせる。
(神代さん、今頃エリザベートちゃんと戦ってるのかな。戻ってなかったしね……。
……うん、ルシファーを相手するのは止めよう。絶対殺すから)
どこか、『殺意をコントロール出来ていない自分』を冷静に眺めている自分がいることに気付きながら、『エリザベートちゃんの助けになる人を決戦場に届ける』という思いで上塗りして、恵は剣を振るう。
(恵……。せめてこの戦いが終わった時に、どうかケイの心にブレーキがかかっていますように)
ただ攻撃のみに専念する恵を、背後でエーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)が盾となって守りながら、心の在処を気にする。今、恵の心はどこにあるのだろう。ちゃんと戻って来ることが出来るのだろうか――と。
「こんなモンで、俺を足止めしようなんて、甘いんだよ! 同族ナメんな!」
飛来してくる像に対し、バン・セテス(ばん・せてす)が重力に作用する。地上から伸びる鉄鎖に絡め取られるが如く、像は地に落ちてジタバタ、と身を捩らせる。
「俺らの邪魔をするってんなら、容赦しねーぞ!」
そこに、両手から闘気を迸らせたヤジロ アイリ(やじろ・あいり)が飛び込み、拳を叩き込む。小気味よい音が響いて像が割け、ただの石の塊と成り果てる。
「うし! この調子でどんどん破壊してくぞ!
上じゃエリザベート校長が気張ってんだ、俺たちもさっさと追いつくぞ!」
これまでの事情はよく分からない点が多いものの、校長であるエリザベートが前線に居る以上、イルミンスール生徒が引っ込んでる訳にはいかない。
「ま、俺としては今の地上に興味があるんで、これ以上侵攻反対!
いっそみんなで交流しちゃえよ、結構楽しいぞ?」
バンも、理由こそ違えどこの場で戦うことを決め、そして二人は飛び荒ぶ像を相手する。
「えっと……あ、気をつけて。そこ、罠が仕掛けてあるよ」
床に視線を向けていた紅護 理依(こうご・りい)の指摘で、契約者が辛うじて床に仕掛けてあった罠――踏み抜いた足を抜けなくするもの――を回避する。この状況で動きを封じられることは、命に関わりかねない。
「解除出来るなら、しておこうか。ビスタ、頼める?」
「ええ、お任せ下さい」
理依の要請を受けたビスタ・ウィプレス(びすた・うぃぷれす)が罠のある場所へ向かい、攻撃を加えることで解除する。穴が開いた床は行動に支障をきたす可能性があるが、見えないよりは見えていた方が引っかかる確率は下がる。
「ちょっと待ってて、今治療してあげる」
罠や敵の攻撃で怪我をした契約者へ、理依の癒しの力が施される。ビスタはその間理依の護衛を務め、攻撃を受けないようにする。
「さあ、あたしの歌でみんな、元気になってね!」
戦闘が続き、疲れの見え始めた契約者を応援するべく、フィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)が歌を披露する。歌姫として、そして魔法少女として、武力ではなく歌でこの戦争終結に貢献したい、そんな思いを込めた歌が城内に響き渡る。
「ヒューヒュー! フィーちゃんサイコーやー!」
フィリーネの側で上條 優夏(かみじょう・ゆうか)が、わざわざ用意してきた七色に輝く不思議な棒を振りながら応援する。かといって一人で盛り上がっているというわけではなく、なんだか気分が高揚してしまうような、そう思わせるような振る舞いを心がけていた。ただバカ騒ぎしてるだけのにわかファンと、場の雰囲気すら操作する熟練ファンとの違いを見せてやる、例えが適切かどうか分からないがとにかくそういうことらしい。
「良い歌やったで、フィー」
歌が終わり、優夏がフィリーネを労う。実際彼女の歌は、戦闘で消耗した精神を主に回復させるに効果が見られた。地上6階まで続く道のりにあって、先へ進もうとする力を与えていた。
「よーし、この調子でどんどんいこー!」
先の階層へ向かう契約者を応援するため、二人は続いていく。
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