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リアクション
――オリュンズ市内
「できる限り、安全な場所へ!」
トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)がオリュンズ市民を誘導する。理性を上手く保てない多くの市民から、話くらいはできそうな人を探して優先的に誘導していた。
「おじいさん、しっかりしてください!」
ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が老人の手を引く。
正気を失っている人の中には、混乱して人を襲ってくる者もいた。その様な者には容赦なく気絶してもらった。
ともかく、救助の必要な人を集めて、ゲートに運ばなければならない。
しかし、ゲートをくぐれるのは、外世界からの来訪者その子孫のみ。
「理性を失っているかどうかで「現実世界」の人かどうかを区別せよ……ったって出来るのか……」
トマスがボヤく。判別する方法なんてないのだから。
「プログラムでなければ生きたいって意思があるかもしれなけど」
弁天屋 菊(べんてんや・きく)はRARやアンドロイド達のような電子的存在を思い浮かべた。架空の存在としての人間ならもしかしたら、アンドロイドと同じように世界のプログラムによって動いているのかも知れない。
「いっそ生きたいヤツだけを助けるかい? 空から落っことすフリでもすれば、判別つくんじゃなかな?」
ガガ・ギギ(がが・ぎぎ)が物騒な提案をする。
ガガはテント布とワイヤーロープで籠をつくり、それに人を載せて運ぶ気だった。その課程で判断しようということらしい。
「けれど、目の前に存在している、これは確かに助けを必要としている人々だ。それを分別するなんて――」
トマスが迷いう。そう、見た目は誰も彼も同じ人なのだ。自分たちと同じ。
分別はできなくとも希望は与えられるはずだと、トマスは演説し混乱する彼らに言葉を聞かせた。
「あなた方は『伝承』にある、『外世界からの来訪者』その子孫のはずです! 外の世界にはまだあなた達が見たことのない。けれども本来のあなた達の故郷があります!」
そう言い聞かせていると、幾人かに反応があった。
「外世界――、俺らの来た場所……」
「賢者に連れられて私たちはこの街へ――いや、この街を作った」
「賢者とヘリオポリスを犠牲に、そして『最終兵器』を封印した――」
それは何世代も前に起きたはずの子孫の記憶。トマスの演説を聞いた者たちがそれを口にする。本来なら、そのような経験はしていないというのに。
「おいおい、これはどいうことだよ? そんなの知っているのってヘリオポリスで賢者の話をきいたあたしらくらいだぞ――」
人々の言動に菊が驚く。
――と、彼女のAirPADの着信音が成る。聖からだ。空中ディスプレイを展開する。
「なんだよ聖。こんな時に」
「避難誘導している方々に、お知らせしたいことがありまして」
「なんだい、お知らせって――」
「現実世界から来た人たちの子孫を見分ける方法です」
「ホントですか! それはどうやれば!」
ミカエラが食いつく。
「『伝承』です。子孫のかたは皆、『伝承』を知っています。どこにもその原書のない『伝承』は彼ら自身が持っているのです。そう、伝承の所在とは――」
子孫全てのDNAに刻まれた記憶遺伝子。それこそが、『伝承』の本当の所在だった。
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