空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

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第三章・奈落開くヘリオポリス

 エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)はその空を見て驚いた。
「なんだよこれ! たまたま『撃てば当たる』くらいにてきがわいてんのかよ!」
 エイミーの視界、そして{ICN0004100#シュルト}の索敵レーダーには無数の敵が映っていた。
「フィーニクスにスフィーダか。……ドールマスターは倒されたはずだが、統括ナノマシーンは完全には破壊されていなかった、ということか?」
 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)はそう考えを言う。
《どうやらこれはドールズじゃないみたいだよ! これ全部『最終兵器』が分裂したものだって》
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)グレイゴーストからオリュンズにいたルカルカからの情報を各機に伝えた。
「ルカの情報では『最終兵器』は《超自在変形生物》ってことだ。その形を自在に変える事ができ、個体を無限に増やすことができるらしい」
 佐野 和輝(さの・かずき)がアニスの言葉に補足を入れた。
「それじゃ……こいつはドールズじゃないってことですか」
 志方 綾乃(しかた・あやの)の言葉にアニスが《だよ》と頷いた。
《だから、普通に戦って倒せるって報告もあるよ! 分裂を止めるには本体を倒すしかないかもだけど》
「つまりは、完全に消し飛ばして戦いを終わらせればいいんですわね! 来るがいいですわ、ドールズ!」
「リオ、ドールズじゃないよ……」
 リオ・レギンレイヴ(りお・れぎんれいぶ)の間違いを綾乃が是正した。
「でも志方ない! 私たちが突破口を開きます!」
 綾乃はグランシャリオで先陣を切る宣言をする。
「わかったよ! 《ナビゲーター》でヘリオポリスまでのルートを算出したから選んで。危険いっぱいな最短ルートと、遠回りな分安全なルート、それにどっちほどでもない普通のルート。どれを選ぶ?」
 メイクリヒカイト‐Bstで算出した戦域突破ルートを十七夜 リオ(かなき・りお)が送る。
「勿論! 最短ですわ!」
 同じ名前のリオが答えた。
 皆も賛同する。世界の崩壊までの時間が惜しい。どのルートだろうと敵と戦うことに成るならば、突っ切るしかない。
「OK! それじゃあ僕らとグランシャリオが先行してルートの安全確保だ! 遠慮せずにいくよ、フェル!」
 フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)は相槌をうつ。そして――
「ブースト全開……!」
 スロットルを絞る。メイクリヒカイト‐Bstが加速する。
 【ツインレーザーライフル】と【レーザーマシンガン】で敵の《行動妨害》する。高機動性能を誇るフィーニクスとスフィーダに対する牽制。
「甘いですわ! 天才リオ様の力をとくと御覧なさい!」
 精密な照準修正にて、逃げるフィーニクスにグラシャリオンの【ナパームランチャー】が襲いかかる。前線で突き進む。
「私も続きますよリース」
「了解」
 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)リース・バーロット(りーす・ばーろっと)龍神丸も続く。グランシャリオの先行行動に随伴するように。
「数が多いだけの雑魚なんて目じゃないわ!」
 葛葉 杏(くずのは・あん)が叫び、レイヴンTYPE―Cより、ガトリングガンを撃ち出す。魔獣に命中していく。
「機体傾斜角度修正します」
 機体制御は橘 早苗(たちばな・さなえ)が行う。杏が敵を迎撃しやすい位置へと機体を移動させ、敵との機体接触にも気をつける。
「おや、あの機体は……」
 杏がある機体を見つける。黒いフィーニクスだ。
「ちょうどいいわ、レイヴンとフィーニクスどっちが優れた機体か勝負よ!」
 牽制に【ミサイルポッド】を撒く。機動性を駆使してフィーニクスが避けるのを《行動予測》し、さらにバズーカーを撃つ。
 敵のライフル掃射は早苗が機体慣性で躱す。
 バズーカーがフィーニクスの右翼に着弾する。
「これで終わりよ!」
 動きが鈍った所を狙って、杏が【サイコビームキャノン】を撃ち、止めをさした。
「杏さんすごいですぅ〜!」
 早苗は杏を褒め称えた。杏が得意げになる。
「前方、回避してください!」
 メイクリヒカイト‐Bstに警告、綾乃が前方に向けてバスターライフルを撃ち込んだ。
 敵の壁に穴が開く。
「大型飛空艇部隊前進! 加速しろ! 護衛部隊は左翼・右翼展開! 飛空艇を守れ!」
 クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)はこれを好機と見て、部隊を前進させる。敵分布図の穴を縫い、一気に前へと推し進める。
 LSSAHの機体管制及び、火器管制は三田 麗子(みた・れいこ)が受け持つ。部隊右翼前線にLSSAHをつける。
「右翼前方に敵集中! 撃ってきます!」
 照射レーザー反応を感知し、麗子が伝える。
《任せてください! 【エネルギーシールド】を展開します!》
 御凪 真人(みなぎ・まこと)が進言し、パラスアテナ・セカンドの【エネルギーシールド】を展開して盾となり、ビーム攻撃を無効化する。
「防御は問題ないようじゃが、一度に攻撃を受けるとエネルギー消耗が激しいのう」
 名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)は【ネルギーシールド】展開による消耗を懸念する。さらに完全被弾というわけではないが、機体ダメージも僅かに蓄積していく。
 そういった、細かいダメージは《エナジードレイン》を駆使して回収する。シールド展開の合間にも【アサルトライフル】や【ショルダーキャノン】で対応する。
「地上歩兵部隊は対空砲火開始! 魔獣どもを叩き落せ!」
 《ドッグズ・オブ・ウォー》の傭兵団にクレアが指示する。遠距離放火による対空攻撃により、魔獣の腹を抉らせる。
 一気にヘリオポリスへの道が開かれる。奈落渦巻く更なる異世界の扉が見えた。
「あの中へ飛び込め! あれがゲートに成っているはずだ!」
 クレーメックが叫ぶと飛空艇は降下を始め、奈落へと沈下し始めた。
「――!? なんか敵の一機がここから離れていくよ! 和輝」
「なに!?」
 軍勢を離れて個体で動く敵機に違和感がする。その機体の行き先に近いイコンへと通信する。
《こちらグレイゴースト。スクリーチャー・オウル応答してくれ! 不明機がオリュンズへと向かっている!》