空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

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第二章・剥がれ行く仮想

 突入部隊がゲートを突っ切った後、部隊は何組かに別れた。
 大部隊はヘリオポリスへと向かい、そこに空いた大穴を目指す。おそらくあれが、他の世界へと繋がるゲートの代わりに成っているはずだ。
 そして、幾つかの部隊、いや、コントラクター達はオリュンズもしくはトロイア基地へと向かった。
 その内の一組はオリュンズの『雷霆』にある都市管理マザーコンピューターRAR.の管理室へと入る。
“どうなされました市民? そんなに急いで”
 RAR.の電子音声が訪ねてくる。
「都市の状況はわかっているでしょう? 市民がどうなっているか」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はここに来るまでの街の惨状は見てきている。瘴気に中てられた人たちが、苦しんでいる様を。
 しかし、この自体を何とかするには、先にここに来るのが先決と思い、避難をさせるのは他に任せてきた。
“ええ、大変困っております。多くの市民が苦しんでいます。ワタシの電波も十分には効いていないようです。どうしてこのような事態になったか市民はわかりますか?”
「それはこの世界が崩壊しかかっているからとしか言いようがない。それよりもRAR.、市長と通話はできるか? 強制的に繋いでくれ」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が命じるとエアディスプレイが展開し、市長との回線が繋がる。
〈あなた達ね……言ったこれはど言うことですか?〉
 シリス・サッチャー市長の顔がディスプレイ上に出る。頭を抱えて、机に伏しているが、正気は保っているようだ。
「いわいる世界の終わりが近づいているってところだ。今そっちに聖たちが向かっているはずだ。それよりも市長、俺らは市民の避難のために派遣隊を連れてきた。兵団を市内で動かしたい。許可してくれるか?」
〈好きにするといいわ……、『ウェスタ』で議題にされることももうないでしょうし〉
「感謝する。《ドッグズ・オブ・ウォー》聞こえるか? 許可が降りた。行動を開始しろ。できるだけ多くの市民を誘導するんだ」
 ダリルは矢継ぎ早に命令を下す。
「なあ、RAR.、都市の外の状況は把握しているか?」
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)が尋ねる。とRAR.は“勿論です市民”と答えた。
“周囲の地形データが書き変わっているようです。アンドロイドの視覚から、トロイア基地の状況も把握しております。軍の方々も大分錯乱しておられます”
「じゃあ、黒いフィーニクスや魔獣たちもか?」
“確認済みです。しかし彼らはコチラへとは向かってはコないようです”
「そこは救いよね。でなきゃ、あんないっぺんに襲われたらみんなお陀仏だもん」
 ルカルカが冗談を言う。
「で、あの黒いフィーニクスや魔獣たちはなんなのです?」
 夜霧 朔(よぎり・さく)が尋ねると、RAR.はとんでもない答えを出した。
“あれは『大いなるもの』の『最終兵器』、その分体ですよ市民”
「『最終兵器』!? どう言うことよ!?」
 垂が仰天した。まさか、『最終兵器』が解放されているとは思ってもいなかったからだ。
「誰かが、解放したってことよね……。で、そんなことを誰がしたのよ」
 ルカルカが尋ねる。
“独立アンドロイドのアセト様です。アセト様がもたらされた言葉によって、ワタシは封印の開放を行うことが出来ました。おかげで幾時かではありましたが、このオリュンズに本当の平和をもたらすことが出来ました”
「お前、アセトの音声を照合して封印を解いたな……」
 オベリスク作戦の時には、敵にアンドロイドの制御を一部奪わせたことといい、どこまでも狡猾なコンピューターだと垂は怒りを覚えた。
「ルカ、ここは任せた。朔と俺はアセトを探す。何があったのか聞かないとな」
「任せて。RAR.ココからトロイア基地の防衛システムを作動できる?」
“可能ではありますが、それはワタシの管理する所ではございませんよ?”
 ルカルカの提案にRAR.は乗り気ではなかった。
 だから、ダリルが命令を言い換えた。
「なら、こういってやろう。市民を安全な場所へ逃すために、基地を掌握しろ。市民は俺らの部隊が外の世界へとできる限り逃がす。ゲートの近く行くにはその『最終兵器』の分体を倒さないといけない。やれないとは言わせないぞ。そうでなくとも俺らがやる」
 RAR.は無言でオペレーションシートを出した。
「ルカは、『最終兵器』の情報を引き出せ! 俺は基地の防衛システムとここを繋ぐ!」
 こうして、電子上の防衛戦が再び開始された。


 ――スクリーチャー・オウル内。
 天貴 彩羽(あまむち・あやは)は、量子通信でRAR.にアクセスし、管理室での一部始終をも聞いていた。
「なんてこと……。あれが全部『最終兵器』ってわけ」
 眼の前に広がる無数の黒い軍勢。あれが『最終兵器』の分体だ。
「でも分体ってことは、『最終兵器』そのものじゃないということでござるか?」
 スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)が疑問を口にする。
「たしかにそうなるわね。RAR.聞こえている?」
 彩羽がRAR.に呼びかける。
“なんでしょうか市民?”
 応答してくれた。
「『最終兵器』がどこに行ったかわかる? その本体の位置は?」
“『最終兵器』の着地地点はヘリオポリスでした。本体もそこにあるはずです”
「あのうやうやしているとこに本体がいるでござるか……。それがし、探すのに苦労しそうでござる」
 モニタリングを担当するスペシアが弱音を吐いた。
「ともかく探すわよ。今見える全てが、『最終兵器』の分体……つまり、本体から別れたものなら、本体をどうにかすればこの状況を打破できるってことだわ」
 彩羽は『最終兵器』を探すべく、スクリーチャー・オウルをヘリオポリスへと飛ばした。