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リアクション
「これで、いいかな――」
三船 敬一(みふね・けいいち)は小さな墓標を建てた。
それは、ヘリオポリスで孤独な死を遂げた『慈悲深き賢者』とハルの墓だった。
あまりにも報われないその死を悼み、敬一はパワードスーツカタフラクトで崩壊したヘリオポリスの瓦礫を分けて、賢者の遺体をこの街を見渡せる高台へと運んで埋葬しなおした。
その際、白河 淋(しらかわ・りん)がもう壊れてしまった機晶姫ハルも回収した。《サイコメトリー》で触れた彼らの平穏だった記憶に触れて、一緒に眠らせてあげようと思ったからだ。
「これで、ふたりは静かに眠れますよね?」
淋が敬一に尋ねる。そして近場で摘み取った花束を添える。
「そう願うばかりだ。彼らは見を徹してこの世界を守っていた。それを知っているのは俺たちを含めてそうはいないが、せめて俺達だけでも彼らの“死を思って”やろう」
敬一、淋は黙祷を捧げる。偽りの世界、【第三世界】、その平和を影で守っていたものへ。
目を開けると、淋が何かに気がついた。
「三船さん! あれは?」
黒い球体が、ヘリオポリスへと飛んでいく。不吉な不吉な黒い何かは、ヘリオポリスの中心に、倒壊したオベリスクへと着弾して辺りを大きく飲み込んだ。
ヘリオポリスに黒く渦巻く大穴が開いた。そして――
「あれはオリュンズか!?」
地形が一瞬にして変わった。本来なら10数キロ先にあるはずの未来都市オリュンズの外形が目視出来る場所にあった。地形が変わったのだ。
「三船さん何かが来ます……!」
黒い球体から無数の何かが生まれる。それは、巨大な獣であり、昆虫であり、イコンであり、果てはフィーニクスやスフィーダの形をしていた。
その数は瞬く間に空を黒く染め上げていく。それはあろうことか、この【第三世界】と現実世界をつなぐゲートへと向かっていった。
「新たなドールズか!? 白河、急いでハイ・ブラゼルに戻るぞ!」
この数分前、アセトによって『大いなる者』の『最終兵器』の封印が解放されていた。それがこの事態を引き起こした。
パンドラの箱より飛び出た『絶望』と言う名の『最終兵器』が重層世界を終焉へと塗りつぶし始めた。
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