空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

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【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い
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 最終決戦の幕開け

――『大いなるもの』に突入する者達を見送り、高円寺 海(こうえんじ・かい)は空を見上げた。
 そこに漂っている魔物達。それは『大いなるもの』から、魔物が飛び出して来ているようであった。
「……マリーちゃん、私の小屋に行ってて」
 同じように空を見上げていたドロシー・リデル(どろしー・りでる)が、隣にいる花妖精の少女マリーに言う。
「え? お姉ちゃんは?」
「私はみんなを探してくる。多分、森とか遺跡の近くに行ってるはずだから」
「探してくるって……」
「恐らく、もう間もなく魔物がこの村を襲いに来るでしょう。その前に子供達を避難させないと……!」
 ドロシーが言った言葉は、恐らく現実になる。過去、『大いなるもの』が現れた時の事を知っている彼女なのだから。
「海様も申し訳ありませんが手を貸してください! 私は遺跡の方を見てきます!」
「おいドロシー!」
 戦闘能力を持たないドロシーが、魔物と遭遇した場合どうなるか。想像に容易い。
 海が駆けだしたドロシーを止めようと手を伸ばす。が、その手は空を切った。
「待ってくれ!」
 一瞬遅れて走り出す海。差は開いているが、追いつける。そう海が思った瞬間だった。
「ドロシーお姉ちゃん! 危ない!」
 マリーが叫ぶ。
「え――」
 足を止めたドロシーに、向かう物が居た。
 それは、人の形をしているが所々歪で人のそれとは違う。特に目立つのは、右手の前腕の代わりに刃のような物が生えていた。
「――魔物!? もう村まで来ているのか……ドロシー! 逃げろ!」
 海が目を見開く。
「あ……」
 ドロシーは突然の事に、逃げる事も出来ずただ魔物を驚いた顔で見ていた。
 距離は既に魔物の刃が届く距離。対して、海はまだ届かない。
 魔物が、腕を振り上げた。
「危ない!」
 突如、横からシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)が飛び出してきてドロシーを抱える。刃はドロシーが居た場所で空を切った。
「セシリア!」
「了解!」
 セシリア・モラン(せしりあ・もらん)が【エアーガン/パッフェルカスタム】を魔物に向け、トリガーを引く。弾丸は魔物の顔面に当たり、大きくのけ反った。
「はぁッ!」
その隙に、海が魔物を斬り伏せる。
「ドロシー! 大丈夫か!?」
「え、ええ……あの、ありがとうございます」
 ドロシーがシャーロットに頭を下げると、彼女は微笑み返した。
「いいんですよ。貴女に何かあったらいけないと思って来てみたんですが、正解だったみたいですね」
「海! ドロシー! ここにいたのか!」
 匿名 某(とくな・なにがし)結崎 綾耶(ゆうざき・あや)がドロシー達を見つけ駆け寄ってくる。その後ろにはジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)シオン・ブランシュ(しおん・ぶらんしゅ)白星 切札(しらほし・きりふだ)白星 カルテ(しらほし・かるて)が花妖精の子供達と連れ添っていた。
「みんな!」
「ドロシーお姉ちゃーん!」
 ドロシーを目にした子供達が、彼女に駆け寄り抱きつく。
「ほら、もう安心ですよ」
 そんな子供達の頭を綾耶がそっと撫でる。
「この子達は……どうしたんですか?」
「ああ、空があんなになったから子供達を避難させようと探していたんだ。そしたら魔物に襲われそうになっててな」
 某の言葉に海が目を見開く。
「魔物が……!?」
「安心しろ! 無礼な魔物は俺が滅してやったわ!」
 ジークフリートが胸を張り、声高に笑う。
「あの時の魔王様の格好良さといったら……思い返すだけで……」
 シオンが頬を赤く染め、うっとりとジークフリートを見る。
「僕達も倒したの」
 カルテがぽつりと呟くが、二人の耳に入っちゃいなかった。その光景に切札と綾耶が苦笑する。
「……もう魔物が現れ出しているのであれば、早く避難させないと! 私も手伝います!」
「貴女はダメですよ、ドロシー」
「ええ、私達と避難しましょう」
 シャーロットとセシリアがドロシーを制する。
「そうだな……その方がいい」
 海も同意し、頷く。
「海様まで……何故です!?」
「さっき襲われたばかりじゃないか。魔物に出くわしたらどうするんだ?」
「そ、それは……」
 海に言われると、ドロシーが言葉を失う。
「安心するがいいドロシー! 避難は我らに任せるがいい……そこのガキ共よ! よーく聞けぃ! お姉ちゃんのいう事をちゃんと聞くんだぞ! そして何かあったら守ってやるといい!」
「流石魔王様……素晴らしすぎます……!」
「当然よ! いつしかこの地も俺の支配領域! 守るのは当然ではないか!」
 声高にジークフリートが笑う。
「そうですね。あなたを失うわけにもいかないですから。僕らの事を書いた『おとぎばなし』の書き手が居なくなってしまうじゃないですか」
 切札が言うと、ドロシーは悲しそうな顔をして顔を伏せる。
「……何もできず、足を引っ張ってばかりですね、私は」
「それは違います。貴女には貴女の役割があるんです」
 シャーロットがドロシーの肩に優しく手を置く。
「そうですよ。戦いは僕たちに任せてください」
 切札が言うと、ドロシーは黙って頷いた。
「で、話は変わるんだが……避難場所はどうする海? 外に逃げるのは難しいだろうし、森に逃げ込めば――」
「いえ、却って危険かと思われます……私の小屋に連れて来てください」
「大丈夫なのか?」
 海の言葉に、ドロシーが頷く。
「ええ。ああ見えても、結構丈夫ですから……何のお役にも立てず、申し訳ありません。どうか、どうかよろしくお願いします……!」
 深々と、ドロシーが頭を下げた。