空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

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【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い
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 ――『雷霆』市長室。

「そういう訳でございます。市長も早く避難を」
 聖・レッドヘリング(ひじり・れっどへりんぐ)はシリス市長にことの説明をして、避難を促した。
「力と情を注いできたものが幻と認めるのは辛いでしょう。しかし、自体は一刻を争います」
 聖はシリスにこの世界が『大いなるもの』の封印のためだけに作られた架空のものであり、この世界が崩壊に瀕していると説明した。それを市長としてオリュンズを守ってきたものへと言うのは憚られたが。
「幻か……知っていましたよ。私はこの世界のことを」
「じゃあ、偽りの世界と知っていて市長をやってたですかぁ?!」
 キャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)は市長の告白に驚いた。
「ええ、この世界の全てを知っていたのは私とRAR.、そして歴代の市長だけでしょうね。市長になったときに全てをRAR.から聞かされているわ。この世界の成り立ちとこの都市の役目も」
「それじゃあ、『最終兵器』の封印も『伝承』のことも知っていたってことなの? ならなぜ、誰にもそのことを言わなかったのよ?」
 荒井 雅香(あらい・もとか)が聞き返す。この人は知っていてそれらの事を誰にも口外していなかったのだ。
「RAR.と同じく市民を守るためよ。危険な兵器があるなんてことを他の軍に知られて見なさい。自治区としては小さなこのオリュンズなんてあっという間に踏襲されてしまうわ」
 だから敢えて口外しなかった。
「じゃあ、『伝承』の伝わりが曖昧だったり、その資料がどこにもないのも」
 雅香にシリスは頷く。
「都市の外へと真実を流出させないためよ。そして市民を不安がらせないこともよ。『伝承』の本当の所在に関しては、こればかりは私たちの意思ではどうにもできないけど」
「おいおいなんか辛気臭ぇ話しだな。ところでよ、この都市の住民の幾らかは現実世界から来た人たちの子孫ってことは知っているんだろ? どうやってそれを見分ければいい? ついでに議会の奴らにも避難を手伝ってもらいたいんだがよ」
 イワン・ドラグノーフ(いわん・どらぐのーふ)が尋ねる。真実を知るシリスならその方法も知っているのではないかと踏んだからだ。
「『ウェスタ』の議員たちの手を借りるのは難しいでしょうね。私もこんな状態だし……。でも、子孫の見分け方なら、どうにかなるかも知れないわ」
「それってどうやるんですぅ?」
 キャンティーが聞き返すと、伝承の真実がシリスより伝えられた。
「それは――」