空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

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まずは問いましょう。
 あなたにとって、絶望とは何ですか?
 

 封印の箱。RAR.をパンドラの箱とするならば、箱を開けた時、そこから飛び出すものは、唯一つ。
 ――絶望。
 それが、『最終兵器』の名だ。

第六章・『最終兵器』απελπισiα――アペルプシア――


 黒いフィーニクス。それが『最終兵器』の本体だった。
 それはどの分体とも変わりがない。しかし、決定的な違いがあった。
 そいつは糧を欲していた。自らが動く原動力。封印の間、摂取することをRAR.に妨げられていた負の感情。
 そしてそれは、『大いなるもの』が切り捨てた、絶対に持ってはならなかった感情の集合体。絶望。
 瘴気で混沌とする意識下にある仮想世界の人々において唯一、それを意識している者が『最終兵器』の糧に選ばれた。
 皮肉にもそれは人ではなくアンドロイドだったが――。
 彼女はそう。自らの行動を自責し、この世界から抜けだして生きることのできない唯一の存在であるのを理解しており、生きる希望のない絶望の中にいる。
 彼女はそう。死ぬのだ。
 だから、今アセトは誰よりも死を感じていた。


「見つけたわ! あれが『最終兵器』の本体ね!」
 シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)アイオーンからその黒いフィーニクスを見つける。事前にあれが『最終兵器』の本体だと情報を得ていた。
「『最終兵器』かぁ……こっちの世界のラスボスみたいなもんだしね〜。きっちり倒さないとね」
 ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)がアイオーンを先駆させる。
「シフは攻撃に集中して! 回避は任せてよね!」
 【新型ビームサーベル】で斬りかかる。しかし、
「え?!」
 シフは目を疑う。さっきまでフィーニクスの形状をしていたものが、アイオーンと同じ形状へと変化した。そして同じように【新型ビームサーベル】で斬撃を受け、弾く。
「何なこれ!?  武装までもアイオーンといっしょだよ!」
 それはまさに完璧なるコピーだった。いや再現と言うべきか。『最終兵器』はアイオーンの形状、武装、及びシステマティックな部分に至るまで全てを完全再現していた。
 【バスターライフル】の銃口が向く。ミネシアは機体を回避行動へ。
「っ――しまった!」
 都市部で回避行動をするということは、他に被害が行くということだ。市民が危ない。
 グレイヴストーンがシールドを展開する。アッシュ・トゥー・アッシュ(あっしゅ・とぅーあっしゅ)シュラウド・フェイスレス(しゅらうど・ふぇいすれす)だ。機体後方への被害が防がれたが、機体負担はかなり大きかった。
《君、大丈夫か!?》
 続いて、オリュンズへと至った枳首蛇から叶 白竜(よう・ぱいろん)が通信を入れる。
「僕らは大丈夫です! それよりも早くアイツを!」
「……(機体損傷はあるが、まだシールドは貼れる)」
《わかりました。 市民の避難は殆ど済んでいます。無理をなさらずに》
「白竜よそ見するなよ! 攻撃が来るぞ!」
 世 羅儀(せい・らぎ)が枳首蛇と同じフィーニクスへと変化する『最終兵器』を見る。【ツインレーザーライフル】が対空砲火で襲う。
「自在に形を変えるとは訊いてはたが、ここまでとは……!」
 白竜は驚嘆する。滑空下降から【ツインレーザーライフル】で同じように攻撃する。
《手こずっている暇はないぞ! そいつを倒さなければ敵が増えるんだからな》
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)も{ICN0003887#シュヴァルツ・?}で加勢する。
「さあエルデネスト、行くぞ」
「ええ、グラキエス様。存分に戦ってください」
 エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が機体制御をサポートする。
 砲撃の合間を縫って近づき、【ビームサーベル】と【ソードブレイカー】の二刀流で懐を切る。
 敵ライフルの形状が変わる。同じく【ビームサーベル】と【ソードブレイカー】の二刀流に。続いて機体もジェファルコンへ。
 二合、三合――と斬り合い、互いに距離を離す。
「なかなかに、手のかかる相手だな。いいがな――」
 グラキエスは再び、斬り合いに向かう。だが――