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リアクション
第五章・ツーク・ツワンク最後の出航
「みなさーん! 慌てずに船に乗ってくださーい! けが人が優先でーす!」
スピーカーでカリーチェ・サイフィード(かりーちぇ・さいふぃーど)が救助者を船へと誘導する。
「随分と乗ったみたいだな!」
ツーク・ツワンクに乗船する別世界の人間たちを見て、ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は壮観に思った。
「乗船してきたヤツから1G貰ったらナガンは今頃大金持ちだぜHAHA!」
「だったら、ナガンは俺に乗員数×2G払うようにー。だから無料で乗れよ(ドヤァ)」
本船の所有者である佐伯 梓(さえき・あずさ)が賃借料を要求してきた。
「それじゃ、ナガンが大損じゃないか! おっとそろそろ限界だからかえるぞー」
サイコロ ヘッド(さいころ・へっど)に舵を回させる。ツークが浮上する。
しかし、浮き上がった先にあるのは敵の海だ。その海を突切って、帰る事になる。
それがこの世界での彼らの最後の船出となる。
船内では、アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)たちが避難者の手当で忙しくなる。第三世界以外でも、何らかの騒動があっているらしく、それにより負傷者が出ていた。
「アルフ、包帯を船倉から持ってきて! 追加で!」
「わかりました。お嬢様」
アルメリアは足りない包帯のストックをアルフレッド・エルドハイム(あるふれっど・えるどはいむ)に取りに行かせる。その間、にヒーリングで治癒を促進させる。
「みなさんがんばってください! もうすぐ脱出できますから!」
医療の手伝いをするソフィア・エルスティール(そふぃあ・えるすてぃーる)も負傷者を励ます。瘴気のこともあり、彼らの意識レベルは低下している。
「あたしも手伝います。《ヒール》くらいしかお役に立てないけど……」
カリーチェも負傷者の治癒と手伝いする。
「お嬢様、持って来ました」
アルフレッドが船倉から包帯の詰まった箱を持ってきた。それでも包帯はどんどん消費されていく。
と、船体が大きく揺れた。
「あー、やっぱり撃ってくるよなー。俺の船大丈夫かー? 修理代はナガン持ちでいいだろうけど――?」
「誰か! 全力で迎撃してくれー! 梓がナガンの財布狙ってるー!」
「今やっているとこだよ!」
《ギャザリングヘクス》強化の《氷術》の盾で関谷 未憂(せきや・みゆう)が攻撃を防いでいた。実弾系への爆風衝撃は緩和しにくいのが難点だが、直接的な船体損傷は防げる。
「また次が来るよ!」
リン・リーファ(りん・りーふぁ)が《ディテクトエビル》による警戒が光る。《毒虫の群れ》と【弾幕ファンデーション】で襲い来る魔獣を拡散する。
「こんなの全部相手してたら切りがないよ!」
未憂が嘆く。イコンレベルの相手を大量に相手するには生身では辛い。
《こういう事は脳筋担当の私らに任せてよ》
LH・エトランジェが敵の前にはだかる。伏見 明子(ふしみ・めいこ)と
レイ・レフテナン(れい・れふてなん)だ。【新式アサルトライフル】で近づく敵を迎撃する。
《これだから契約者ってやつは……》
レイは無茶に敵と船の間に割り込む明子の行動に頭を抱えた。
「おっと、脳筋担当はまだいるぜ?」
ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)が《雷霆の拳》を飛ばす。【プロミネンストリック】を使って、イコンの近接へと飛び、《七曜拳》を浴びせる。
「【機晶コーティング】があるイコンよりかはぶっちゃけマシだな」
《それでもこの数はキツイよ! 帰るまでがツアー旅行ってのはわかっているけど!》
旅のしおりの一行を復唱し、明子は【ビームサーベル】での格闘戦に持ち込む。敵一閃。
「沈没なんて俺はやだぞー!」
梓が悲観する。悲観しつつも、デッキガンで前方の敵を排しようとする。しかし、弾が切れる。行きでも使っていた分、弾数が足りなくなっていた。
船の前にイコンが立ちはだかる。
立ちはだかるイコンへとマジックカノンの砲撃が被弾する。メフテルハーネの攻撃だ。
「俺様、登場! 遅くなった!」
南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)だった。
「ただ迷っていただけだがな」
とオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)が補足する。
「け、決してそんなことはねぇぞ! 迷子になっていたわけなんかないぞ! と――」
魔獣を撃ち落とし、メフテルハーネが船の盾となる。
「ちょっとどいてろ。空の上でどこまで通じるか分からねえが――」
ラルクは敵イコンを足場にする。そして、
「《震天駭地》」
イコンを震源に空が震える。凄まじい衝撃波が空を襲い、多くの敵の動きが止まる。
「今だ。このままゲートまで一気に突っ切るぞ! 全速前進! ナガンたちの世界へ」
偽りなき本当の世界へ。船は帰っていく。