空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


【1】支援

 大規模な戦いには補給が不可欠。
 本隊と一緒に補給物資やイコン整備などを行う者たちもこの作戦に参加していた。
 そのうちの一人であるレジーヌ・ベルナディス(れじーぬ・べるなでぃす)も自分の仕事、補給に専念していた。
「上空ではイコン部隊が交戦中、地上でもちらほらと交戦が行われているようですね」
「束の間の平穏ってわけなんだね。あーあ、めんどっちー」
 エリーズ・バスティード(えりーず・ばすてぃーど)がぶーたれながら補給物資を運んでいる。
 他にもレジーヌの部下十人が補給にあたっていた。
「ほらほらー! しゃきっと歩かないと置いてかれちゃうよー!」
「そろそろ敵との戦闘が激化します。私たちで出来る限り支えていきましょう」
 レジーヌとエリーズからの叱咤激励を聞き、部下たちが今一度気を入れなおして補給にあたる。
「皆さんの協力に感謝しないとですね」
「……わーたーしーはー?」
「勿論、エリーズもです。ありがとうございます」
 何だかんだ言いながらも手伝いをしてくれるエリーズに小さくお辞儀をするレジーヌ。
 自分の働きがちゃんと評価されたことに、エリーズが嬉しそうな顔をする。
「へっへーんだ! ほらほら、イコン整備の人に物資を運ばないと!」
「ふふっ、そうですね」
 レジーヌに褒められて上機嫌なエリーズが走り出し、レジーヌもそれをゆっくりと追いかける。

 そんな二人とは打って変わりイコン整備は大繁盛。
 整備にあたっていた荒井 雅香(あらい・もとか)イワン・ドラグノーフ(いわん・どらぐのーふ)が片っ端からイコンの修理・整備を行っていた。
「イコン、こんなにしてしまって、すいません……」
「いいのいいの。そのために私たちがいるんだから」
「お前さんが生きてここにイコンを持ってくるってんなら完璧に直してやるよ! ガーッハッハッハ!」
 落ち込むパイロットを明るく、豪快に励ます二人。
「ありがとうございます! って、この小人っぽいのは……?」
「ああ、ポムクルさんって言うの。整備を手伝ってもらっていてね」
「こ、こんなに小さいのに整備ができるんですか?」
「できるのだー」
 わっ、とパイロットが驚く。せっせと作業していたポムクルさんにいきなり話しかけられたのだ、無理はない。
「ガハハ! こいつらの整備の腕は中々だぜ? 安心しな!」
「……はい! これで大丈夫、あなたはまだ飛べるわ」
「はい、いってきます!」
 そう言ってパイロットは空へと戻っていく。しかし、まだまだイコンの修理は終わらない。
 大中小様々な損傷に加え移動しながらでの整備では落ち着くはずもなく。
「さすがにきつくなってきたかしら……」
「では、私も手伝いましょう」
 雅香の横から長谷川 真琴(はせがわ・まこと)が姿を現す。彼女は今朝、作戦前にイコン部隊の最終調整を行っていた。
「こっちの二機は私たちでやります。向こうの二機をお願いします」
「そう? 助かるわ」
「クリスチーナ」
 呼ばれたクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)は既に修理に取り掛かっていた。
「こりゃ派手にやったな、下手すりゃあの世行きだぜ?」
「め、面目ありません……せっかく今朝早くから整備して頂いたのに」
「生きてるんだ、儲けもんだろ。もっと完璧にしてやらぁ。んで? 何か言ったかー! 真琴ー!」
「聞こえているなら最初に返事をしてください。……おや、これはこれは」
 クリスチーナの側までやってきて修理中のイコンを見上げる真琴。
「朝一で仕上げたこの子がこんな形で帰ってくるとは、意外ですね」
「申し訳ありません。僕が不甲斐ないばかりに」
「何か不備等はありましたか?」
「と、とんでもありません! あくまで僕の未熟が原因です!」
 整備をしてくれたのにボロボロにしてしまい申し訳ない、その気持ちで一杯なパイロットが頭を下げる。
「いえ、ないのならよかったです。少々お時間を頂きますが、完璧に整備しますのでお待ちください」
「つってもこのちっこいやつらのおかげでかなりハイペースだ。そう時間もかかんないかもな」
「ポムクルさんなのだー」
 ちっこいポムクルさんが甲斐甲斐しく整備しまわっている。
 そこに雅香たちと真琴たちの力が加わり、何とかイコン整備が滞ることはなかった。

「……少々進行が遅いのでは?」
 本隊の中央、アルティメットクイーンと共に宮殿へ護送されているエレクトロンボルトが鋭峰に問いかける。
「上空の敵イコン部隊の苛烈な攻撃、更にこれから本隊も戦果の中心へと身を投じる。偵察部隊の情報も正確に把握しなければならない。少々遅いかもしれないが、これは必要なタイムロスだ」
「だがしかし……」
「失礼いたします」
「むっ?」
「この作戦中にアルティメットクイーン様及びエレクトロンボルト様のお世話をさせて頂きます……クエスティーナと申します」
 おっとりとした口調で、礼儀正しく挨拶をするのはクエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)
 隣にはサイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)も佇んでいた。
「お世話? そんなことよりも進行を速めてもらえればそれで」
「僭越ながら……先ほども言ったとおり敵の壁が厚いのです。更に強力な相手、ソウルアベレイター“業魔”の姿も確認されています」
「……ふむ」
「ゴーストイコン、魔物だけならいざ知らず、業魔までもを一度に相手取っては劣勢は必死。そうならないよう、最新の注意を払って行動させて頂いております」
「何卒ご理解頂きたく存じます」
 手短に用件を話したサイアスとクエスティーナが頭を下げる。
「……わかりました。ですがこれ以上の遅れはなるべく避けてください」
「かしこまりました」
 渋々ながらエレクトロンボルトは引き下がった。
「すまんな。世話係など」
「いえ、あってしかるべきことかと思いますわ」
「万一、奴が暴走しようものであれば即座に対応する所存です」
「ああ、頼む」
 機転を利かしたクエスティーナとサイアスのおかげで何とかこの場は切り抜けた。
 だが、まだ油断はできない。いつ光条世界に告げ口をされるかもわからない今、細心の注意を払い続けねばならないのだ。