空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


【1】苛烈

 本隊の上空では熾烈なイコンとイコンのぶつかりあいが巻き起こっている。
 鉄、風、大気が焼き焦げ吸い出す酸素もなくなろうかという激しい攻防。
 イーグリット、カムパネルラに搭乗するオルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)も戦場を駆ける。
「軽量、高速、攻機動をコンセプトに作られたイーグリットを甘く見てはいけませんことよ!」
 第二世代、第三世代、カスタム機など高性能機があちこちにいるこの戦場で、それらに引けを取らない武功をあげるオルフェリア。
 その功績はミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)のフォローがあってこそだ。
「この程度のスピードで照準をぶらすのなら、大人しくしていなさいと言いたいものですわね」
 敵イコンをスピードてもって翻弄してから、確実に背後に着く。
 ビームサーベルを振り抜きすぐに離脱、その最中にも高初速滑腔砲の狙いを付ける。
「当てますわよ!」
 高速移動から滑腔砲で敵を撃つなど無理難題、しかしオルフェリアの攻撃は外れはしない。絶対必中。鮮やかな攻撃の前に撃墜を余儀なくされる敵イコン。
「素晴らしい。イーグリットの後継機であるこのアイオーンも負けてられませんね」
 目覚しい活躍をするオルフェリアを見たシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)が賛辞の言葉を漏らす。
 副座にいるミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)は空中と地上における状況把握に専念している。
「地上に飛行型の魔物多数いるよー!」
「了解、援護に向かいます」
 ブーストをふかし上空から離脱、激的なスピードで地上の援護へ向かうシフ。
 ミネシアの情報通り多数の飛行型の魔物が本隊の中央へと向かってきている。
 その行く手にアイオーンが割ってはいる。敵の間合外からビーム式のアサルトライフルを乱射し、魔物を蜂の巣にしていく。
 魔物から噴出す赤い血はアイオーンの真っ青なボディに付着することはない。
「……次は空ですね!」
 ミネシアの言わんとすることを感じ取り、上空へと戻るシフ。
 彼女たちの三次元的な動きによるフォローは空中と地上の戦闘を手助けしていた。
 その的確な援護のおかげか、空中ではグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の乗るシュヴァルツ・zweiが奮戦していた。
「ツヴァイとウルディカと飛ぶ俺を、止められると思うな」
 黒く、紅い閃光が空を自在に駆ける。その閃光から、レーザーバルカンが生まれ敵を撃つ。
 グラキエスの周りには常に光が飛び交っていた。
「右に一、左に二。左が近い、まとめてやれるぞ」
「わかった」
 ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)の言葉に素直に従い、左へ旋回。
 呆けているような敵イコン二機の背後に近寄り、二刀で持って突き刺す。
「右にいた奴がこちらに向かっている。かわして振り向き様に」
 ウルディカの言葉を最後まで聞かずシュヴァルツ・zweiが動く。
 相手の横払いの攻撃の寸前に体をまるごと縦に回転させかわす。
「そして、斬る」
 回転力も加えつつ敵イコンの足元から頭部にかけ下から上に両断。
 そのまま元の正位置でピタっと止まる。それと同時に三体のイコンが爆発した。
「まだまだ、やれる」
 グラキエスが爆煙をかきわけ、次なる相手へと向かっていった。
「ありゃー随分とすごい手腕だことで」
「私たちも……負けてられません」
 ヴァ―ミリオン内で他友軍機の活躍を見ていた十七夜 リオ(かなき・りお)フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)
 状況把握をメインに他友軍機の援護をし、着実に敵イコンを撃墜していた。
「これもポムクルさんたちのおかげかね」
「……リオの機体制御のおかげです」
「お褒めに預かり光栄ってね……ん? あれはなんたらトロンボルト?」
 リオの視界には、ぴょんぴょん飛び跳ねるグランツ教信者たちと、しかめ面のエレクトロンボルトの姿があった。
 どうやら「そこにいられては進行の妨げになる」と講義しているようだ。
「……撃ちます?」
「だめだって……」
 音声を切り替えてイコン内から話し始めるリオ。
『邪魔なら移動するけど、敵は宮殿に近づくにつれ多くなってきてる。敵イコンやら魔物やらが襲ってきても知らないよ?』
 一報だけ入れて低空での移動を取りやめるリオ。
 守っていたのは事実。だが、進行の妨害をしていたのも事実。
「さて、僕の妨害は終了。後はフェルと暴れるだけ、無理せず無茶していくよー!」
「……はいっ」
 ヴァーミリオン、通称【朱雀】が空を舞う。
「っと、離脱しちまったか。いいやり方だったが目をつけられたようだな」
 フラフナグズに乗る斎賀 昌毅(さいが・まさき)が呟く。
 本来、フラフナグズは火力至上主義の機体。だが、現在は昌毅により武装を一新。とても火力主義とは言えない機体となっていた。
「いくらなんでもこの換装はやりすぎなんじゃ……」
 パートナーであるマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)も心配そうだ。
 現在の武装もあり、二人は守備に専念することにしていた。
「この武装なら戦闘も継続しちまう、否応なくな」
「それが牛歩戦術に繋がる、ですか……真面目にやればバレはしないでしょうけど」
「任せろ。……いやぁー、てきがおおいなーくせんしちゃうなーこれはー」
 大根役者もびっくりな演技。故意にやっていることが即バレするレベルだ。
「……とりあえず、出力ダウンだけには気をつけて行きましょう」
「そうだ、ついでに敵の残骸を進行ルートに、“誤って”置いちまおう」
 有言実行。本隊を護衛しつつ、倒したイコンや魔物の残骸を進行ルートにほっぽり投げる昌毅。
 あまりにもあからさまな場所に投げるのを見かねて、途中からはマイアが絶妙な場所を見つけそこに配置するようにフォローする。
 これにより「進行はできるが、非常に厄介な進行ルート」が完成する。
 宮殿が近い今、別のルートを探そう等とは思わない。やむを得ずこのルートを進むことになるのだった。