空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

リアクション公開中!

聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)
聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回) 聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

リアクション


(・蒼)


 長谷川 真琴(はせがわ・まこと)は、ホワイトスノー博士のBMIのデータを元に、青いイコンへの対策をまとめていた
 整備科に所属している彼女なりの考えを、レポートとして記す。

「ジール・ホワイトスノー博士のデータと、実際に青い機体と遭遇した者達の証言を合わせて考えると、敵のイコンにはブレイン・マシン・インターフェイスの技術が使用されていると推測される。
 同じシステムを使用した、当学院の試作機が実用段階に踏み切れないのは、この技術に致命的な欠点があり、誰にでも使用出来るものではないからである。
 ならば、なぜ青いイコンは稼動しているのか。
 それは、システムのために調整された、選任のパイロットがおり、機体自体も専用機として運用しているためである。ただし、それでも消耗が激しいためか、長時間の稼動及び完全な力は発揮できないものと考えられる。
 さらに付け加えるならば、このシステムで放出出来る念動力はそのパイロットの力量に比例しているのではないか、とも言えるかもしれない。実際、ベトナムから帰還した生徒の話からは、青いイコンのパイロットが本来パートナー同士でしか起こせない精神感応をその場にいるもの全員に起こしたという。
 コリマ・ユカギール校長のような強い力を持った超能力者ならば可能とも考えられるが、そうだとするならば相手の能力は相当に高いと推定出来る。
 よって、青いイコンの力自体は覚醒とは似て非なるものではあるが、『覚醒状態』を人為的に作り出そうという試みによって作られているため、非常に厄介であることに変わりはない。そのため、青いイコンに向かう際は『覚醒』したイコンが望ましい。覚醒を果たすことで、念動力を増幅して放てるものではないかと推察する。
 また、機体が覚醒状態にあれば、BMIによるパイロットへの負荷も軽減されるのではないか、とも考えられる。
 覚醒という、現状では未だに達成していない条件が前提となってしまうが、相手の稼働時間がこちらより短いことは確実なので、相手の念動力を中和・相殺していき根競べに持っていくか、もしくは相手より大きな力でねじ伏せるかのどちらかとなるだろう」

 
「こんな感じでしょうか?」
 一通り書き終え、見直しを行う。
「やっぱり、覚醒は必須っぽいなぁ」
 クリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)が、真琴と一緒に目を通していく。ならば、その「覚醒」はどうすれば成し遂げられるのか。
「それを考える上で必要になってくるのは、イコンが二人乗りである理由かな。
 普通に考えれば一人乗りでもいいはずなのに、地球人とシャンバラの民が乗らないと力を発揮出来ない。つまり、イコンとは絆を表すものじゃないのか」
 地球とパラミタ、異なる二つの世界を繋ぐ絆の象徴。それがイコンではないのかとクリスチーナは考える。
「そうなると、イコンを覚醒させるには地球人があたいらと契約するようにイコンと絆を結べばいいということになるのか。地球人とシャンバラの民とイコンの三位一体。それをイメージ出来れば、覚醒を促すことが……」
 出来るかもしれない。
 しかし、学院の生徒にはそれを意識しながらイコンを運用し始めた者もいる。
 それでも未だ覚醒しないということは、何かきっかけが、あるいは「鍵」が必要だということなのだろう。
「もし、覚醒した機体でなくても――例えば、青いイコンのパイロットの精神的な隙を付くなどして少しでもきっかけを作れれば、現行の学院イコンでも対策が練れるのですが……さすがにそこまでは分かりませんね」
 整備科では、イコンの機体構造については分かっても、超能力者についてまでは分からない。
 真琴はレポートを、ドクトルとホワイトスノーに提出した。

 真琴のレポートを受け取ったドクトルへ、風間からの連絡が入った。
『風間君、先ほどの話の続きだが……なに? ベトナムのイコンへの対策を立てられるかもしれない?』
 だが、BMIのテストを受けた生徒のことも気掛かりだ。
 しかし、こちらもまた、同じように対策レポートを手にしたところである。
『ちょうど、こっちも対策を考えていたところだよ。ただ、お互いの視点は違うところにあると思う。二つの情報を上手く合わせれば、見えてくるものもあるはずだ』
 最後に、風間へと告げる。
『だが、君の考えている「次世代機用強化人間育成計画」に私は賛成は出来ない。この意見だけは曲げるつもりはないということを、覚えておいてくれ。それが彼らや、学院のためだとしても、これ以上君の推進する犠牲を伴うやり方を続けて欲しくはないんだ』