空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

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【2】業魔

 クイーン及びアイシャは宮殿内部へと向かう。だが、王都周辺での戦いはまだ終わっていなかった。
「よお? 逢いたかったぜぇ?」
 ソウルアベレイター“業魔”。只ならぬ気を放つ怪物。
「強いな。腕が鳴るわ」
「わっちもでありんす!」
 対するは【蒼空学園第三代校長兼理事長】にして剛の者、馬場 正子(ばんば・しょうこ)、【葦原明倫館総奉行】にして暴れテキサスハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)
 二校を代表するツワモノが業魔の前に立ちはだかる。三人から発せられる闘気は周辺にいた魔物たちを怯えさせ、遁走させた。
 それはあの超巨大個体も例外ではない。
 ……つまりは先ほど魔物の大群が本隊を襲ったのは、この三人のせいである。
 そんなこととは露知らずヤル気満々の三人。
「言葉はいらねぇな? 派手に、やろうぜ!」
 お構いなし、関係なしに業魔が猛進する。防御などせず攻撃のみに身を任せる。
 両後腰部及び背中にある四刀は抜かず、己が拳をぶん回して振るう。
「ぬぅ!!」
 対する正子も一歩も引かず業魔の拳に自分の右拳をかち合わせる。

―――ドゴンッ!!

 拳と拳がぶつかったにしては鈍すぎる音が木霊する。しかし、業魔も正子もピンピンしていた。
「わっちも混ぜるでありんすよ!」
 闘争本能を堪えきれなくなったハイナが【銘刀雪月花】を抜き業魔を貫かんとする。しかし―――。
「ハッ! 残念だがそいつは無理だ、おらお前ら! 喰らいつけ!!」
 業魔が背中にある刀を抜く。【蛇刀・表】が切っ先を貪り、【蛇刀・裏】が切っ先を弾き返す。
 一瞬のうちに起こった激しい攻防、普通の人間がみたら間違いなく目が点の状態になるだろう。
 だが残念なことに、ここに普通の人間などいない。
「業魔! 借りは返させてもらう!」
「一太刀頂戴! なんて?」
「おっと!」
 スウェル・アルト(すうぇる・あると)アンドロマリウス・グラスハープ(あんどろまりうす・ぐらすはーぷ)の攻撃を察知し、業魔が大きく飛び退く。
 そのため、スウェルの攻撃は大きく空を斬るだけに終わってしまう。
「これでいい。あの小太刀を突破しなければ意味がない」
 スウェルが武器を構える。最早守るべき本隊は宮殿間近。業魔も本隊を狙っている様子ではない。
 ならば、返すべき借りがある以上、業魔の前に立ちはだかるは至極当然。
「一人では敵わないと知った。なら」
「今度は私も参戦っですよー!」
 一人で敵わぬのなら二人でもって戦えばいい。アンドロマリウスを信じてスウェルが真っ向から業魔へ向かう。
「ほうっ! いいねいいね! わかりやすいってのはいいこったぜえ!」
 ゲラゲラと笑いながらスウェルを待ち構える業魔。と、スウェルの真横を何かがするりと抜けて業魔を狙う。
「あん?」
「短剣はいかがでしょう?」
 投擲された短剣がエリアに入り、蛇刀が動く。それを好機とみたスウェルが更に踏み込み業魔に向けて刀を振るう。
「いざ!」
「おうおう、狙いは悪くねぇな。だが、こちとら二本持ちだぜ?」
 短剣を貪る蛇刀・表にかわり、蛇刀・裏がスウェルの一撃を弾き返す。
 ガラ空きになる胴体。業魔は容赦なくそこを殴りつける。
「ぐうっ!?」
 スウェルはうめき声を上げながらも何とか受身を取る。が、戦闘を続行することは叶わない。