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リアクション
【2】亡者
業魔との激戦が繰り広げられる。だが、それだけではなかった。
業魔の周辺にいる亡者の侍と忍者たち。彼らの相手を務める者もいる。
「一輝、右にいるぞ」
「そこだな」
素早い身のこなしで襲い掛かってくる忍者だが、その攻撃は天城 一輝(あまぎ・いっき)を捕らえることはない。
一輝はユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)からの適切な指示を聞き、速やかに行動、回避に努め忍者の攻撃を次々とかわす。
それだけではない。隠れようとする忍者に向けて、特別にペイント弾を射出するようにした機関銃で持って相手を撃つ。
闇に潜もうとする忍者のどてっ腹に目に痛いくらいのピンク色がでかでかと付着する。勿論、ただ擦っただけでは落ちもしない。こうなれば忍者もただの的だ。
「要人警護はまだ続いている。何せ学校を代表する人物が二人もいるんだからな」
「次は十時の方向だ」
一輝は次から次へと忍者というキャンパスにピンク色の花を咲かせていく。そのせいか、ここら周辺はピンク色に包まれるのではないかと、いう勢いだ。
「お前らに逃げ場はない。観念するんだな」
一輝の鋭い眼光は忍者たちを捕らえて離すことはなかった。
一方、亡者の侍に相対する侍、隠代 銀澄(おぬしろ・ぎすみ)も刀を振るい相手を斬り倒していく。
「樹龍院 白姫(きりゅうりん・しろひめ)に変わりこの銀澄がお相手仕ります! 刀の錆になりたい者から前に出なさい!」
威勢よく相手を挑発する銀澄。それに引っかかってかそうでないか、亡者の侍の刀が銀澄の首を掻っ切らんとする。
「踏み込み太刀筋全てが甘い……刀とは、こう振るうのですよ!」
敵の斬撃を紙一重でかわし、全体重を乗せて亡者の侍を横一閃。
胴体は真っ二つとなり、上半身はその場に崩れ落ちた。
「同じようになりたい方は、いるでしょうか?」
刀の刃先を向け、敵を睨みつける銀澄。まさに、『今宵の虎鉄は血に飢えている』といった状態だ。
「こうなると忍者もいい的だな」
ピンクの花を咲かせた忍者を見据える影月 銀(かげつき・しろがね)。その忍者に向けて極狭い限定的な範囲の重力を操作し攻撃。
攻撃された忍者はすぐに銀へと駆け寄り反撃を試みるが、遠すぎる。
忍者の足といえど速度には限界があり、銀との距離はその限界を超していた。故に攻撃は届かない、届くはずがない。
「必死なのはいいが、周りも確認したほうがいい」
銀は誰にも悟られないよう密かにしびれ粉を空気中に撒いていた。攻撃に必死になっていた亡者たちはそれを感知できない。
亡者とてしびれない訳ではなく、行動速度は確実に低下した。
「お見事です。続かさせて頂きます」
動きの鈍くなった敵の隙を好機とし一雫 悲哀(ひとしずく・ひあい)も戦闘に加わる。
近寄ってくる悲哀に対して迎撃態勢を取ろうとする亡者たちだが、動きの鈍さがそれを許しはしない。
「鈍い鈍い!」
加えて後方にいるカン陀多 酸塊による狙撃もあり、一切の余裕はなかった。
態勢が崩れたままの相手に深紅の番傘を横殴りに叩きつける悲哀。
痛烈な痛みに亡者が呻く。その後方から、ようやく態勢を整えた別の亡者が背後から斬りかかる。
「振り向かずとも、殺気があなたの居場所を教えてくれます」
言葉通り、悲哀は振り向かない。番傘をばさっと広げて敵の攻撃を受け止める。
「止まったら本当に的になっちゃうよー?」
足を止めてしまった相手によく狙いを付けて、キャノンを放つ酸塊。
反応も鈍く、動きも遅くなっている亡者がその攻撃を避けられるはずもない。為す術なく攻撃にその身を晒してしまい、行動不能になる。
「皆が引き付けてくれてる今なら……!」
天女の羽衣を着こなし、上空から攻撃の機会を伺っていたミシェル・ジェレシード(みしぇる・じぇれしーど)。
銀のしびれ粉による敵の鈍足化。更に悲哀たちの行動により亡者たちは翻弄され、上空への警戒は薄れていた。攻撃する絶好のチャンス、これをミシェルは逃さない。
「邪悪な人は還りなさい!」
翻弄される亡者たちの前に光が現れ、彼らを打ち払っていく。
ミシェルは自分の力が続く限り光を放ち、亡者に攻撃を続けていく。程なくして亡者も自分たちの身を焼く光がミシェルからの攻撃と悟るが、時既に遅し。
ミシェルの攻撃や、地上にいる銀や悲哀たちの攻撃に晒され、もはや業魔を護衛もできず、数で保っていたその優位を徐々に瓦解させていった。
これで業魔との戦いは邪魔されずに済むはず―――。