空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


【2】理由

 しかし業魔も剛の者にして強者。五人の攻撃の直撃を受けてもなお、倒れない。
「ぬぅう!?」
「がぁ!?」
 それどころか、ハイナと正子、他の三人を殴りつけ吹き飛ばす余力を有していた。
 まごうことなき、怪物。
「ハァ……ハァ……。やってくれるじゃ、ねぇか」
 確実にダメージは通っている――ように見える。しかし、契約者たちの猛攻を受けてなお倒れない業魔。天晴れという他ない。
 その上、業魔は心の底から楽しそうに笑う。
「ああ、いいぜ。いいぜ、お前らぁ。……これでこそ俺様の仲間に相応しい」
「……仲間、だと?」
 業魔の口から仲間などと似合わぬ言葉が漏れ出したのを聞き、正子が怪訝な顔をする。
「お前らだって、気にくわねぇはずさ。あの光条世界とかいう、奴らはよお」
「……よもや、おぬしらソウルアベレイターは光条世界と戦う、そう言うのか?」
 問いかける正子。問いかけられた業魔は、一度呼吸を整えてから、喋り始める。
「ああ。うちの大ボスがそろそろおっぱじめるって言うからな。そのために、強そうな奴を色々と見繕って……」
「待つでありんす。……ぬしが大ボスではない、と言うことかや?」
「そうだ」
 きっぱりと言い放つ業魔。どうやら、業魔のようなソウルアベレイターたちを率いている者がいるらしい。
「まあ俺のように、アベレイター以外の奴を仲間にしようと考えてる奴ぁ少ないだろうが。俺だって強い奴と戦うついでにやってるしな」
「しかし、貴様らはこの戴冠式に現れ、どのような形にせよそれを邪魔した。光条世界の邪魔をするのであれば、本気でクイーンたちを狙えたはずではないのか?」
 正子の言う通りではある。が――
「俺たちも光条世界も、互いが相手をぶっ潰す機を窺っている。それが、今ではなかった、ということよ。それに、この程度の危機を乗り越えられなきゃ、仲間になんざ相応しくないからな。今のところは順調のようだけどよ」
 先ほどの手痛いダメージもなんのその、業魔は普通に喋り続ける。決して効いていないわけではないのだが……このタフさも、アベレイターの恐ろしさの一つだろうか。
「何にせよだ。力ある奴は俺たちソウルアベレイターと共に戦う覚悟を決めておきな。そろそろおっぱじまるんだからよ」
「上からでありんすな……」
「こういう物言いしかできねぇんだ、悪く思うな。それに俺たちと光条世界が真っ向からぶつかり合えば何もかんも巻き込んで、破壊し尽くす。長引けば長引くほど、範囲は広がる。地球だって消滅しちまうかもな、ッハッハッハ!」
 ゲラゲラと笑っているがまったく笑い事ではない。地球がなくなれば如何に契約者と言えど生きてはいけないのだから。
「何故、わしらに協力を求める? ソウルアベレイターだけでは、光条世界には敵わぬということの裏返しか?」
 正子が一番気になることを業魔に尋ねる。どうして自分たちを仲間にしようとするのか、その理由がイマイチわからない。
「さあな、やってみなきゃわからん。だが、お前たちだって俺たちと光条世界の両方を相手取るなんてやりたくねぇだろう? ならどっちかについた方が戦いの時間も短くなって、地球も大助かりってな。俺たちは何も地球を破壊したいわけじゃねぇ。あちらさんはどうだから知らねぇが」
「……成る程。早期解決のため、仲間になろうと言うことでありんすか」
「んだがまぁ、そいつは建前。もっと重要なことがある」
 業魔の顔つきが変わった途端、ただならぬ雰囲気があたりに漂い、誰も喋ることができなくなる。
 静寂。
 しかし、その静寂を正子が破った。
「……その本音、とは?」
 神妙な顔つきで尋ねる正子に対して、業魔も神妙な顔つきで―――。
「……余裕面してる光条世界の連中が、俺たちとお前たちに叩きのめされ、慌てふためくところを拝む、なあ? さいっこうに痛快だろ? ……くく、はーっはっはっはっはっは!」
 大口を開けて、豪快に笑い飛ばす業魔。しばしの間正子もハイナもきょとんとしていたが、程なくしてその頬を緩ませる。
「剛毅な者よ」
「けど確かに、魅力的な提案でありんすな。私も見たいものやえ」
「まあ、そんなところだ。さて、俺は帰るとするか」
 業魔が激闘の地を後にしようとする。が、一度立ち止まって正子とハイナたちの方へ振り向く。
「ああ、一つ忠告しておいてやる。仲間探しは俺の独断でやってることだ。他の奴がどう思ってるかは知らん。これからどうなるかも、な……んじゃな、あばよ」
 含みのある忠告を最後に業魔は姿を消した。
 ソウルアベレイターを率いるボスとは一体。
 更に業魔が言う、ソウルアベレイターとの協力
 シャンバラは今、その選択を下す時に立たされているのかも知れない――――――。