空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


【2】破壊

「大層活きがいいなぁ! こっちもご機嫌だぜ?」
 業魔が生き生きとして戦いを楽しむ。
「ならば武器を捨ててみるのはどうだ?」
 業魔に目をつけられたうちの一人、鑑 鏨(かがみ・たがね)が業魔に武器を捨てたらどうか、そう問いかける。
「はっ! 武器捨てて欲しけりゃ行動で示すんだな!!」
 無論、業魔が武器を捨てることはない。鏨に真っ向から近寄り、力任せに腕を振るう。
 殺人的な威力を予感させる一振りをギリギリで避けて、蛇刀・裏を狙い打つ。
「悪いがこいつはそう簡単に壊れるもんじゃねぇぜ?」
「承知の上だ。爽麻!」
「てやぁー!」
 硯 爽麻(すずり・そうま)が跳躍し、業魔の頭上を押さえ、長刀「七尺」を振り下ろす。
 常人では目で追うのもやっとの速度に、業魔の持つ蛇刀は対応する。
「なげぇ刀だな、だがそれだけじゃ、なあ!!」
「!?」
 鍔迫り合いも数秒、業魔の腕が隆起する。そのまま力任せに長刀ごと爽麻の身を弾き飛ばした。
「まだですっ!」
 くるりと一回転してから着地し、浴衣を翻して再度業魔に向かう。鍛えこまれた剣技、リーチがある長刀。
 更に尖翼による追撃でもって手数で業魔に襲い掛かる。十分な脅威。だが、それすらも蛇刀は捕らえ、喰らい、弾き返す。
「それで終わりなら、今度はこっちから」
「爽麻、合わせろ!」
 鏨と爽麻が特技を構える。一呼吸置いて、二刀の白刃が鞘を奔り抜き放たれる。速い抜刀。だが、蛇刀は当然の如く反応する。
 それがいけなかった。
 特技の全力の二連撃。その威力は計り知れない。
「!? 裏が……壊れるだとっ!」
 斬撃により近い蛇刀・裏がその攻撃を受けて、砕け散る。
「このまま一気に……!」
「……くそっ」
 業魔が腰の小太刀を抜く。自分に襲い掛からんとする剣圧に向けて、その場を動かない。
 そして、剣圧はかき消される。いや、斬れた、と言うべきだろうか。
「なにっ!?」
 鏨と爽麻が距離を取る。只ならぬ刀の気配に引かざるを得なかった。
「戦いの中でこいつを抜くのは久々だぜ……見事見事ってな」
 右には蛇刀、左には謎の小太刀を握る。しかし業魔の顔は面白くなさそうだ。
 まるで、こんなもの抜くんじゃなかった、というかのように。
「また新しい刀かよ、武器収集マニアなのか?」
 ゆっくりと、ゆっくりと歩き、その姿を現したのは白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)
 その目には、明確な殺意が秘められている。
「おい、他の奴に邪魔させんじゃねぇぞ?」
「わかってるって。さてさて、そういうことだからここから先は通れませんよっと」
 松岡 徹雄(まつおか・てつお)が亡者たちに振り返る。先の戦闘でボロボロになってはいるが、さすがは亡者。戦意喪失などしないようで、人形のように戦い続けていた。
「もうしびれてるみたいだから、ぱぱっとお掃除させてもらうよ〜?」
 瞬間、亡者たちの視界から徹雄の姿が消える。と思えばすぐ横にいて、自分たちに斬りかかっている。
 彼らは、自分が斬られる事しか認識できなかった。
「魔障覆滅、お掃除完了ってねぇ」
 瞬く間に近くにいた亡者を屍に変える。
「さぁて、それじゃ一つブチ殺しあおうとしようぜ……業魔ァ!!」
 体からどす黒い霧みたいなものを放出しながら竜造が駆ける。潜在能力を解放し、神の如きスピードで業魔に詰め寄る。
「こいつが欲しいんだろ? オラァ!」
 愛剣、斬撃天帝をぶっきらぼうに業魔へ走らせる。当然蛇刀が喰らいつく。
 それが竜造の狙い。彼は片手を離し刀での攻撃を放棄、己の闘気を拳に乗せて業魔を殴りつける。
 その身には既に、一つの町を破壊することも可能なほどの力を有していた。
「オラオラオラァ!! もう負けを認めんのかよ!」
「……はっはっは! いいねえ、この感じ! たまらねぇぜ!!」
 荒れ狂う闘気、殺意。それを見せつけられた魔王 ベリアル(まおう・べりある)も動き出す。
「いいないいなぁ。僕もその遊びに混ぜてよっ!!」
 ベリアルは既に魔力・潜在解放を行い、パートナーである中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)の精気を喰らい尽くし、第三形態へと移行していた。
 竜造と業魔が放つ殺気にも怖気づかず、喜々としてそこへ飛び込む。
「二人とも、僕とも遊んでよ!!」
「アア!? ガキはすっこんでろ!」
「あー! 仲間はずれ? そーいうのよくないんだよー!」
 仲間同士、なのだが竜造もベリアルもそんなことは気にしちゃいないようだ。