空京

校長室

終焉の絆

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終焉の絆
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イコン防衛戦 2

「敵さん、中々来ないもんだな」
「そうですね。EN、残弾は共に80%。補給はまだ必要ないですが……念の為、僚機に任せて補給を行いますか?」
 土佐の直掩を行っていた閃電、その搭乗者は岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)山口 順子(やまぐち・じゅんこ)
 テメレーア、土佐、マサチューセッツによる支援砲撃や、それより前に展開している味方イコン部隊の働きにより、土佐に攻めてくる敵イコンはいなかった。
 しかし、事態は急変。閃電のレーダーが敵イコンの反応をキャッチ。
「敵イコン来ます! 左右からの挟撃です!」
「大きく回りこんできたか! 片方は土佐についている僚機2機に任せて、もう一方は俺たちが叩く!」
 閃電が僚機2機を引き連れて接近してくるセラフィム級と見られるイコンを捕捉。
 僚機2機に左右へ牽制射撃を行わせ、動きを抑制しながらバスターライフルで撃ち落そうとする閃電。
 しかし敵の機動力は侮れず、着実に損傷は負わせていくものの撃墜までには至らない。
「もう一方の敵イコンもセラフィム機と判明。土佐の僚機から支援要請が来ています!」
「了解っ!」
 兵装をウィッチクラフトライフルに持ち替え、動きの鈍った敵を狙撃。
 狙い済ました一撃は敵のスラスター部分へと着弾し、盛大な爆発を引き起こした。
 それから閃電は転進、支援要請を出している僚機2機の援護に向かう。
 既に一機は撃墜され、もう一機も中破している。
「くそっ、僚機2機は支援! 同じ手でもう一度っ」
「土佐僚機、もう持ちません!」
「っ!」
 伸宏がスラスターを思い切り吹かして敵イコンと土佐の僚機の元へ急速接近する。
 土佐僚機を真っ二つにせんとするセラフィム機の一撃を新式ビームサーベルで受け止める。
「ぐああっ……ちぃと無茶だったか」
 セラフィム機の攻撃に損傷を追う閃電。
 だが、その間に全僚機がアサルトライフルの弾丸を敵へと撃ち込み、これを撃破する。
「損傷軽微。残弾、ENは残り50%程、まだいけます」
「了解。土佐の僚機、先に修理に行ってくれ。その間は俺たちが踏ん張っとくから」
 そう言われた土佐の僚機は土佐のイコンデッキへと向かった。

『そのままこちらへ降りてください』
 土佐のオペレーター席を借りた天城 千歳(あまぎ・ちとせ)が修理に来たイコンを誘導する。
『デッキにいる整備分隊の指示に従ってくださいね』
 スムーズに誘導を終えた千歳は敵の索敵を行う。
 一方、イコンデッキには整備班と共にいる大田川 龍一(おおたがわ・りゅういち)の姿があった。
「……黄色と言ったところか、今は落ち着いているし直に修理に取り掛かるとしよう」
 龍一の言葉に整備班たちも頷き、素早くイコンを点検。何が足りないのか、パーツは代えるべきなのかを見定め、迅速に修理を行っていく。
「しかし、作業員の数が多いと仕事が楽だなぁ……ウチの艦も人手を増やすべきか」
 土佐の人員の多さ、その仕事効率の良さを実感し今度から自分の艦の人手も増やすことを検討しつつ、修理の手は止めない龍一だった。

 ドワーフの坑道周辺をフリムファクシに乗って少女がいないか確認しながら、安全の確保に努める沢渡 真言(さわたり・まこと)
 近くにはギフトである猫型機晶生命体が箒に変形した乗り物、キャットアヴァターラ・ブルームに乗っているマーリン・アンブロジウス(まーりん・あんぶろじうす)の姿もある。
 万一、光の少女が坑道から一人で出てくることを考え周辺を飛び回っていた。
「しかし、他の皆さんたちが少女を見つけたようですね」
「みたいだな。どうする? 戻ってイコンの相手でもするか?」
「念の為、このまま坑道周辺を飛び回っていましょう。護送する過程で少女一人だけを逃がすことも考えられます」
「万一に備えるのが今回の俺たちの役目みたいだな」
 そう言いながら、少女が無事に契約者たちと共に坑道から出てきてくれることを祈る二人だった。

 契約者たちが使用した坑道の出入り口にはソプラノ・リリコが立っていた。
 搭乗者であるロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)は周囲への警戒を怠らない。
 今の所、進入してこようとする教徒たちはいない。そのため敵イコンの攻撃による出入り口の破壊がないよう、空への警戒を強めるロレンツォ。
「ここはもう通さないのコトね。仲間たちが戻るか、防御が不要になるまで、このロレンツォが守るアルよ!」
「とか言って戻ってきた仲間を敵と勘違いしたりしないでよね」
「……そんなこと絶対ないネ!」
「今の間は何よ今の間は!」
 軽快なやりとりを行う二人。程なくして、アリアンナがため息を漏らす。
「ほんと、イコンの修理費用だってバカになんないんだから」
「大丈夫ネ! ミーの操縦技術、モンダイナイ!」

ガンッ!

 ソプラノ・リリコの振り上げた右腕が坑道入り口の壁とぶつかる。当然、塗装も剥がれる。
「わざとなの!? 修理代どうするのよー!」
「ぎ、犠牲はつきものネ……」
「なんの犠牲よ!」
 残念ながら、ソプラノ・リリコの塗装代は今回もかさむ様だ。