空京

校長室

終焉の絆

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終焉の絆
終焉の絆 終焉の絆

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脱出大作戦 開始

「これでルートは決まったね」
 アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)がそう言うと、各校長たちもそれに頷く。
「皆、どうか無事でね」
 桜井 静香(さくらい・しずか)の言葉に、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)が返事をする。
「当然ですぅ。私が最初に出口へと向かうですぅ!」
「おや、これは負けていられないな。華麗な脱出を成功させ、かつ一番乗りといこうか」
「それじゃまた、外で合流しましょう」
 別れの挨拶の最中、グランツ教徒たちが流れ込んでくる。狙いはカケラ、次いで契約者たち。
「あらら。欲張りな狙いだね? 二兎を追う者は一兎も得ないで怪我だけして帰るといいさ!」
 テディがサクロサンクトを発動させ、流れ込んできた教徒たちに相対しこの場を守るとして敵の迎撃に入り、他契約者たちの脱出時間を稼ぐ。
「ちっ邪魔なやつ―――」
 息を殺して忍んでいたクルセイダーが言葉を失った。
 そんなことは露知らずテディが暴れている隙に、脱出を試みる契約者たちが各ルートへと散っていった。
「……どうする」
「追うしかあるまい。全ての方向に散らばり追跡を開始するぞ」
 そう言って散らばって逃げていった契約者たち全てを追跡するクルセイダーたち。

 テディと同じようにして教徒たちへ攻撃を始める者がいた。
「カケラは俺が守る! そして目立つ! 俺はヒーロー! 俺がヒーロー! ヒャッハー! ヒャッハー! ヒャッーハーッ!」
 廃れた荒野を彷彿とさせる叫び声を上げながら、マイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)が魔法的力場を応用し、高速で動き続ける。
 マイトのパートナーマナ・オーバーウェルム(まな・おーばーうぇるむ)も同じくバーストダッシュを使用して、マイトの後ろをぴったりとついていき、フォローできるよう備えていた。
「ったく、マイト〜? 目立ちたいのは分かるんだけど、もう少しゆっくりいこうよ〜?」
 と、言いつつおにぎりをぱくつくマナ。
 派手に目立ちながら教徒を引き付けていくマイトたち、しかし引き付けたのは敵だけではない。
「おっ、マイトもいたんだ? ちょっと悪目立ちしすぎじゃない?」
「ん? 芦原、お前もきてたのか。だが今はそれどこじゃねぇ! ヒーロータイム中だからな!」
「なにそれ……じゃあ私もヒロインタイムに移行しちゃうよ!」
 マイトの話を聞いた芦原 郁乃(あはら・いくの)も敵を引き付けることに専念する。
 ニンジャ特有の素早い身のこなしを駆使して、手を伸ばしてくる教徒たちからひらりひらりと逃げていく。
「へへ〜ん! 捕まえられるものならやってみろ。ほらほら、鬼さんこっちらぁ〜〜」
「郁乃様、油断は禁物ですよ」
 楽しそうに逃げ回る郁乃に、空飛ぶ箒スパロウに乗りながら注意をする秋月 桃花(あきづき・とうか)
 坑道内は狭いが、ここの空間はそれなりに広く、更にスパロウの小回りの利きやすさも手伝って問題なく空を飛ぶことができていた。
 それを存分に活用して、教徒の魔の手から逃げつつ、時には低空飛行で敵の真横を颯爽と横切りつつ翻弄していく桃花。
「おお! 負けてらんねぇぜ! 我が相棒、ドラちゃんよ! 奴等目掛けて火をふけぇええい!」
 そう言ってペットのドラゴンに火を噴かせるマイト。
 その背後は多少の隙はあるが、それをカバーするマナがいるため何の問題もない。
「皆、派手にやるものだね。まあ、それもいいかな」
 校長の中で唯一ここに残ったアイリスがさっと前髪をかきあげる。
 隙だらけに見えるアイリスへと、透明な殺意、クルセイダーが襲い掛かる。
「攻撃に移る時の殺意、どうせならばそれも隠せるといいね。……君が下手なだけかな?」
 クルセイダーの僅かな殺意を感じ取ったアイリスは透明な刃を避け、ジョワユーズを振りかざしてクルセイダーを斬り捨てる。
 アイリスが確かな手応えを感じた後、透明だったクルセイダーが本来の姿を現した。
 だがまだやられたわけではない。一旦アイリスから距離を取ろうと、俊敏に後退行動を実行しようとするクルセイダー。
 だが、アイリスが律儀にそれを待つわけはない。追撃の一撃を穿つと、今度こそクルセイダーは動かなくなった。
「……どうやら、強化スーツか何かを身につけているようだな。……攻撃することで透明化は解除されたし、透明な刃も見えるように……っ!」
 分析を行っていたアイリスは殺気を感じ取り、振り向きざまにジョワユーズを振るう。
 案の定別のクルセイダーが背後から襲い掛かってきていた。しかし、この敵は透明にはなっていない。
「……敵によりけり、透明になっている者、そうでない者がいるということか。殺気も、先ほどより感じなかったし、ね」
 ゆっくりと立ち上り、アイリスが武器を構える。
(気をつけてくれたまえよ……皆……)