空京

校長室

終焉の絆

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終焉の絆
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脱出大作戦 タネ明かし

……
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「が、はっ」
「まんまと引っかかってくれたわね? まあ、遅すぎるけどね?」
 クルセイダーに殺されそになったカケラ?が、襲い掛かってきたクルセイダーの腹部へと強烈な蹴りを撃ちこむ。
 更に煙幕が消えないうちにカケラ?が分身の術を使用する。
 するとどうか。カケラ?が三人増えて、四人になる。そんな光景をいきなり見ることになるクルセイダー。
「一体、どうなっているんだ……!」
「あなたたちの探している少女が増えたってことですよ!」
 それまで息を潜めていた桜月 綾乃(さくらづき・あやの)が現れ、敵へとファイアストームを見舞う。
 狼狽する敵たちは辛うじてこの攻撃をかわすが、まだ綾乃の攻撃は終わっていない。
「今度はホワイトアウトです!」
 綾乃が続けて猛吹雪を巻き起こし、敵への攻撃と同時に視界を遮る。
 しかし、クルセイダーも最早迷っている暇はないと覚悟を決めて、逆にこの視界の悪さを利用してカケラを片っ端から始末することにした。
「これか!」
 一人目のクルセイダーがカケラ?を攻撃するが、それは分身。
「残念ね。それじゃおやすみなさい!」
 延髄へと蹴りを入れられたクルセイダーの意識は瞬く間に刈り取られた。
 残るクルセイダーは一人。ホワイトアウトした世界でがむしゃらになりながらカケラを探す。
 が、その途中でクルセイダーの意識はなくなる。
 股間に、激痛を感じて。
「バトルハイヒールのお味はいかが? これは、女の子に手を上げた報いよ!」
 ホワイトアウトが晴れていくと、そこにはもうカケラの姿はいなかった。
 代わりに、魅惑の脚が特徴的な桜月 舞香(さくらづき・まいか)の姿があった。

「出口ですぅ!」
 エリザベートたちも無事に外へとたどり着くことに成功する。
 後から追ってきた玄秀やティアンも合流する。
 するとカケラが導きの小鳥をティアンへと返す。
「騙してごめんなさいね」
「……いいや、謝るのは俺のほうさ」
「えっ?」
 カケラの口調、ではない。それもそのはずだ。
「オレの名前は、瀬島 壮太(せじま・そうた)。ちょいと化かさせてもらったぜ」
 カケラの姿から一変、男性の姿へと変貌を遂げる壮太。これが本来の姿なのだろう。
「ブラックコート、サンキュな」
「いいよいいよ。それにしても思い切ったね? 女装はもうしないって言ってたのにさ〜!」
 ミミ・マリー(みみ・まりー)が壮太からコートを返してもらいながらそう茶化す。
「女装じゃない、変装だ」
「はいはい、変装ね、変装」
「……本物は?」
「さあ、今頃は別のところから外に出てるんじゃないか? オレは囮だからな、そこまではわからねぇよ」
 壮太もまた囮の一人だったということ。
 これにはティアンも、他の契約者たちも驚きを隠せなかった。

「ん、なんか騒々しいな」
「ようやく来たんじゃない?」
 のんびりとコタツに入りながら久途 侘助(くず・わびすけ)芥 未実(あくた・みみ)がそう言う。
 彼らは脱出作戦の情報を聞きつけて、そのルートの一つである出口のところでコタツを置いて、待機していた。
「……あれが光の少女、カケラといったか」
「うわぁ本当にアイシャ様に似てるねぇ」
 のんびりとこたつに入った二人が見ていると、カケラが走りこんできて、そのままこたつへ入った。
「はぁ、温かいですね」
「躊躇なく入ってきたな」
「ゆっくりしておいきーそのまま寝てていいんだよー」
 優しく喋りかける侘助と未実だが、カケラはすくっと立ち上がると追ってくる契約者とその後方のグランツ教徒たちを見据えた。
「おいおい、追手は俺たちや契約者で片付けるから、お前は下がって」
「そうです。だから、私も戦うんですよ」
 そう言うカケラ。いいや、最早カケラではない。
 その姿は、シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)とユニオンした牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)だった。
「分身も倒され、ハーフダースはカンバン。……やれやれ、帰ってスイーツ食べたいのに、めんどうだなぁ……」
 そう言いながら、攻撃態勢を整える。
 契約者が外へと到着後、流れ出てこようとする教徒たちやクルセイダーの群れの大きさを見て、レギオン・オブ・ドラゴンを発動する。
 敵目標に対してベストな攻撃範囲を指定したアルコリアの一撃は効果絶大という一言に尽き、遂に洞窟から這い出てくる敵はいなかった。
「イコンがいなかったことを悔いるんですね」
「……ふむ。終わってしまったようだな」
 複数いたカケラの正体。それは変装(と分身の術)を駆使した、舞香、壮太、アルコリアの三名だった。このことは校長やパートナーくらいしか知らされていない。
 これは、分断した隙を狙ってくるよからぬ考えを企てる契約者を警戒してのこと。
 敵を騙すからにはまず味方から。
 では本物はどこか。それは―――。

「よし、外に着いたぞ! オープンザマント!」
『い、いろんな意味で……あの、すごかったです……。感触……が……。そして、こうゆう酷い展開が懐かしい感覚で複雑な気分〜』
 本物のカケラは変熊のマントの中に隠れていた。当然、変熊は全裸である。いや全裸なのもおかしいのだが事実そうなのだ。
 囮のメンバーには姿を晒してもらい、本物の姿はマントの中へと隠す。
 見事作戦は成功し、カケラを外へと連れ出すことに成功する。カケラは、なんだか複雑な表情で半泣きだったが。いや、無理もない。
『オ? ……オー! よくここまできたネ! お疲れヨ!』
 契約者たちが入っていた坑道の入り口を守っていたロレンツォがカケラたちに労いの言葉をかける。
 しかし、続けざまのアリアンナの声は穏やかなものではなかった。
『……仲間から伝達! 金色のイコンが多数のセラフィム機を従えてこっちに近づいてるって! 一旦坑道の中で待機していて!』
 アリアンナに言われるがまま、再度坑道内の出入り口付近へと移動し身を潜ませるカケラと契約者たち。
 金色のイコン。当然、それに乗っているのはエレクトロンボルトだろう。