校長室
終焉の絆
リアクション公開中!
脱出大作戦 Bルート 「なんてバカ広い坑道なんですかぁ……! いっそぶっ壊してやりましょうかぁ!?」 エリザベートがかんしゃくを起こしていた。 「ま、まあまあ校長先生、落ち着いてください」 息切れしながら切れているエリザベートをなだめるエセル・ヘイリー(えせる・へいりー)。 エリザベートなら本当に坑道を破壊しかねないので、とても重要な役割だ。 「そういえば、レナン。先ほどから道中に何を仕掛けているのですか?」 「簡単即席で作れる罠だ。この狭さと暗がりなら多少目立っても気付かれにくいし、気付かれてもちょっとした足止めにはなるだろう」 エセルに尋ねられたレナン・アロワード(れなん・あろわーど)がそう答える。 「ほう、さすが我が校の生徒、気が利くですねぇ」 「どうも。……だが余裕ですり抜けてくる奴もいるだろうな。そいつらが一番厄介だ」 レナンが危惧しているのはクルセイダーの存在だろう。 そしてその予感は的中する。 「皆さん、敵が来ました」 禁猟区による保護結界を形成していたクナイ・アヤシ(くない・あやし)が何かを感じ取る。 「……姿、見えないねぇ。面倒は嫌いなのに、厄介だよ」 清泉 北都(いずみ・ほくと)がそう呟く。存在は感知できたものの、どこに敵がいるのかまではわからない。近づいてきているということだけは確かだが。 「見えないんじゃスキルも使えないし、とりあえず弓でも射ちながら後退しようかなぁ」 「では北都を上をお願いします。私は風術で下を」 そう言いつつ、後退しながら攻撃を行っていく北都とクナイ。その攻撃に合わせて亜城 奏(あしろ・かな)とディミィ・リスクス(でぃみぃ・りすくす)も加勢をする。 「が、頑張ってください!」 エセルが戦う者たちへパワーブレスをかけ、有事に備えてヒールする準備を整える。後方ではレナンが敵の奇襲を警戒。 クルセイダーは透明でどこにいるかは分からないがまだ攻撃はしてきていない。距離が離れているからだろう。 「……ならやってみるのもありだよねぇ。そうだ、エリザベート校長も手伝ってよ。むしゃくしゃ止まるかも」 「……いいですよぉ? 容赦は、しませんけどねぇ!」 弓での攻撃をやめた北都がエリザベートへ呼びかけると、エリザベートも北都の思惑に気付き魔法の準備をする。 右の壁にあらゆる動物の力を借りて放たれた拳を炸裂させる北都。その衝撃に耐えられない廃坑道は豪快な音を立てて一部陥落する。 同時にエリザベートが陥落した周辺上部に天の炎を具現させ、グランツ教徒たちを焼き払う。 この連携攻撃により炎の壁と陥落した土砂が敵の脚を止める。 「やってやりましたですよぉ! それじゃこのまま優雅に先へと……」 「いたぞ! 奴等だ!」 だが運の悪いことに前方から別の教徒たちがやってくる。その中には高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)とティアン・メイ(てぃあん・めい)の姿もあった。 「ぐぬぬ、しつこいやつらですねぇ……!」 「悪いね。ここで足止めさせてもらいますよ」 玄秀がそう言う。炎もいつまでも燃えているわけではないし、崩れた土砂も十分にどかして先に進める量しか崩れていない。 このまま足止めをされれば挟み撃ちに遭うのは必然。 「分断があればこそ、よくやったぞ、玄秀」 「お褒めに預かり光栄です。さあ、行きなさい」 「? 何を言っている、お前が今足止めするといったではない―――」 ザシュ。 突如、玄秀が話していた教徒を斬りつけた。深い一撃、確実に絶命していることだろう。 「な、なにを―――」 「『足止めする』対象は『グランツ教徒』、『行きなさい』と話しかけたのは『契約者たち』。勘違いしないでもらいたいですね」 玄秀の言葉。それはグランツ教徒を、裏切るということに違いなかった。 「ぐあああ!」 玄秀に合わせる様にしてティアンも教徒たちへ攻撃を開始、 「シュウ……本当に、ありがとう……! 今日の私は、一味違うわ!」 本来、玄秀たちはグランツ教から依頼を受けていたのだが、ティアンの必死な説得により光の少女を助けることにした。 だが依頼は受けたことにして内部からグランツ教徒を動かし、巧みにその行動を操っていた。 「さあ、二度言わせないで欲しい。行って下さい」 玄秀の行動に感謝しつつエリザベートたちは出口へと走る。 「己ぇ……小僧……!」 負の感情が、教徒たちに芽吹いていく。 更にそれを煽るために、先ほど絶命させた教徒をフールパペットで操る玄秀。 「仲間の亡骸を……弄ぶんじゃない!」 「おおこわいこわい。……ですがそれが命取りですよ」 考えもなしに玄秀へと襲いかかる教徒たちだが、 その負の感情を利用した玄秀のエンヴィファイアの前になす術無く倒れていった。 「んじゃ仕上げですっと。出入り口はすぐそこですからね」 ドーン! 機晶爆弾を坑道内に設置し、破壊工作を行い更に落盤。これでは追いついてこられないだろう。 「まあ、今回はご縁がなかったということで」 「……あの小鳥が、彼女の導きになればいいのだけれど」 玄秀の力を借りて出入り口目前までたどり着いたエリザベートたち。 『……これ、返さないとな』 ティアンから借りた導きの小鳥を肩に乗せた、カケラがそう呟いた。