空京

校長室

終焉の絆

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終焉の絆
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脱出大作戦 Dルート

「皆、無事かしら」
 ジークリンデが坑道を逃げながらそう呟く。
 それを追うのは、クルセイダー一人とグランツ教徒数人。
 追われている中では一番追手の人数が少ない。
 それもそのはず、光の少女の姿は見当たらないでいた。ただ、変装しているつもりであろう人物はいたが。
「さぁ逃げるにゃ!」
 にゃんくま 仮面(にゃんくま・かめん)はアイシャのヘアバンドを使用してアイシャそっくりのカケラに変装したつもりでいた。
「むっ、まずいぞ! 語尾ににゃはまずい! バレてしまう可能性がある!」
 変熊 仮面(へんくま・かめん)がにゃんくまの不完全な変装に突っ込む。
 ……突っ込むべきはそこだけではないし、変熊にも突っ込むべき点は多々あるのだが。
「くそ、なめやがって! 乱戦の時はわからなかったが、もう騙されないぞ!」
 一瞬でも騙された教徒たちは騙されたことに逆上し、契約者へと襲い掛かる。
「はいはいそれ以上近づかないでくださいねぇ」
 息の荒くなった敵相手に、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)がしびれ粉をバラまく。
 狭い坑道内に瞬く間にしびれ粉が充満、教徒たちの動きを鈍足化させる。
 その後方はミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が守りを固めている。
 相手の動きが鈍いうちに攻撃をしかけるものはおらず、全ての契約者が全速で前進、その場から逃げ出す。
「逃がすか、追え追え!」
「……やれやれ」
 健在な教徒たちががむしゃらに突っ込むのを、渋々とした顔で見ながら仕方なくついていくクルセイダー。
「さる、前方はどうじゃ?」
「特に、害意はないみたいです。入ってきた道を戻るから、一番危ないと思いましたけど……」
「誰かが守ってくれているのか……何にせよよかったんじゃないか」
 本能寺 揚羽(ほんのうじ・あげは)がそう尋ねる。
 ディテクトエビルで自分たちに害をなそうとしている存在の探知に気を払っていた姫宮 みこと(ひめみや・みこと)は、前からは何もないことを確認しそう伝えた。
「それじゃあやっぱり、一番の問題は見えない敵がいるかもしれないってことか」
「そのようだね」
 みことの言葉を聞いていた千返 かつみ(ちがえ・かつみ)エドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)も現状を把握する。
 教徒たちの強さは言うまでもなく大した問題ではない。
 問題なのは透明のまま、気配を殺し近づくクルセイダーである。
 彼らは今まで確認された以上の技術と装備を身に着けている。そのため、現在も契約者はその存在を確認できてはいない。
 と、教徒たちが持てる限りの速さ、その限界を超えてジークリンデたちへと差し迫る。
「しつこい連中じゃのう!」
 追いつかれそうになる寸前、揚羽が自分の武器を構えて敵へと向ける。
 構わず教徒たちは揚羽へと攻撃するも、見事に受けきられる。そのまま蹴り飛ばされ、ごろごろと転がっていく。
「……他人に勝手に決め付けられて、はいそうですかって、受け入れるわけないだろう」
「かつみ、あまり熱くならないで」
 そう言いながら二人も攻撃をする。
 かつみは毒虫の群れを発動させ、向ってくる教徒たちを猛毒にする。
 更にエドゥアルトがダメ押しの一撃、天から稲妻を落として敵を撃つ。
 みことたちやかつみたちが攻撃に専念してる間はミスティや周防 春太(すおう・はるた)シボラ 出血熱(しぼら・しゅっけつねつ)が後方を警戒。
 と、みことが叫ぶ。
「来ます! 特に強いのが一つ、上からです!」
 クルセイダーの存在を感知したみことだが、クルセイダーはそれより速い。最も前を行くジークリンデと変熊へと忍び寄り、背後から攻撃する。
「ぐ、あっ……」
 攻撃されたのはジークリンデ。とっさに盾を構えたがクルセイダーはそれをするりと抜けて、チェインメイルの装甲と装甲の間に透明な刃を突き立てる。
 刃は深々と刺さると、激痛がジークリンデを襲い苦悶の表情を浮かべる。……誰が言うまでもなく、瀕死だ。
「貴様ァ! 穴があったら、入りたいっ!」
 変熊が叫ぶ。後半の意味はまったくわからないが。
「……いや、入れたいかな? 中々いい体とみた」
 更に何を申しているのかわからないが、クルセイダーは直感した。
 ここにいるのは、まずい、と。
「……対象もいない、いるのは逃走者と変態と怪我を負った者のみ。気にすることもあるまい」
 そう言い残してクルセイダーは教徒たちを見捨てて別の場所へと合流すべく、去っていった。
 残された教徒たちだけではどうすることもできず、早々に契約者たちに返り討ちにされてしまった。
「今、助けます!」
 瀕死のジークリンデにミスティが駆け寄り、命の息吹を掛けると、ジークリンデはどうにか一命を取り留めた。
 仮に敵の数が多かったり、命の息吹がなければここでジークリンデは亡き者になっていたかもしれない。
「……だが、これで危機は逃れたな」
「これもボクの完璧な変装のおかげだにゃ!」
 と、にゃんくまが言う。
 ここまで四つのルートにはそれぞれカケラの姿があった。一体どういうことなのか。
「本当に、便利なものですね……。変装、というのは」
 ジークリンデがそう呟いた。