空京

校長室

終焉の絆

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終焉の絆
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ドワーフ廃坑道に潜む光と闇 4

 セフィーたちや優希たちから寄せられた情報は坑道内にいる契約者や校長たちへと通達された。
「透明な敵、か……ちょっと反則くさいかも」
 捜索に参加していた校長の一人である桜井 静香(さくらい・しずか)がそう呟く。無理はない。
 見えない敵が、この狭い坑道内にいる。それがいかに厄介で、払いのけるのが難しいことか、想像に難くないだろう。
「安心して! あたしたちがいますから!」
「御身、必ずや守りますよ」
 静香の前に立ち、前方の警戒を怠らないマリカ・ヘーシンク(まりか・へーしんく)ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)
 また静香の右横にはメリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)、後方にはテレサ・カーライル(てれさ・かーらいる)が守りを固めていた。
「ところで、桜井校長は少女を見つけたら、何かお話したいことはあるのですか?」
 ロザリンドの言葉に静香はしばらく考えた後、少し目を伏せがちに答えた。
「話しもしたいけど……まずはこの薄暗い坑道から外へと出してあげたい、かな?」
「なるほど。では、そうできるように私たちも尽力しますね」
 静香を厳重に警護しながら、少女の姿を探していく。
 だが見つけたのは少女ではなく、グランツ教徒。……敵は教徒たちだけではないことが判明している。油断はできない。
「私は、マリカさんと教徒たちを無力化します。メリッサは透明な敵への警戒を最優先にお願いします」
「テレサも後方からフォローお願いねっ」
 ロザリンドとマリカの言葉にメリッサとテレサが頷く。
 中央で守られている静香も最低限自分の身を守れるよう、また誰かが怪我をした時に直に治療できるよう身構える。
 その動きに気付いてか教徒たちが行動を開始。とは言ってもまっすぐに突っ込んでくるだけだ。そうするよう、予め命令されているかのように。
 迫り来る教徒たちを黎明槍デイブレイクを使い、近づけさせる前に牽制と迎撃するロザリンド。槍を越えてきた相手には盾を使って体当たりしていく。
 マリカも遠距離では遠当て、近距離では鳳凰の拳や身につけた柔術を駆使して教徒たちの接近を阻む。
「……あそこ! 何か動いた!」
 メリッサが間髪入れずに銃弾を放つ。そうすると、確かに何かが揺れ動く。例の透明な敵が天井に張り付いていたのだ。
 しかし、完全に透明ではない、うっすらだが微かに姿が見える。
 透明な敵は静香へと攻撃をするためか、空いている左側から攻め入る。
「そうはさせませんですわ!」
 テレサが後方から左手へと移動し、静香の盾となろうとする。しかし、敵の狙いは静香ではない。盾になろうとしたテレサが狙い。
 盾を勤めようと必死になったテレサは敵が持つ透明な刃をかわせず、斬りつけられる。
「ああっ!?」
 テレサの悲鳴を聞くよりも早く一旦後退する敵。恐らく返り血を浴びないためと、血で濡れた刃の血を拭うためだろう。
 メリッサの援護射撃、更に教徒たちを片付けたマリカとロザリンドがフリーになり透明な敵への準備を万全にする。しかしもう敵はいない。
 その後、静香による手当てでテレサも歩けるまでにはなったが、過度な戦闘を行うのは難しい状態へと陥ってしまう。
 ひとまずは敵の攻撃を逃れたが、束になって襲われていたら非常にまずかっただろう。

「よっしゃ、ここから入れるぜ!」
「よーし野郎共! 気合入れて探せよな!」
 泉 椿(いずみ・つばき)が見つけた出入り口から坑道内へ入った姫宮 和希(ひめみや・かずき)ガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)、その部下数十名。
 部下たちは和希の号令の元、バラバラになって捜索を開始。
「それじゃ俺たちも行くか!」
「慌てるな。ここはかなり入り組んでいると見受けられる。慎重に行くぞ」
「大丈夫だって! こっちには捜索上手なのも入るし、俺のトレジャーセンスもある!」
 オープン・ザ セサミ(おーぷんざ・せさみ)の捜索と自分のトレジャーセンスがあれば平気だといいながら、ずんずんと坑道内の奥へ奥へと進んでいく和希。
 その後ろから椿が手のひらにエネルギーを集め発光させ、坑道内を照らす。
「あの少女、何物なのかしら。もしかして、吸血鬼とか」
「そりゃ会えばわかるさ! だから必死になって探さなきゃな」
「勿論そのつもり」
 和希同様明るく言い放つ椿を見て笑うセサミが捜索に専念する。
 しばらく進むも、少女らしき姿は一切なく、部下たちも何も成果を得られないでいた。
 と、程なくし和希のトレジャーセンスの琴線に何かが触れる。
「来たぜ、ぬるりと! こっちからだ!」
 走り出した和希に三人もついていく。果たしてその先に少女はいるのだろうか。
「ここからだ!」
 和希が言う場所、そこにあったものは。
 空っぽの宝箱だった。
「本当にトレジャーに引っかかってんじゃねぇ! しかもスカかよ!」
「仕方ないであろう、トレジャーセンスなのだから」
 納得いっていない和希を諌めるガイウス。しかし、セサミがあることに気付く。
「椿、もうちょっと明かりを下にやってくれる?」
「ん? こうか?」
 椿が手のひらを下げると、そこには誰かの足跡が地面にあった。
 あろうことか、その足跡から見るに一度箱の中に入ろうとしていることわかる。
「足跡の大きさから見るに、小柄な子のもののようね。……もしかしたらこの箱の中に隠れようとしたのかも」
「なんじゃそりゃ。……でもまぁこの足跡はあっちに続いているようだし、辿っていって損はなさそうだな。行こうぜ! 和希!」
 椿の言葉より早く和希は走り出していた。いてもたってもいられないようだ。
「さあ急ぐぜ! 俺のトレジャーセンスはこの先に反応を」
「もうよいであろうて」
 ガイウスに的確なツッコミを入れられながら先へと進んでいく。
 しかし、この間に捜索を行っていた部下の何人かが敵によって戦闘不能にさせられていることを四人はまだ知らなかった。